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楽しみ方がわかる! はじめての、親子えほん 第2回<絵本は子どもだけのもの?>


こんにちは!《聞かせ屋。けいたろう》です。
今回のテーマは“子どもからおとなまで楽しめる絵本”です。絵本は、子どもだけのものでしょうか? いえいえ、そんなことはありません。絵本を家庭で、路上で、海外で読んできたぼくの経験をお話ししましょう!

まず紹介するのは……。


『パパ、お月さまとって!』(偕成社)


娘に「パパ、お月さまとって!」と言われたパパが、なんと!娘のために月を持ち帰るという絵本です。願いが叶った女の子は嬉しそうに、月との時間を過ごします。初版は1986年なので、子どもの頃に読んだという方もいるでしょう。
読んでいたなら当時のあなたは、どんな感想をもちましたか?

先日、保育園で子ども達に読んだ時は、この絵本のパワーを感じました。長いハシゴの登場で「ハシゴ、ながっ!」や「えーーっ!」という驚きの声があがります。物語が進むにつれて子ども達は、絵本にどんどんひき込まれて行き、誰も言葉を発さずに夢中になって見るのです。皆、それぞれ何かを感じているようでした。

僕がこの絵本と出会ったのは、22歳のおとなになってから。読み終えて、僕が口にした感想は……やはり「ハシゴながっ!(笑)」。当時の僕は、作者の見事な想像力にユーモアを感じて、笑ったのです。
僕はこの絵本を、夜の路上でおとなに向けても読んでいましたが、こんな感想をもらったことがあります。「私、自分のやりたかった仕事がもうすぐ出来そうなんです。月まで届く長いハシゴが、夢まで届く長いハシゴのように思えました。」そう言った女性の顔は、何だかとても嬉しそうでした。


『ねずみくんのチョッキ』(ポプラ社)


ねずみくんのお母さんが編んでくれたチョッキが、次々と大きな動物に着られることで、信じられない程に伸びていくお話です。

この絵本を子ども達に読むと、「ぴったり、にあうでしょ?」というねずみくんのセリフに、子ども達は「うん、うん」と頷いたり、「すこし きついが にあうかな?」のセリフに、「にあわなーい!」と声をあげたりと、子ども達が絵本の中の動物達と会話をするように楽しんでくれます。大事なチョッキがどんどん伸びてしまう事を心配して「いい チョッキだね、ちょっと きせてよ」の場面で「やめてー!」と叫ぶ女の子もいました(笑)。
みんな、絵本の中に入り込んでいるようで良いですよね。

でも、その魅力を感じるのは、子どもだけではありません。
おとなになって初めてこの絵本を読んでも、楽しいのです。
僕は延べ4ヶ月に渡り、アメリカでの読み聞かせ活動をしていたのですが、サンフランシスコの路上で読み聞かせをしていた時の反応が、忘れられません。
チョッキが伸びていく度に、アメリカ人は「Oh!」と声を出して笑ってくれました。表情は緩み、何とも嬉しそうな顔をして、日本から来たこの絵本を楽しんでくれていました。僕は日本語に時々、英語を交えながら読み聞かせをしていました。彼らは、絵本の内容を‟おとなも笑える上質なジョーク“として、捉えてくれたのだと思います。

絵本は、やっぱり魅力的です。子どもには子どもの、おとなにはおとなの、あの人にはあの人の感じ方があります。
皆それぞれにお話を楽しめる。それが絵本のすばらしいところです。


『パパ、お月さまとって!』(偕成社)

  • 作/エリック・カール 訳/もりひさし
  • 【定価】1,760円(本体1,600円円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】29cm×21cm
  • 【ISBN】978-4-03-328280-0

『ねずみくんのチョッキ』(ポプラ社)

  • 作/なかえ よしを 絵/上野紀子
  • 【定価】1,100円(本体1,000円円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】24.4cm×21.5cm
  • 【ISBN】97845910046-4

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