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「癇癪、暴言、暴力がひどい4歳の息子。幼稚園の先生に怪我をさせられて帰ってきました。」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q35:癇癪、暴言、暴力がひどい4歳の息子。幼稚園の先生に怪我をさせられて帰ってきました。

■家族状況
つき(相談したい子の母、40代前半)、夫、長男(相談したい子、4歳)

■ご相談
 息子のことですが、2歳頃から癇癪がひどく、眠い、空腹などと自分の思い通りにならないことが重なると、大声をだし、暴言(命令口調)、暴力(叩く、蹴る)が出ます。ただ、興奮状態が治れば人の話を聞くことができ、物事の良し悪しも判断でき、次はしないと、約束もできます。性格的に気が強いところがあり、繊細です。健診などでは特に何も指摘はされておりません。少しずつ良くなっていると思っていましたが、先日、幼稚園の先生に怪我をさせられて帰ってきました。傷跡と息子の話から、先生が手を出したようです。しかし先生は身に覚えがないようなことを言いうやむやになりました。子供の心の傷が心配で、私もこのまま通わせていいのかどんな対応をすればいいのか迷っています。癇癪を治す機関や施設があると聞きましたが、どうやったら分かるのでしょうか。相談できるところがなく困っています。何らかの情報を頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

A. 専門家の回答

お子さんの周囲の環境に、暴力・暴言があるのでは?

何があろうと体罰は許されない
 何よりもまず、「幼稚園の先生に怪我をさせられて帰ってきた」というお話が、とても気になります。息子さんの態度が悪いから、そのようなことになったのかも、と思っておられるのかもしれませんが、もしそれが事実だとしたら大きな問題です。

 たとえお子さんの態度が悪かったとしても、それでお子さんを傷つけるというのは言語道断です。幼稚園の他のお母さんに、その先生の評判など聞いてみることはできますか? もしかしたら、他のお子さんにも同じようなことがあったかもしれません。息子さんのパパには相談してみましたか?

 もし相談できる相手がいないなら、園長先生や、地域の子ども家庭センター、児童相談所などに連絡してみてください。

 子どもが大人から暴力をふるわれる状況は異常ですし、放ってはおけません。つきさんだけの問題ではないので、息子さんのために、ぜひ周りに助けを求めてください。

子どもは身近な人から言葉を覚える
 ところで、子どもというのは、周りの人から言葉や行動を覚えていきます。2歳から命令口調の暴言、暴力があるというのは、めずらしいです。仮定の話ですが、息子さんの周りに幼稚園の先生以外で暴言や暴力をふるう人はいませんか。それをマネしている可能性はありませんか。

 健診では特に何も指摘されていない、ということですので、発達特性によるものではなく、周囲から学んでそのような態度をとっている、と考えるのが自然です。

 もしそのような態度の人が息子さんの周りにいるなら、なるべく近づけないようにするとか、息子さんの教育上良くないので改めてもらうようお願いすることをおすすめします。

 子どもは、言葉や態度、行動、いろんなことをものすごい吸収スピードで身につけていきます。このまま不適切な言葉や態度をとる人の真似をされては、お子さんの将来にとって何もいいことはありません。お子さんをそのような環境から守ってあげてください。

暴言などの虐待は脳に深刻なダメージを与える
 一般的に、乳幼児期に脳は飛躍的に発達するため、その時期にスキンシップや体を動かすことなど、子どもが喜ぶ良い刺激をたくさん与えることが大切です。逆に、子どもにとって好ましくない環境、適切でない養育環境、暴言による虐待、ネグレクトなどがあると、子どもの脳は傷つき、健全に発達することができなくなります。その結果、発達障害と似た症状が出てくることもあります。

 これは、子どもへの直接な虐待ではなく、例えば夫婦間でのDV(ドメスティック・バイオレンス)を子どもが見ている、という状態でも同様です。傷ついた脳のまま成長すると、思春期になって、社会的なルールを守らない素行障害や、うつなどの精神症状が出やすくなります。また、学校での人間関係の問題を抱える可能性も高くなります。だからこそ、乳幼児期は特に、ご家庭、幼稚園や保育園など、子どもの養育環境に十分な配慮が必要なのです。

「うちの子ちょっと変わってる?」子どもの発達お悩み相談室はこちらから

 

 

久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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