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「回遊魚みたいに落ち着きがない。食事に1時間もかかり、数字は鏡文字。気を付けることは?」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

 

Q18. 4歳の息子が回遊魚みたいに落ち着きがない。食事に1時間もかかり、数字は鏡文字。気を付けることは?

■家族構成
相談者:ももせ(相談したい子の母,30代後半)、夫(40代前半)、息子(相談したい子。4歳)

■ご相談
 とにかく落ち着きがないんです。回遊魚のようにずっと動き回り、ジャンプしてほぼ毎日顔や足を怪我してしまいます。落ち着かせるために、学習塾にも通わせているのですが、宿題をやっているときもなにかおもちゃを触ってしまいます。ご飯を食べるときも一口食べたら走り回り、食べ終わるのに1時間以上かかることもざら。

 好きなものについては図鑑を読んだり、ずっと何かしていることもあるのですが。また、数字が鏡文字になってしまうのも気になります(6が反対になる)。まだ大丈夫な年齢だとは思うのですが、今から気を付けておいたほうがいいこと、できることがあれば教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

A. 専門家の回答

安全に運動できる場所で、思う存分動けるように。

 いろんなものに目移りして、落ち着かない。4歳くらいの、特に男の子に時々見られることだと思います。でも、動き回って怪我をするのはお母さんとしては心配になりますよね。

 一般的に、子どもは3歳を過ぎると次第に落ち着いてきます。3歳を過ぎて、少しの間もじっとしていられない、お話が聞けない、遊びも長続きしないといった様子ですと、少し多動の傾向があるお子さんといえるかもしれません。

動きながらでもできたらOKとする
 そんな息子さんにじっとしてほしくて、学習塾にも通わせているとのこと。4歳で一人でイスに座って宿題をするのはなかなかまだ大変なことだと思います。おもちゃを触りながらでも、座って取り組むだけでもすごい! と思いますよ。

 じっとしているのが難しい、動きたいお子さんにとって「動くな!」というのは拷問のようなものです。動いていてもいいから、必要なことができるようにする。グニャグニャ身体をよじらせながら着替えてもいいし、多少足をバタバタさせても、迷惑でなければいい。姿勢がくずれていても、イスからずり落ちそうでも、座っていられればOKとしましょう。

指示は具体的に
 また、車通りの多い道では必ず手をつなぎ、急に手を離して走り出さないこと、と言い聞かせ、少しでもできたら、「今手をつないで歩けてえらかったね」と何がえらかったのかわかるようにほめてください。

 指示するときも、具体的な方がわかりやすいと思います。ちょこちょこと走り回っているようなら、「やめなさいっ!」ではなく、「あの電柱まで走ったら待っててね」とか、「そこを2周走ったら歩こうね」など、お子さんの動きたい欲求も認めながら、そのあとはこちらのやって欲しいことを具体的に示します。

叱るよりも、ほめることで脳は発達する
 落ち着きのないお子さんの場合、「じっとしてなさい!」とか「走らないっ!」など怒られることが多いのではないか、と思います。怒られなれてくると、いくら怒っても言うことを聞かなくなります。そして、どうせ何をやっても怒られるんだ、と自己肯定感を下げてしまいます。

 むしろ、やるべきことのハードルを下げ、少しでもできたらほめる、をくり返した方が脳の発達の面でもおすすめです。というのも、脳は怒られてもちっとも発達しないからです。ほめられることでいい気分になり、もっとやろうという気持ちになり、発達していくのです。

乳幼児期は知識より体を動かすことが育脳になる
 脳の発達という点でいうと、実は乳幼児期のお子さんには、学習塾に行くよりも、もっともっと身体を動かして欲しいのです。運動はすればするほど、脳は発達します。手や足を動かすことで、どんどん脳内の神経細胞の回路ができ、つながりが強くなっていきます。乳幼児期こそ、この脳の土台作りがとても大切です。土台さえしっかり作っておけば、知識は後からいくらでも入れることができます。

 この脳内のつながりですが、無理矢理やらされても、ちっとも発達はしません。息子さんが学習塾に喜んで通われているのなら良いのですが、そうでなければ、むしろ、トランポリンや体操など、体を使った習い事をさせるのはどうでしょう。いくつか体験教室に行ってみて、息子さんが興味を持ちそうなことを試してみるとよいと思います。怒られないところで存分に身体を動かすことが育脳にもつながります。

ダラダラ食べはNG。お腹が空いていれば食べるはず
 ところで、ごはんを食べるのに1時間、というのは時間がかかりすぎているように思います。お菓子を食べるなどして、お腹が空いていないのではないでしょうか? 食事に関しては、左手でお茶碗をもち、右手でおはし(やスプーン)を持つので、おもちゃを触りながらというわけにはいきません

 なるべく、気が散りそうなものは視界に入れないようにします。そして、30分なら30分と決めて、「ここまで食べたんだ、えらかったね」と言って、残っていても下げてしまいましょう。

 後でお腹が空いたと言っても、牛乳を飲ませる程度で、ごはんはあげないように。決まった時間に食べないと、後で困ることになる、ということをわからせるのも大事です。小学校の給食の時間は限られていますので。

なるべく好きなことをやらせる
 好きな図鑑はずっと見ている、という集中力もある息子さん。数字や文字も、「もっと知りたい」と思えば、自分からすすんで覚えるようになるかもしれません。鏡文字も4歳ではまだ気にしなくて大丈夫でしょう。

 よく動くお子さんも、だいたい小学校3、4年生くらいになると落ち着いてくることが多いです。ももせさんも、大変だとは思いますが、今はまだ仕方がないと思って、なるべく押さえつけずに、息子さんの動きに上手に付き合ってみてください。

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久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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