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【レビュー】心をくすぐるカラフルなカエルたち、どんでん返しのクライマックスが楽しい絵本『かえるじゃん』

《こんなにヒットすると思わなかった!》

 一見、隠し絵ふうに、食べ物の絵の中から毎回かえるがあらわれる、くりかえしが楽しいシンプルな絵本『かえるじゃん』。しかし4歳から12歳まで、わが家の3人の子どもたちと読んでみたところ、なかなかどうして、きょうだい全員に幅広く大ヒットとなりました。どんなふうにおもしろかったのか、レポートしてみたいと思います!

 絵本を開いて、まず目にとびこんできたのは、つやつやの完熟トマト。……だと思ったら……なんだか下に2本の足らしきものが見える……。「これな~んだ?」と聞かれて頭の中はハテナマークでいっぱい。“見たことないよね、こんなもの”という表情の子たちと顔を見合わせながら次へページをめくると……「トマトじゃないよ かえるじゃん」。おしりをこちらに向けてうずくまっていたオレンジ色のかえるが頭をあげて、緑のヘタみたいなものを、ぱくっ。
 




 その瞬間、“おお!”と子どもたちの顔が輝きます。「この絵本はそういうことか、わかったぞ」という雰囲気で、もう、やる気満々。ページをめくり、茶色のふっくら丸い……「これな~んだ?」に「かえる!!」とはりきって答えます。そのとおり。「どらやきじゃないよ かえるじゃん」。ゴツゴツした緑色のかたまりも……「これな~んだ?」「カボチャじゃないよ かえるじゃん」。



 おいしそうな食べ物が、実は顔をあげたり飛び上がったりすると「かえるじゃん!」。隠し絵のおもしろさ(あんまり隠れていないですが)と、「かえるじゃん」とわかった場面の仕草や表情がいかにもかえるらしく、おどけた雰囲気で、楽しい気分になってきます。

 いつまで「かえるじゃん」が続くのかと思っていると、最後のほうにちゃんと“ハズレ”があります。子どもはたいてい引っかかり「かえる!」と答えるのですが……!? ページをめくって「まだかえるじゃないよ」なんて読むとき、大人の読み手はニヤニヤしちゃうんです(笑)。さんざん食べ物のふりをしてきたかえるたち。お皿にのせられ……。最後はさらにハラハラ、ドキドキ、笑顔になるエンディングが待っています!



 保育園児から小学生まで、年齢の違う子どもたちと一緒に読んで思ったのは、「やられた! これ、(どの子も全員)おもしろい」ってこと。
まず、食べ物から色とりどりのかえるへの変化に興味津々。しかも目を奪われるほど個性的なかえるばかりです。小さい子は、「かえる!」と繰り返し答えるのがくせになるみたい。最後の“どんでん返し”や「かえる、かえるじゃん」というダジャレも子どもたちのツボなようです。かえるのお尻の穴にもウケていました……。

 それにしても、かえるって……。あのぎょろっとした目や、うずくまっているときの丸い姿、それが飛び上がるときの躍動感。なんだか存在自体がユーモラスで、かえる好きにはたまりません!
 作者のつるたあきさんは、やっぱりかえる好きなのかしら……と思ったら、案の定、かえるのイラストや物語を制作しているそうです。好きなかえるは、アフリカウシガエルですって! 絵本の中にアフリカウシガエルが描かれているか、親子で探してみるのも楽しそうですね。

 ところで後日、世界地図の絵本を眺めていた小学3年生が「ねえ、『かえるじゃん』に出てきたかえるがいるよ、ほら!」と呼びに来ました。そばに寄って見てみると、たしかに、イチゴのふりをしていたかえるです! 南米のイチゴヤドクガエル。こんな模様のかえるが本当にいるんだねえ、と親子で感動しました。じゃあ、もしかしてトマトに似たかえるも本当にいるんじゃない?と一緒に調べてみると、アカトマトガエルを発見! 「おもしろーい!」と小学生は大興奮でした。



 もしかしたら他にも実在する種類が描き込まれているのかもしれません。でも、そんなことは関係なく、かえるのことを何も知らなくたって、幼い子から小学生まで一緒に楽しめるのがすごいところです。
 久々に「やられた!」と思うおもしろさに、家族のお気に入りの1冊になりました。ぜひ、みなさんも「かえるじゃん!」と声をそろえて楽しんでください!


大和田佳世
 

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