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【レビュー】気分は古生物学者! 恐竜探究にうってつけの一冊

「この骨はなんなのかな?」
「植物を食べてたってことは、やさしい手をしてそうだね」
「どんな色でも好きにぬっていいの?」
「群れで暮らしていたのかな?」
「首が長いから、支えるために胴体は太かったはずだよ!」

恐竜をはじめとした古生物が大好きな塾生たちと、この本を開いてぬりえに興じていると、子どもたちから次々と「問い」があふれでてきました。

ページをめくるやいなや子どもたちの興味を惹きつけたこの『恐竜 骨ぬりえ』は、恐竜の白い骨格だけ描かれたページが続きます。そしてその下に、恐竜の名前、食性、全長、くらしていた場所、同じ時代に生きていた恐竜といった情報が書かれています。



子どもたちは食い入るように骨格を観察し、ページ下部の情報からこの恐竜の姿を想像し、思い思いの色で大胆に恐竜の姿を描きはじめました。

程よい余白が、考えたくなる「問い」をうむ

彼らが熱中する様子をみて、僕は「なるほど、程よく余白があるからこそ、熱中して考えるんだな」と一人合点がいきました。
というのも、この『恐竜 骨ぬりえ』は、ぬりえなのに「枠線」がありません。一般的にぬりえといえば、枠線があり、その枠内を自分なりの色でぬっていくという「制約」があります。この「制約」は自分なりの表現をするのが(年齢的・特性的に)苦手な子にとってはいい補助線になりますが、ある程度大きくなった子たちにとっては「ただ色を塗る作業」になってしまい、つまらなく感じる時もあるでしょう。実際、小学高学年の男の子はこんな風に言っていました。

「普段はぬりえはつまんないからやらないけど、このぬりえは頭を使うからおもしろくて、完成した時の達成感がすごかった!」

一方で、「全くの白紙」ではなく「程よい余白」があることも重要な要素の一つです。自分なりの表現や、自由に探究することを目的とするなら、最初からなにも記されていない「白紙」の方がぴったりなのではないか、そんな風に考えるかもしれません。しかし、それだと今度は難易度が上がり過ぎてしまいます。
この『恐竜 骨ぬりえ』に取り組んでくれた低学年の女の子は、こんなことを言っていました。
「私、絵が上手じゃないから絵とか描かないんだけど、骨が描いてあったから、すいすい描けちゃった。骨があるから、簡単だったよ」

そう。『恐竜 骨ぬりえ』の素晴らしいポイントは、この「程よい余白」の存在なのです。「こうしなさい」と決められているのではなく、逆に「全くの白紙」でもない。自分なりに考えて、工夫する余地がある。この余白こそが、好奇心を駆り立て、完成した時に達成感を味わえる絶妙な仕掛けになっているのです。


完成した達成感を味わった男の子の作品


古生物学者になった気分を味わえる仕掛け

長く探究学舎に通塾している高学年の女の子がぬりえに取り組む様子をみて、この本のもう一つの大きな魅力を見つけました。
彼女はページ下部に書かれた食性や全長、くらしていた場所などの情報を読み込み、この恐竜がどんな暮らしをしていたのかを想像し、いろんな情報を参考にしながら色をぬっていました。
特に参考にしていたのが、本のカバー裏にある「生き物パーツ図鑑」。今の生き物の、いろんな部位の写真が載っています。



「砂漠の中なのに植物食? 仲間と協力してたのかな? はぐれないように見つけやすい色だったんじゃないかな?」
「砂漠は昼は暑いから、夜行性? となると、光を反射する色じゃないと見えない? だったら白なのかな?」

彼女は今の生き物たちの特徴を捉えながら、僕らの世界につながる命のバトンリレーを感じ取っていたようです。恐竜の骨と対峙しながら、さながら古生物学者のように、多くが謎に包まれている恐竜の体表の色を想像し、小さな書き込みを加え、自分なりのプロトケラトプスを描いていました。


「生き物パーツ図鑑」を活用した女の子が描いた作品


大人から子どもまで自由に楽しめる

恐竜の骨だけ描かれているというデザインは、ただ色を塗るだけで楽しい幼児から、恐竜大好きな小学生まで、いや、大人も久しぶりに本気で打ち込んでみようかと思うくらいに「やってみよう」という好奇心を引き出す仕掛けになっています。そう、気分はまさに古生物学者!
探究学舎が授業作りにおいて大事にしているポイントと重なっている部分が多いと感じました。

実際、オンラインで授業を受けてくれている全国の子どもたちに、このぬりえを紹介したところ、すぐに探究心に火がついて、いろんな自分なりの恐竜を表現してくれる子たちがたくさんいました。

このぬりえを楽しみながら、お子さんと一緒に対話するもよし、大人の本気を見せつけるもよし、この本片手に博物館に行くもよし、といった、単なる「ぬりえ」にとどまらない探究の世界へ誘ってくれる素敵な一冊です。

全国の子どもたちが描いた作品






 

本の詳細はコチラ!


構成:岡田 善敬 監修:小林 快次

定価
本体1250円(税別)
発売日
サイズ
A4判
ISBN
9784041086506

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