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宇宙飛行士・野口聡一さんが語る「手触りがある宇宙」にこだわった図鑑づくり


宇宙飛行士の野口聡一さんは、世界で初めて3つの異なる方法で宇宙から帰還したギネス認定者でもあります。そんな野口さんに、ロケットや宇宙でのくらしを取り上げた図鑑GET!シリーズの最新刊『宇宙』の第5章を監修、制作に参画していただきました。野口さんが図鑑に込めた思いとは?

<contents 1> 宇宙でのくらしを想像してほしい
<contents 2> 「宇宙地図」で138億光年を旅しよう
<contents 3> 眺める図鑑から手触りのある宇宙図鑑へ


宇宙でのくらしを想像してほしい



―KADOKAWAが刊行している図鑑GET!シリーズの最新刊『宇宙』が完成しました。野口さんは、第5章の構成から写真提供まで関わられたとうかがいました。出来上がった図鑑をご覧になられていかがですか?

写真の提供も含め、子ども用の学習図鑑を作り込むのは初めてだったので、すごく良い経験になりました。

みんなに知っていただいているというと少しおこがましいですが、「見たことがある野口さんが宇宙でこんなことをしていたんだ」と、言葉と映像で、図鑑を読んでくれた人の頭に、すっと入ってくるようにしたくて。私の宇宙飛行の体験が伝わりやすくなるように「この場面にはこういう写真がふさわしい」という話を随分細かく相談させていただきました。


野口さんが監修した第5章「宇宙へ進出する人類」



写真を見直していて気づいたのですが、国際宇宙ステーション(ISS)の船内の写真は、モノトーンで暗いものが多いんですよ。読者のお子さんには、宇宙飛行士のことを「大変そう」というよりも、「大変だけど、なんだか楽しそう」と感じていただけるように意識して写真を選びました。

例えば、ISSでの食事風景の写真は、新しい仲間がISSに到着したのを祝うパーティーの様子です。食卓には宇宙飛行士の出身国の得意料理の宇宙食が並んでいました。こうして各国の宇宙飛行士のみんながにこやかに笑い合っている光景はまさに国際協力の象徴ですし、読者のお子さんには、将来宇宙旅行に行ったらこんなシーンがあるんじゃないかと想像してもらいたいですね。


写真提供:NASA/JAXA



※野口さん自身の図鑑体験や子育てへのこだわりについて語ったインタビューはコチラ



「宇宙地図」で138億光年を旅しよう

―今回の図鑑の魅力のひとつは、地球から宇宙の果てまでの天体が距離ごとに並ぶ「宇宙地図」がついていることです。この宇宙地図のコンセプトについて、どのように思われますか?



これはもう本当に素晴らしいコンセプトですよね。ものを見るときに、乗数、いわゆる10の何乗で把握する感覚はすごく大事です。自分の知っている地球から始まって、すごく遠くの宇宙の果てまで、10の乗数で見ていくのはお子さんにとってもわかりやすいし、自然に受け入れられますよね。こういう形で、非常に見やすくかつ美しく、仕上げていらっしゃるのは素晴らしいなと思います。

10万光年離れたところにある星の光は、10万年前の光がいま届いたものです。遠くに行けば行くほど、実は昔を見ていることに繋がってきます。つまり138億光年先を見ていることは138億年前の宇宙を今見ていることとまったく同じだということにやがて気がつくはず。過去にさかのぼる旅をしているんです。このような空間や時間をとらえる感覚に触れるのは、お子さんにとって初めての体験になるかもしれないですよね。






眺める図鑑から手触りのある宇宙図鑑へ

―野口さんが担当された章以外も含めて、今回の図鑑GET!宇宙はいかがでしょうか?



子ども向けの図鑑で圧倒的に人気があるのは、やっぱり花や植物、昆虫じゃないですか。植物や昆虫は実際に実物を見て図鑑で調べるというかたちで、現実と図鑑がリンクできているわけですよ。そういう意味では「宇宙」という分野はすこしむずかしい。夜空を見上げると見られる星や星座は、素朴な体験と知識をリンクさせることができますが、たとえば「アンドロメダ銀河」などと言われても、ピンとくるひとは多くはないかもしれません。だからこそ、「宇宙って、別に私たちの生活には関係ないでしょう」と言われたときに、「いや、そうでもないよ」と言える視点がすごく大事だと思っています。からあげやラーメンの宇宙食やISSでのホームパーティーの写真を見て、宇宙でのくらしも普段の地球でのくらしに近いと捉えて欲しくて。いかに“手触りがある宇宙”に持っていくか、という問いは、私たち宇宙飛行士がいつも苦労している永遠のテーマなんです。

―今回の『図鑑GET!宇宙』は、宇宙の手触りは表現されていますか?

そうですね。やはり宇宙の写真はインパクトがあるので、じつは私たち宇宙飛行士でも、その凄さに頼ってしまうことが結構あるんです。ただ今回は、全体のストーリーと章立てがあり、そのパートで伝えたいことがより伝わりやすくなるように、という点を大切にして写真を選んでいますから、身近さも感じていただけるのではないでしょうか。
章立てもよくできていて、「宇宙地図」と同じように、地球・月、太陽系、天の川銀河、さらに遠い宇宙の話、そして最後に私たちが行ける宇宙という流れになっているので、星の世界を”手触り”をもって理解する手助けをしてくれると思います。



それからこの図鑑では、「宇宙と生命のかかわり」というトピックにかなり多くのページが割かれていますが、これも大切なテーマですよね。
私が宇宙から地球を見て強烈に感じたのは、「地球はひとつの生命体なんだ」という感覚でした。宇宙空間にぽっかりと浮かんでいる地球を見ると、私たちが知っている空も雲も山も海も全部がひとつの球体のなかにある、ということを実感するんですね。だから、私たちがこの地球を汚してしまうことも、地球のために良いことをすることも、全世界の命にとって影響がある。こういう感覚は、「SDGs」や「生物多様性」といったキーワードにも繋がっていきます。

「宇宙」という分野は、そんな風に生き物への興味から入ってもいいし、星や星座の神話への興味から入っても、私のように乗り物好きから入ってもいい、いろいろな方向の興味に応えるジャンルです。この宇宙図鑑を読んだお子さんたちが、宇宙に対して夢を持ったり、話題のひとつにしていただいたり、そんな広がりが生まれるといいなと思っています。



(取材:井上榛香/写真:後藤利江)




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【書籍情報】


総監修:小久保 英一郎 監修:野口 聡一

定価
2,420円(本体2,200円+税)
発売日
サイズ
A4変形判
ISBN
9784041130933

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