角川つばさ文庫で刊行して17年。とうとう30巻の完結をむかえた「怪盗レッド」シリーズ。かつて小学校時代に読んでいたというファンからも熱い注目を浴びて、盛大に幕を閉じた。この6月に発売された完結巻『怪盗レッド30 1パーセントの希望があるなら☆の巻』、もうみんなは読んでくれただろうか?
まだ読んでいない人は、本を読んでからこのインタビューを読むのがオススメです。
完結した今だから語れる話
――『怪盗レッド30 1パーセントの希望があるなら☆の巻』発売おめでとうございます。発売前から、ファンのみんながおおさわぎですね。「怪盗レッドは、ず――っとつばさ文庫にあるものだと思っていた」という声が多いです。
ありがとうございます。それくらい長い年月、多くの世代の人に愛される作品を書けたことが、本当にうれしいですね。
――書き終え、本が発売されてから2週間になります。今のお気持ちはどうですか?
ほっとしています。
アスカとケイの物語を、途中で途絶えてしまうことなく、完結までお届けすることができて、本当によかったなと思っています。
昨年9月に「30巻完結」というニュースが発表されたあと、現役の読者さんだけでなく、子ども時代にリアルタイムで初期の巻を読んでいたという方からも、たくさん話題にしていただきました。
完結巻までの「10ヶ月連続キャンペーン」の間、たくさんの方が応援の声を送ってくれました。うれしかったですね。
改めて、本当に多くの人から読んでもらえた幸せな作品だということを実感させてもらいました。
――「完結している」ということで、安心して手に取れる、というファンもいるかもしれません。
まだ読んだことのない読者にも、ぜひこれから楽しんでもらいたいですね。
時をこえて、読者をわくわくさせられる物語なっている……と思います。そう言える自信を、ファンのみなさんからいただきました。
あの冒険の、その先が……?
――30巻で、レッドの物語は、ひと区切りを迎えたわけですが、秋木さんの中で「すべて書き切った!」という実感ですか?
それとも 「本当は、もっとこういうエピソードも書きたかったな」など、心残りのようなものがあったりしますか?
角川つばさ文庫の「怪盗レッド」全30巻には、もちろん満足していますよ。
でもじつは、書ききれなくてもったいなかったな……と感じるエピソードが、ぼくの頭の中に、まだけっこうあります。
なにしろ、これだけ登場人物が多いので……それぞれのキャラクターに、それぞれの人生が――物語が、あるわけです。
でも、アスカとケイが主人公である以上、全部を描くことは、むずかしかったので。それは心残りですね。
そのために「少年探偵響」シリーズや、角川つばさBOOKSに入っている「怪盗レッドTHE FIRST」「怪盗ファンタジスタ」などのスピンアウトシリーズや、短編小説を「怪盗レッド☆スペシャル」としてヨメルバのサイトで連載させていただいたりもしました。
ずらりと並んだ、関連シリーズ全作!
――その「怪盗レッド☆スペシャル」は、今、コンビニプリントでプリントアウトできますね。
はい、ヨメルバからの再録だけでなく、ネットプリント用に、小説を3本書きました。6月25日にも1本追加されます。
そして、完結記念グッズの中の「スペシャルセット」に入る小冊子にも、小説を1本書き下ろしています。
――そう、グッズの中に書き下ろし小冊子があるということで、ファンもざわついていましたね。いったいどんな話なんですか? もしかして、とんでもないネタがかくされていたり……?
そうですね、ネタバレになるので多くを語れないのですが――じつは、アスカとケイの「未来」の話、なんです。
30巻のラストシーンのあと、さらに数年たって――成長したアスカとケイが、どんなふうに生活しているのか。そして「怪盗レッド」はどうしているのか――というあたりが気になる人には、ぜひ読んでほしいですね。
――じつはこのインタビューにあたり、一足先に読ませていただいたのですが。ひと言で言って、かなり驚きました。思わず、「もっと読みたい!」と思ってしまいました。
それはありがとうございます。自分でも、書いていてかなり楽しかったです。
使命のために「やりたいことをあきらめない」ヒーロー
――「成長した」というと、角川つばさ文庫の全30巻だけでもアスカとケイは相当、変化しましたよね。
それはそうですね。
1巻は、まったく親しくない、むしろ少し気まずいくらいの「いとこ」どうしだったアスカとケイが、いきなり同居、そしてコンビとして「怪盗」をやらされる、というところから始まりました。
それが、1冊ずつ事件をのりこえていくたびに、2人の間に信頼がめばえ、ともに影響しあい、それぞれの心も身体も成長したと思います。
ぼくが「そう書いた」というよりも、アスカとケイの2人が、いつのまにか変わっていったという感じです。
30巻カバーイラストが、1巻のカバーのオマージュになってることに気づいてたあなたは、かなりスゴイ!
――周囲の環境も、それにともなって変わっていき、後半の巻では物語のスケールやテーマが、おとなっぽくなっていきましたね。「記録係」の秋木さんとしては、どこが変わったと思いますか?
アスカとケイにとっては中学入学直前から2年生の終わりまでの、約2年間の話になります。中学校のこの期間ですから、本当に、変化が大きい時期ですよね。
2人とも、一番変化したのは「世界との関わり方」だと思います。世界と触れあうことが多くなったことで、自然にそうなっていった。
ケイについては、わかりやすく、人とのコミュニケーションの変化ですよね。
ケイ自身は、最初のうちは、「正義を行う」ということに対して、それほど深い想いがあったタイプではなかったでしょうし、「親から継ぐ」という使命感が強かったわけでもない。
でも、アスカという相棒や、実際の事件を通して、そして悪に苦しめられる人を見ることで、考え方が変わっていったんじゃないかなと思っています。
アスカとケイがひさしぶりに再会してすぐに「2人に」頼まれたミッションは「お買い物」だったよね。
一方、アスカは最初からまっすぐで正義感の強い性格でしたが、物語が進むにつれて、つっぱしるばかりでなく、少し立ち止まることや、まわりを見まわすことを身につけていきましたね。
それはアスカ自身が、より多くの人を助けたい、守りたい、手を伸ばしたい。そういう「なりたい自分になるため」の変化だったと思います。
そう考えると、アスカは根っこの部分は、変わっていないですね。
27巻ラストシーンで、命のかかった手術の結果を待つ不安に、おもわず手を重ねあうアスカとケイ。
――アスカもケイも、「怪盗レッド」という使命をこなしながらも「自分のやりたいこと」も、あきらめません。使命のために自分を犠牲にしないヒーローなんですよね。シリーズを通して読んで、その描き方が、いいなあと思いました。
ありがとうございます。
自分の人生を犠牲にして「正義の怪盗をする」のではなく、人生の中に、怪盗レッドとしての顔もある。
だから「30巻のあと」のアスカとケイも、そういう方針で人生の選択をしていくと思います。
だから、たとえば、一時的に怪盗レッドをお休みすることだってあるかもしれません。
あるいは、成長するほどに、場所にしばられなくなりますから、アスカたちも、あの怪盗ファンタジスタのように、世界を駆け巡ったりもするかもしれませんね。
――うわー、ますます読みたくなってきました。あの……30巻を見直していて、気づいたのですが……奥付ページの1つ前のページに、英語のメッセージが入っていますよね。これ、なんだか深読みしてしまいそうなんですが……。
そこは、ノーコメント、ということにしておきます。
30巻の最後の最後に入っていた、この1枚……気になる……よね?
――ええっ……では、もう1つきかせてください。もしもの話ですが、読者から「これで終わらせないで!」「この先の怪盗レッドが見たい!」というアンコールが巻きおこったら、どうされますか?
それは……そうですね。断言はできませんが、そういう声をたくさんいただけば、先の展開について考えることはあると思います。
――わ、期待しています! それでは最後に、これまで応援してくれた読者のかたたちへ、メッセージをお願いできますか?
はい。
2010年2月に1巻が出てから、ここまで、みなさんが応援してくださったおかげで、30巻まで書くことができました。
本当にありがとうございます。
「怪盗レッド」に登場したキャラクターたちは、30巻が終わったあともずっと、それぞれの人生を歩いていきます。
みなさんの心の中で、この先も、キャラクターたちが一緒に歩み続けていたら、うれしいです。
そしてもし、かれらの人生が、いつまかた、みなさんと交わることがあったら。そのときは『久しぶり!』と、あたたかく迎えてくれたらと思います。
ありがとうございました!