KADOKAWA Group

Children & Education

子育て・教育

【中学受験】志望校はいつ、どう決める? 「悔いのない」受験にするには

NEW

子どもが進級したり、進学塾に通い始めたりすると、気になるのが「志望校選び」。「いつから探し始めればいい?」「偏差値だけで決めていいの?」など、悩みは尽きないものです。SAPIXなどで講師を務め、現在は中学受験のコーチングを行っている齊藤美琴さんは、教え子と保護者に「悔いのない受験を」と伝えています。後悔しない志望校選びは、いつ、どのようにして進めればいいのでしょうか。学校選びのロードマップと親の心構えについて、齊藤さんにお話を聞きました。


■ まず「なぜ中学受験をする?」を親子で考えよう

 中学受験が本格化する小学4年生ごろの教え子たちには、必ず「どうして受験するの?」と問いかけています。大前提として、日本では中学受験をしなくても公立中学校に進学できます。子どもの「次の6年間の環境選び」のために中学受験という選択をするご家庭が多いと思いますが、何のために勉強しているのかは子どもにも意識してほしいもの。入試までの数年間は、決して短い道のりではありません。子どもの向き合い方や納得度によって、志望校選びの動機づけは異なります。代表的な2つのケースを例に考えてみましょう。

【ケース1】子どもが「親にやらされている」と感じている場合

 親主導で通塾を始めた場合、子どもは6年生ごろまでは「勝手に塾に入れられた」「こんなに大変ならやりたくなかった」と、中学受験を他人事のようにとらえています。志望校についても「お母さんが決めてよ」「お父さんはあそこがいいんでしょ」と投げ出しがちです。
 このような場合は、「あなたの次の6年間」がキーワード。「あなたの次の6年間を過ごす場所を選ぼう」と、子どもの人生に軸足をおいた言葉で伝えると、子どもが学校選びを意識しやすくなります。

【ケース2】子どもが納得して受験を始めた場合

 進学塾に通っている友達に触発された、勉強が嫌いではないなど、子どもの気持ちありきで始まった場合は、親がなぜ中学受験をするのか納得できる理由を探しているケースがあります。「あなたがやると言ったんでしょ」という言葉に身に覚えのある方もいるかもしれませんね。こうした場合でも、子ども自身は「どんな学校に通いたいか」という具体的なイメージまでは持てていないことがほとんどです。「行く可能性がある学校」をいくつか見学すると、目標を定めやすくなります。

 次のステップは、興味がある学校と実際に接点を持つことです。子どもの前では「本命」「滑り止め」「お守り」などの言葉は使わず、候補となりそうな学校はすべて「素敵な学校」と呼ぶようにしましょう。

「素敵な学校」の選択肢を広げよう
 親目線で考えると、「偏差値が高い学校=いい学校」ととらえがちです。トップ校が気になる、どんな学校か確かめたいという気持ちは自然なことですが、偏差値というひとつの物差しだけにとらわれず、多角的な視点で学校を見学しましょう。学校見学で親子でいい印象を持った学校が、ゆくゆくはお守りのような併願校になるかもしれません。はじめから「男子校・女子校/共学校」「中高一貫校/附属校」と絞り込まず、ニュートラルなスタンスでいるほうが、「素敵な学校」を見つけやすいと思います。

「絶対に〇〇校!」は要注意
「絶対に〇〇校でなければダメ!」と親子でひとつの学校を追い求めるのはおすすめしません。「絶対」がつく受験は、成績が伸び悩んだり、不測の事態が起きたりしたときに柔軟に対応できず、いい結果に結びつきにくいからです。もちろん、熱望校があるのは素敵なこと。その学校は大切にとっておき、ほかの学校も幅広く見ておきましょう。

「どんな中学生になりたいか」を意識しよう
 そもそも多くの小学生が具体的な「中学校」のイメージを持っていません。「〇〇中学校を見にいこう」より、「〇〇中学校のお兄さんお姉さんを見に行こう」と言われるほうが、子どもはイメージしやすいもの。まずは、「どんな中学生になりたいか」で学校選びを進めましょう。
 学校選びについて話すとき、保護者の方には「制服を着てその学校に通う子どもの姿がイメージできますか?」と伝えています。これは子どもにも当てはまることで、制服を着てその学校に通う自分や、「ああいうお兄さん、お姉さんになりたい」というイメージが持てると、日々のモチベーションが高まります。想像を膨らませるきっかけとなるのが、説明会や文化祭などの「学校イベント」です。





■ いつから、どの学校イベントに参加する?

 各校では、一年を通じてさまざまなイベントが開催されています

■ 合同説明会
 春から初夏にかけて開催されることが多いイベント。複数の私立校が集まり、各学校がブースごとに個別相談や資料配布を行います。短時間の説明会も実施されます。おすすめは、「男子校」「女子校」「沿線・エリア別」「キリスト教学校」などテーマに特化したフェア。在校生による部活発表や体験型ワークショップを実施している合同説明会もあります。

■ 学校見学、学校説明会
 教育理念や校風などについて学校の先生の話をじっくり聞き、実際に教室や図書館、体育館などを見学します。先生のお話が中心の説明会は、子どもを連れていくと飽きてしまってその学校の印象がかえって悪くなることがあるので、必ずしも子どもを連れて行かなくてもよいです。

■ オープンスクール、授業見学会
 ワークショップや模擬授業を通じて、その学校の生徒になった気分を味わえます。先生や在校生と話すチャンスが豊富で、「楽しかった」という経験は学校への好印象につながります。人気が高いイベントで、インターネットによる予約は争奪戦です。

■ 文化祭
 校内のさまざまな出し物に参加しながら、在校生の素の姿を見られます。中高一貫校の文化祭では高校生の活躍が目立ち、大人びた高校生の姿に距離感を感じる子どももいるようです。中学生の催しを意識的に多く見るようにしましょう。

■ 
入試説明会、入試対策会
 主に秋以降に開催されるイベントです。各教科担当の先生が、入試の出題意図や採点ポイントなどを説明します。過去の入試問題を使って授業のように解説を行う場合もあります。おそらく、学校を訪れることのできる最後の機会となりますから、しっかり情報収集をして参加して下さい。

学校イベントは「5年生」のうちに参加を

 こうした学校イベントに早め早めから参加するご家庭もありますが、じつはイベント参加が早ければ早いほどいいというわけではありません。子どもは数年前に参加した文化祭や説明会を、あっという間に忘れます。記憶の齟齬は、親子ケンカのもと。4年生以下の子どもと参加するときは、子どもが中学生になるイメージを膨らませ、親が学校の印象を確かめるためと思っておくといいでしょう。
 6年生になると模試や過去問、小学校行事の練習などで慌ただしくなります。5年生のうちに、できるだけ幅広く学校のイベントに足を運びましょう。





■ 参加前にやっておきたい3つの事前準備

 学校イベントに参加するときは、次のような事前準備をおすすめします。

■ ①質問を考える
 オープンスクールや文化祭では、先生や在校生と話すチャンスがあります。親だけでなく、ぜひ子どもにも質問してもらいましょう。その場で「何か聞いてみたら?」とうながしてもすぐには思いつかないので、参加前に質問案をいくつか考えておくのがおすすめです。

例)
「〇〇部の練習は週何回ありますか?」
「部活の練習はどれくらい厳しいですか?」
「天体望遠鏡は授業でも使用しますか?」
「宿題はどれくらい出ますか?」

 子どもが投げかけるものですから、漠然とした質問でも大丈夫。先生や在校生は喜んで応じてくれます。私が教え子に勧めているのは、「入学前と入学後でイメージが変わったことはありますか?」という質問です。意外なエピソードが飛び出して、在校生との会話が弾むようです。

■ ②チェックポイントを考える
 図書館や体育館の広さ、蔵書の種類や数、プールの有無、部活の雰囲気など、子どもが重視するポイントを書き出しておきましょう。そのポイントを項目立てたオリジナルのアンケート用紙を作成しておくと、参加後に子どもから感想を聞きとるときに重宝します。たくさんの学校を見学すれば記憶が曖昧になります。「○・△・×」程度でいいので参加後すぐに書けるようにしておくと、後日の振り返りにも役立ちます。

■ ③パンフレットやホームページをチェックする
 偏差値表を持って合同説明会や学校見学に参加するのは避けたいもの。偏差値や大学進学実績、施設の特徴などのデータは、事前にパンフレットやホームページで確認しておきましょう。事前に頭に入れておくと、いざ見学したときに「いいギャップ」を見つけやすくなります。





■ 学校イベントで必ずチェックしてほしい2つのポイント

 イベントに参加するときは、次のポイントを必ずチェックしておきましょう。

■ 【チェックポイント1】ドアtoドアの距離感
 できれば通学を想定したルートで、玄関から校門までどのくらいの時間がかかるかを調べましょう。電車で30分かかるとしても、満員電車の30分と、座って本が読める30分では大きく違います。駅から学校までの道のりに危険がないか、繁華街との距離感などもチェック。「この場所に週5〜6回通えるか」を、子どもと一緒に確認しましょう。

■ 【チェックポイント2】校則などのルール
 スマホの使用ルールなど、校則や決まりごとを確認しておきましょう。書面上で禁止されていても、絶対NGの場合もあれば、暗黙の了解でOKという場合もあります。文化祭で『〇〇生の実態』『〇〇生の真実』などの出し物があるようなら顔を出し、在校生に直接聞いてみましょう。出し物のテーマに沿った質問には喜んで答えてくれるはずです。

参加後の子どもとの会話は「フラットな気持ち」で

 イベントに参加したら、子どもに感想を聞きましょう。親の印象はいったんわきに置き、フラットな気持ちで聞くことが肝心です。とはいえ、「どうだった?」と尋ねても具体的な返事はなかなかかえってきませんし、「よかったよね?」と誘導するのも避けたいもの。ここで役に立つのが、事前に作成した「アンケート用紙」です。チェックポイントに沿って感想を聞いてみましょう。
 同時に、「嫌なところがなかったか」も確認しておくと安心です。無理によくないところを探す必要はありませんが、不安材料を抱えたまま進むのは避けたいもの。実際に教え子の中には、「この学校のトイレは好きじゃない」と直前に志望校を変更したり、入試説明会の先生の解説が難しく感じて不安になったりしたケースもありました。志望校変更の要因になる可能性があるので、ネガティブな要因も確認しておきましょう。

子どもの反応は薄いもの

 合格体験記には、学校イベントに参加した子どもが目をキラキラ輝かせていた、展示物に夢中になっていたなどの姿が描かれていますが、学校イベントに参加した子どもの反応は基本的には薄いもの。イベントに参加したときの子どもの様子を、学校と子どもの相性を測るリトマス試験紙のように思わなくて大丈夫です。
  裏を返していえば、在校生や学校のことを「覚えている」のは、子どもが興味を持っている目安です。子どもの記憶に残っている印象がその学校のすべてではありませんが、そうした記憶や思い出が併願校を決めるときに支えになる場合もあります。また、残念ながら第一志望がいい結果とならず第二志望や第三志望の学校に進学したとき、その学校の文化祭やオープンスクールに参加して楽しかったという記憶があると、入学に前向きになるきっかけにもなります。





■ どのように志望校を決める?

 6年生の夏は、いよいよ志望校と併願校の候補を絞り込む時期です。

◎志望理由を整理する

 志望校選びは「子どもの次の6年間」を決めるものだとお話しました。学校イベントで子どもが抱いた印象や、「この学校に行きたい!」という子どもの思いはもちろん大切に尊重しますが、教育理念やICT環境、大学進学実績など、大人の判断が必要な部分も大いにあります。子どもの希望と親の希望をかけ合わせて志望校を考えましょう。子どもが熱望する学校があるようなら、なぜその学校を熱望するのか子どもに理由を聞いておくと、併願校を考えるヒントになります。

◎入試傾向をチェックする

 近年の入試は多様化しています。オーソドックスな4科目、国語・算数の2科目入試に加え、思考力や論理力を問う算数の1科入試や、算数・理科の2科目入試も増えています。また、英検の資格取得者には加点などの優遇措置があったり、試験科目に英語を採用したりしている学校や、面接官の前でがんばったことを口頭発表するプレゼンテーション型の入試もあります。形式や日程によって募集人数は異なり、同じ学校の入試でも難易度は変わります。併願校選びで迷ったときはとくに、長年の勘とビッグデータを持っている塾の先生に相談することをおすすめします。「この学校のこの日程は結果が読めない」などのアドバイスがもらえるはずです。

◎塾への相談は具体的に

 塾への志望校の相談は、あらかじめ学校見学で環境や校風、通学時間などを確認したうえで行いましょう。志望校や併願校、それぞれの志望理由と迷っている点をできるだけ具体的に、オープンに話すことがポイントです。冒頭で話した「なぜ中学受験するのか?」「何を大事にしているのか」を塾と共有して目線合わせをすると、より具体的で有益なアドバイスが得られます。

◎過去問との相性は、併願校も必ずチェック

 6年生の秋に過去問演習が始まったら、第一志望校だけでなく、併願校の過去問も必ず手をつけましょう。偏差値はあくまで目安です。偏差値としては十分に手が届く学校でも、過去問を解いてみたら相性がイマイチで苦戦することもあります。秋のうちに気づいておけば、その学校の過去問を多めに解くなどして対策できます。

◎入試スケジュールをシミュレーションする

 過去問の相性チェックと並行して、入試スケジュールをシミュレーションしましょう。午前入試を終えて、午後入試の開始時間に間に合うのかどうか。交通手段や乗換ルートなど、具体的に想定しましょう。

 併願戦略では「とにかく合格ゼロという事態を避ける」ことを最優先に考えましょう。第二志望、第三志望も親子で納得できる学校を選べるように、選択肢を広げておくのが親の役目です。



■ 「素敵な学校」をひとつでも多く見つけよう

 過去問の相性を確認して入試スケジュールをシミュレーションすると、想像以上に候補となる学校が少なくて焦ってしまうかもしれません。見学したことがない学校の入試を受ける不安は、大人が想像する何倍も大きいものです。だからこそ、「素敵な学校」に一校でも多く出会っておくことがとても大切です。

 併願校として人気が高い都内のある学校では、中学1年生の1学期は、第一志望に落ちて入学してきた子どもたちの心のケアから取り組むと明言しています。先生方のこうした姿勢は子どもたちの心に届いていて、文化祭に向けて行われる秋の校内アンケートでは、約9割の生徒が「入学してよかった」と回答しているといいます。教え子がまさにこのパターンで、第一志望は残念な結果に終わりましたが、この学校に合格したため、後半の日程で上位校に心おきなくチャレンジできました。いまは前述した学校にとても楽しく通っています。第一志望に合格しなくても、幸せな中学生活を送ることはできるのです。

 「素敵な学校」は、たくさんあります。はじめから決めつけず、絞り込みすぎず、さまざまな学校に出会う。それが、「悔いのない受験」の一歩になるはずです。ぜひさまざまな学校に足を運んで、わが家にとって「素敵な学校」をたくさん見つけてみてください。


取材・文:三東社


プロフィール



齊藤美琴
中学受験のコーチングをメインに、教科指導、幼稚園・小学校受験の相談など、家庭の力を引き出すレッスンを行う。SAPIXの個別指導部門・プリバート東京教室での国語科専任講師、ジャック幼児教育研究所(四谷教室)での講師を経てフリーランスとして独立。読解トレーニングときめ細かい学習コーチングに定評がある。2022年に渋谷ヒカリエ8階のシェア型書店に『みこと書店』をオープン。PICCOLITA(ピッコリータ)代表。



この記事をシェアする

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • LINEでシェアする

特集

ページトップへ戻る