学校で、親の知らない世界を広げるようになった子どもたち。親の目の届かない場所で、どのように過ごしているかを知る機会として設けられているのが、授業参観や個人面談です。
「うちの子、ちゃんとやれているかしら?」「先生に何を聞けばいいの?」「親のしつけが悪いと叱られたらどうしよう……」など、授業参観や個人面談で緊張している保護者は、思っている以上にたくさんいます。今回は、長年の教師経験をもとに、多くの親の悩みを解決してきた教育評論家の親野智可等先生に、肩の力を抜いて先生と個人面談するためのポイントや、先生の話を子どもに伝える際の注意点などをお聞きしました。
【プロフィール】
親野智可等(おやのちから)
教育評論家:本名 杉山桂一。
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。『子育て365 日』( ダイヤモンド社)、『反抗期まるごと解決BOOK 』(日東書院本社)などベストセラーも多い。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社)の指南役としても著名。Instagram、Threads、X(Twitter)、Blog、メルマガや各種メディアの連載などで発信中。オンライン講演を含む全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
個人面談は緊張しすぎなくてOK! 先生とは「戦友」のつもりで
――個人面談への心構えを教えてください。
親野:個人面談は、子どものために先生と親御さんが協力して臨むためのコミュニケーションの場です。だから、親御さんも緊張しすぎないでくださいね。面談のコツとしては、最初に良い雰囲気を作ることがすごく大事です。「うちの子、先生の授業がわかりやすいって言っています」「毎日学校に行くのが楽しいみたいです」と、親御さんから先生や学校をほめることから始めると、お互い心がオープンになって、「私たちは同じ子どもを見守り、育てていく戦友です」といった空気を作ることができます。
――どうしても「うちの子ダメなんです」と愚痴から入ってしまう親御さんもいそうですよね。
つい愚痴を言いたくなってしまう気持ちもとてもよくわかりますが、せっかくの個人面談ですので、最初に良い雰囲気を作る方が確実です。そして、今、熱中していることなどの情報を伝えてください。ゲームでもいいし、遊びでもいい。釣りでもブロックでも、マンガやペットでもいいんです。また、「片付けができなくてご迷惑をおかけしています」といった情報の伝え方には長所と短所があります。あまり言いすぎると先生に「この子は、お家ではだらしがないんだ」といった先入観を与えてしまう可能性があります。でも、先生も分かっている場合は、「親もわかってくれているんだ」「解決しようと家でも取り組んでくれているんだ」という安心感につながります。その際、「片づけ用ボックスを買って、一緒に管理している」など、家で取り組んでいる具体的な対策も一緒に伝えると、先生も安心し、子どもにかける言葉も「家でも片づけ頑張っているってお母さんから聞いたよ。えらいね」と、柔らかくなります。先生に感謝を伝えつつ関係を築くのが大事ですね。
友達関係は要チェック! 個人面談で聞くこと・伝えること
親野:個人面談で聞いておくべきポイントの一つは友達関係ですね。休み時間の過ごし方や、困った時に頼れる子がいるか。子どもは、どうしても上下関係ができやすいので、ちょっとしたいじめ的なことがある可能性は高いんです。なので、ぜひ友達関係は聞いておいてください。勉強面では、勉強ノートを見ればある程度分かりますが、気になるなら聞いてみてもいいでしょう。そうすれば、「子どもの苦手な部分」だけでなく、「その先生がどれくらい自分の子を見てくれているか」もわかります。親としてもしっかり子どものノートを日頃から見て、特に算数は、毎日チェックすることをお勧めします。授業について行けていないかどうかを確認して、間違えていたら復習するなど早めにフォローしてあげてください。
他に伝えるべき大事なことは、単身赴任、ペットの死や祖父母の入院など、家庭内での変化です。また、アレルギーや発達障害に関する情報などは、繰り返し伝えて、最新情報を共有することが非常に大切です。
親は防波堤! 先生からの「ネガティブ情報」は、そのまま伝えない
――授業参観や個人面談で見たことや、先生からの意見や指摘を子どもにフィードバックする際の注意点はありますか?
親野:ネガティブな声かけをしても意味がないので、ポジティブな声かけをしてください。「一生懸命考えていたね」「話の聞き方、すごく良かったよ」といった、いい部分に注目して褒めてください。「先生があなたのこういうところをほめていたよ」と伝えるのも効果的です。
――面談の内容などはどれくらいフィードバックするべきなのでしょうか?
ネガティブな内容をそのまま伝える必要はないと思います。自己肯定感が下がるだけですし、先生に対する感情も悪くなってしまいます。問題を叱るのではなく、どうすれば解決できるかを親が考え、合理的な工夫、環境作りをしてください。「忘れ物が多い」って言われたとしたら、それを解決するために、どういう工夫ができるかを親が考えて、工夫して環境を良くすればいいんですよね。例えば「持ち物コーナー」というものを作ってそこにまとめておく、あるいは付箋紙を活用して絶対に忘れないようにするとか、「持ち物集合写真」を撮ってプリントアウトして玄関先に貼っておくといった、合理的な工夫をすることが大事なんです。だから「先生に忘れ物が多いって言われちゃったよ」とは伝えず、心の中にとどめておいて、その問題をどうしたら解決できるかっていう工夫を親、あるいは親子で一緒に工夫をする方が建設的ですよね。面談で言われたことを子どもにそのまま伝えてしまうと、子どもの自己肯定感がすごく下がるんですよね。「俺って・私ってダメなのかな?」と。そして、同時に親と先生に対する不信感が出てくるんです。「お母さんも先生も俺のこと・わたしのことダメな子だと思っているのか」となってしまう。これを避けるためにも、親は「防波堤」になるという意識を持ってください。
自己肯定感を育てれば、いつか自分で「頑張るスイッチ」を押せる
親野:私がいつも講演で強調することなのですが、「だらしがない」「忘れ物が多い」「算数が苦手」といった子どもの資質は、生まれつきなんです。これは「行動遺伝学」の研究ではっきり出てます。なので、親は指摘したり責めたりすることよりも、「できる工夫」をしてあげる、環境を整えてあげる、合理的な工夫をするということがすごく大事です。それでもうまくいかないことはたくさんあるでしょう。そういう時は、親が一緒に手伝ったりやってあげたりすればいいんです。「そんなことしているといつまでも自立できない」という人もいますが、それは発達心理学の研究で否定されています。どうしてもできないことをいつまでも叱っているより、手伝ったりあるいは代わりにやってあげて、いい親子関係を築いたほうが自立のためになります。親子関係が良くなれば、一番大切な子どもの自己肯定感もだんだん上がってきます。
子どもの自己肯定感を育ててあげれば、大きくなってから「これに合格したい。そのためには勉強しなくちゃ。自分ならできるはずだ」と思えるようになります。自己肯定感さえ育っていれば、本人が本当に「やらなきゃ」「直さなきゃ」と思った時に、頑張るためのスイッチを押せるんです。逆に、自己肯定感がボロボロになっていると、「やらなきゃ。でも自分には無理だろうな」となって、スイッチが入らなくなってしまいます。だから、面談や授業参観で「しょうもない姿を見た」と思っても、それをそのまま子どもに伝えて、叱ったり責めたりしないでください。親にできる工夫やサポートをして、親子関係を良くし、子どもの自己肯定感を育ててあげる。そうすれば、大きくなった時に自分でスイッチを押せる人になります。これが、私が一番、皆さんにお伝えしたいことです。