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バケツ一杯の水から海の魚を探る最新技術とは?『GET!魚』総監修・宮正樹先生の環境DNA講座を特別取材!

2022年6月に「角川の集める図鑑GET!」シリーズ待望の新刊『GET!魚』が発売。その総監修者である宮正樹先生が、図鑑の中でも紹介している最新技術「環境DNA」を実際に体験できる親子向けの講座が開催され、その貴重な機会を編集部が取材してきました。


連続講座の1回目は環境DNAを体験するための講習会

お魚博士の宮先生は、千葉県立中央博物館の生態・環境研究部長。遺伝子情報を利用して、魚の生態や進化的起源を探ることを研究テーマに、環境DNAから種を特定する「バケツ一杯の水で海や川にすんでいる魚を判定する技術」が、国内外で大きな反響を呼び、現在、世界各地でその技術が使われています。そして、『GET!魚』では世界中に飛び回って研究した魚たちのことを紹介してくれました。


環境DNAを用いた調査法を開発した宮先生


今回の講座のタイトルは「バケツ一杯の水から海の魚を探る」です。千葉県立中央博物館で行う全2回の連続講座では、千葉県内から集まった7組18名の小学生親子に宮先生が環境DNAを優しくレクチャー、実際に魚の調査も体験してもらいます。第1回目は7月17日、ここでは夏休みに各ファミリーが行う調査“本番”に臨むための講習会が開かれました。


魚にまつわる貴重な話を熱心に聞く参加者の皆さん


講座がスタートし、宮先生があいさつのあとに参加者全員にいきなり質問を投げかけます。「昨年も6組の親子にこの講座に参加していただきました。その際、千葉5か所と三浦半島1か所で集められた5リットルの海水から何種類の魚が見つかったでしょうか?」。10種類・20種類・150種類・200種類から選ぶ4択クイズで、参加者は挙手で回答。答えは150種類でした。

ひと昔前までは、釣りや網で魚を捕まえるか、海に潜るしか魚は数えられませんでした。加えて、海藻などに隠れてしまう魚もいるため、データの精度は低かったのです。それが環境DNAによる最新技術のおかげで、バケツにたった一杯の水をくむだけで、そこにすむ魚を高い精度で特定できるように。しかも、多くの魚の種類を見分けられるのが、環境DNAのスゴイところ。講座の前半では、環境DNAの概要、これまでの研究成果などについて、子どもにも理解してもうために、できるだけかみ砕いた言葉に置き換えて宮先生はお話されました。


プロジェクターで写真、グラフなどを投影しながら講座は進行


持参した『GET!魚』を見ながら話を聞くキッズも


DNAとは、体の設計図の役割をもつ部分のこと。私たちの体を形成する器官、臓器すべての細胞に存在し、DNAの情報に基づいて細胞が作られます。宮先生が調べている環境DNAは、魚の体内から放出されるDNAです。その由来はまだ特定されていませんが、魚の体液や、フンと一緒に外に出された腸の細胞などと考えられています。

環境DNAは、魚の種類によって少しずつ特徴が異なります。それを利用し、バケツで集めた水に含まれる環境DNAのごくわずかな違いを最新技術で分析することで、水をすくった場所にどんな魚たちがすんでいるのかわかります。この一連の作業を専門用語で、「環境DNAメタバーコーティング法」と言います。


『GET!魚』内で環境DNAを紹介したページ



キーワードは「安全第一」、DNA調査は採水場所探しが肝心!

講座の後半は、参加者家族がそれぞれ夏休みに海に行って、環境DNAのサンプルを集める具体的なやり方を学ぶ講習です。参加者の皆さんには、本番用・予備用・練習用の3つの袋にまとめられた環境DNAろ過キットが配布され、練習用の器具に触れながらレクチャーを受けました。


配布された環境DNA調査用キット


男の子が持つのはバケツですくった水を吸い込むシリンジ(注射器)


その内容はキットの各器具の説明に始まり、採水場所の選定、バケツなどの事前の準備、採水・ろ過・環境DNAサンプルの処理と保管など、ひと通りの流れを丁寧に説明。最後は冷蔵便でサンプルを千葉県立中央博物館宛に送れば作業は終了となります。

宮先生が注意喚起を促していたのが、採水場所の選定です。遠浅の砂浜や波が荒い磯などは足場が悪く適していません。波のうねりが大きい台風の前後、滑りやすい干潮時の磯はとても危険です。先生は「安全第一でお願いします」と何度も呼びかけていました。また、砂浜や大雨が降った直後の海水は濁っているので、ろ過の最中にフィルターに目詰まりが起き、環境DNAの採取が難しくなります。宮先生のアドバイスを聞きながら熱心にメモをとったり、採水・ろ過の仕方について先生に質問する親御さんもいました。


話を聞きながらメモするお母さん



『GET!魚』ファンが集まりミニサイン会状態に

約1時間が過ぎ、「そろそろお子様の集中力が切れる頃ですけど、最後までよく頑張って話を聞いてくれました」と宮先生。第1回目の講座が終了すると子どもたちは席を立ち、持参した『GET!魚』にサインのおねだり。先生と記念撮影を行う親子の姿も!


図鑑にサインを書いてもらい、子どもは大喜び


記念撮影にも気軽に応じてくれた宮先生


帰り際には取材班が数名のパパ・ママに、今回の講座に参加理由を聞いてみました。「僕自身、釣りで千葉の海によく行くので興味がありました。それと小学3年の娘の夏休みの宿題も兼ねてです」(賀久さん)、「小学3年の息子が自由研究で微生物を調べたいと言っていたので、そこにつながるかなと。環境DNA集めは館山の海に行く予定です」(長谷川さん)、「小学2年の子ども(男子)は図鑑を何冊も持っているほど、大の魚好きなんで(笑)。住んでいる山武市の漁港で環境DNAを調べようと考えています」(今関さん)、「小学4年の息子は生物の研究が大好きなので応募しました。親子でカメの標本を自作するなど、海の生物が特に好きですね」(梶原さん)。やはり魚好きのお子さんが多く、親子で海での調査をワクワク楽しみにしているのが伝わりました!

次回は調査結果を発表! 

さて、第2回目の講座は2か月後の9月18日(日)です。それまでに宮先生は、7組のファミリーが調査し集めた環境DNAサンプルから、遺伝子増幅装置や超並列シークエンサなどの機器を使って環境DNAを抽出し、データ化して分析。それぞれの海にすむ魚の種を特定し、当日その結果を発表します。果たして前回の150種類を超える魚が見つかるのか、レア魚が発見されるのか、とても楽しみです。

文・取材=小林智明

 




『角川の集める図鑑GET!魚』とは?

世界中の魚を生息地域別に収録した新しい子ども向け学習図鑑。海水魚と淡水魚がすむ環境の重要性や多様性に焦点を当てて構成し、各章に設けられたミッション(クイズ)をクリアして進むことで学びが広がり、深まります。さらに2つの特典にも注目。QRコードを読み込むだけでいつでもどこでも水中動画が見られ、ダイバー気分に! もう一つは無料WEBサービス特典『GET!+』で、世界の魚をコレクション。世界中の珍しい魚たちをオンライン図鑑として集められるだけでなく、カードを読み込むことで遊び方も無限大です。




書籍情報


総監修:宮 正樹監修:佐土 哲也監修:小枝 圭太

定価
2,200円(本体2,000円+税)
発売日
サイズ
A4変形判
ISBN
9784041118535

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