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【期間限定】『呪ワレタ少年』1巻無料スペシャル連載 第5回

「ぐあああぁぁ!!」


 髪の繭のほうから、少年の悲鳴が響いた。

 和葉たちが見ると、少年の全身に黒い髪が巻きついていた。

 少年の身体はミイラのようになっていて、手足を動かすことができない。

「あああ、があああ」

 髪が少年の身体を締めつけていく。

「あ、あああ、ああ」

 少年の顔が、苦悶の表情に変わっていく。

「そんな!」

「君、今すぐ助けるぞ!」

 父親がそう言うが、少年は苦しみながらも、また首を横に振った。


「こ、これは……、僕のせい……なんだ……」


「僕のせい?」

 和葉たちが戸惑っていると、髪の繭の中から何かが出てきた。


 フフフフフフ


 日本人形だ。

 カタカタカタカタカタ

 人形は不気味な音を響かせながら、繭の上に立つと、少年のほうを見た。


 ギュウウゥゥゥ


「うわああああ!」

 人形から伸びた髪が、さらに少年を締めつける。

 全身に激痛が走り、気を失いそうになる。

 それでも、少年はペンを持った手に力を入れた。

 朦朧としながらも、人形を睨む。

 ペンを強く握り締める。

「僕は……、お前を──!」

 少年は、目をカッと見開く。

 刹那、ペンの表面に見たこともない奇妙な模様が浮かび上がる。

 少年がペンを走らせると、宙に青白い炎が現れ、円が描かれた。


 ウウウゥッ!!


 人形が怒ったような声をあげる。

 少年は円の中に見える日本人形を睨んだ。

 少年の赤い目が光る。

 その目に何かが視える。

 それは、人形の『名前』だ。

「すべての災悪を、この光によって打ち消さん! お前の名は──」

 少年は、ペンを走らせ、空中に文字を書いた。



 カ ミ ノ ビ ニ ン ギョ ウ



 瞬間、髪伸び人形の動きがピタリと止まった。

 身体を小刻みに震わす。


 ウウゥ ギャアアア アァァァ


 次の瞬間、髪伸び人形の身体にヒビが入り、光が漏れ出す。

 そのまま、粉々になって消滅した。

 髪も消え、少年はその場に倒れる。

「大丈夫!?」

 和葉たちは少年に駆け寄ろうとする。

 だが、少年は手を挙げ、それを拒んだ。

「君たちの誰かが……、『呪われた少年』の名前を言っちゃったんだ。だから……、災悪が現れてしまった……」

「名前……」

 和葉は、自分が呪われた少年の名前を言ったことを思い出した。

「私のせいで」

 少年はそれを聞き、フラフラしながら立ち上がると、首を横に振った。

 和葉は、そんな少年の姿を見る。

 そして、ハッとした。

 白い服を着ていて、左目が赤色のオッドアイ。

「もしかして、あなたは」

 和葉は、昨日見た呪われた少年の名前が書かれた紙を思い出した。


 壊井ウワサ


 紙には、『壊井ウワサ』という彼の名前が書かれていた。

「僕に関わっちゃいけないんだ……」

 ウワサは和葉たちにそう言う。

 刹那、全身が痛み、苦しそうな表情をする。

「あっ」

 和葉は心配し近寄ろうとするが、足が思わず止まった。

 彼は、呪われた少年なのだ。

 ウワサは、そんな和葉を見つめる。

 その表情は、どこか悲しそうだ。

 やがて、ウワサは耳にイヤホンをつけると、何も言わず、その場から去って行った。



「え、あのお兄ちゃんが?」

 とある町。

 小学5年生の内村晴喜は、ひとりの人物と話をしていた。

 その人物は、中学生ぐらいの少年で、黒ずくめの服を着ている。

 晴喜は、先日霧女に襲われたとき、ひとりの少年に助けられた。

 彼こそが呪われた少年だったのだ。

「やはり、この町に来てたんだね」

 黒い服の少年が呟く。

「あのお兄ちゃんのことを知ってるの?」

 晴喜が尋ねると、黒い服の少年は小さく頷いた。


「とてもよく知っているよ。彼さえいなければ、災悪は現れることはない。だから、僕は……」


 黒い服の少年は、険しい表情でそう言う。

 その拳は、震えるほど強く握り締められていた。




呪ワレタ少年(6)彼と彼の絆』好評発売中!


作:佐東 みどり 作:鶴田 法男 絵:なこ

定価
792円(本体720円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322401

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