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NEW ものがたり

【期間限定】『呪ワレタ少年』1巻無料スペシャル連載 第3回

「そんな!」

 少年は晴喜を守れず、唇を噛みしめる。

 そんな少年の前に、霧の中から誰かが現れた。

 あの若い女だ。

 女の身体からは、白い煙が出ている。


 次の瞬間、女は、小学生ぐらいの女の子になった。


「また若返った」

 女の子は、目を細めて不気味にほほ笑むと、宙に浮かびながら、公園の中へと逃げた。

「あっ!」

 少年は、晴喜をその場に寝かし、立ち上がる。

「あ、あああ」

 晴喜は、震えながら少年のほうを見る。

 少年は、そんな晴喜をじっと見つめた。

「必ず、君たちを助けるから!」

 少年は銀色のペンを取り出すと、霧に包まれた公園のほうへと駆け出した。


「どこにいるんだ!?」

 少年は、目を凝らす。

 ペンを握る手に力が入る。

 しかし、女の子はどこにもいない。

「また、逃げたのかも……」

 少年は戸惑いながらも、すべり台までやって来た。


 キャ キャ キャ


 すべり台の上から笑い声がした。

 ハッとして、顔を上げる。

 だが、すべり台の上には誰もいない。

「どこだ?」


 キャ キャ キャ

 キャ キャ キャ キャ


 ブランコやジャングルジム、いたるところから笑い声が聞こえてくる。

「くっ」

 少年はペンを握り締めながら周りを見るが、女の子の姿はない。

「一体どこに……?」

 そう思いながら、後ろに下がった瞬間、背中に何かが当たった。

「わっ!」

 少年は、あわてて振り返って身構える。

 そこにあったのは、大きな木だ。

「くっ」

 少年は、再び遊具のほうに顔を向けようとした。

 瞬間──、


 キャキャキャキャキャ


 霧の中から女の子が飛び出してきた。

 女の子は少年に飛びつく。

「うわあっ」

 勢いに押され、少年は倒れる。

 キャキャキャキャ

 女の子は笑いながら、倒れた少年の身体を強く抱き締めた。

「うあ、ああああ」

 少年は、だんだん身体に力が入らなくなっていく。

 顔や手もシワシワになっていく。

「うう、あああ」

 キャキャキャキャキャ

 少年の全身が、老人のようになっていく。

 しかし、その目は、女の子を睨んでいた。

 女の子は、さらに若返り、幼稚園児ぐらいの小さな女の子になった。

 その身体からは、煙が出ている。

 それを見て、少年は目をカッと見開いた。


「このときを待っていた……。お前がそばに来る、このときを──」


 少年は手の中のペンを強く握り直す。

 刹那、ペンの表面に見たこともない奇妙な模様が浮かび上がる。

 少年がペンを走らせると、宙に青白い炎が現れ、円が描かれた。


 キィィ!!


 女の子は声を上げ、少年を威嚇した。

 少年はフラつきながらも起き上がると、円の中に見える女の子を睨んだ。

 少年の赤い目が光る。

 その目に何かが視える。

 それは、女の子の『名前』だ。

「すべての災悪を、この光によって打ち消さん! お前の名は──」

 少年は、ペンを走らせ、空中に文字を書いた。



 キ リ オ ン ナ



 瞬間、霧女の動きがピタリと止まった。

 霧女は身体を小刻みに震わす。


 キ キキ キィィィィ!!!


 次の瞬間、霧女の身体にヒビが入り、光が漏れ出す。

 そのまま、粉々になって消滅した。


 公園に太陽が差し込む。

 霧が晴れていく。

 少年の全身に力がみなぎる。

 見ると、シワがなくなり、元の身体に戻っていた。

 少年は、自分の手足を見て、ホッと息を吐く。

 やがて、ゆっくりと立ち上がった。


「もう大丈夫だよ」

 公園から出た少年は、晴喜にそう声をかけた。

 晴喜も元の姿に戻っていた。

「け、健一郎くんは?」

「彼も大丈夫」

 少年はそう言いながら、立ち去ろうとした。

 そんな少年に、晴喜は声をかけた。

「もしかしてお兄ちゃんは……」

 晴喜と健一郎だけがいた霧の町の中に、なぜか少年もいた。

 彼は、ただの少年ではないのかもしれない。

「僕は……」

 少年は何かを呟こうとする。

 だがすぐに、小さく首を横に振った。


「僕に関わっちゃいけないんだ」


 少年は、銀色のペンをしまい、耳にイヤホンをつける。

 そして振り返ることなく、その場から去って行った。



第4回へ続く

呪ワレタ少年(6)彼と彼の絆』好評発売中!


作:佐東 みどり 作:鶴田 法男 絵:なこ

定価
792円(本体720円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322401

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