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NEW ものがたり

【期間限定】『呪ワレタ少年』1巻無料スペシャル連載 第3回

「人だけじゃないよね……」

 大通りだけではなく、家までの帰り道も、かなり交通量が多い。

 しかし、霧が出てから、走っている車を一台も見ていなかった。

 晴喜は、霧に包まれた大通りを改めて眺める。

 いつもなら、この時間は渋滞になっているが、まったく車の姿がない。

「何だか、変だよね」

「う、うん……」

 晴喜は意味が分からず、ゾッとした。

 そのとき、青い光が目の端に見えた。

 大通りの交差点の信号が、赤から青に変わったのだ。

 晴喜は釣られるように、信号を見る。

 そして、何気なく交差点の向こうを見た。

「あっ」


 交差点の向こうに、ひとりの影が見える。


 その影は森の前に立っていて、こちらを見ていた。

「健一郎くん、人がいたよ!」

 それを聞き、健一郎も交差点の向こうを見た。

「ほんとだ! よかった~」

 目を凝らして見ると、どうやらおばあさんのようだ。

 晴喜たちはホッとし、笑みがこぼれる。

 おばあさんは、霧のせいで顔はよく見えないが、晴喜たちに向かって手招きしていた。

「ねえ、晴喜くん。おばあさんもこの霧のせいで困ってるんじゃないのかな?」

「うん、そうだよね。行こう」

 晴喜は、健一郎とともに、おばあさんのもとへ駆け寄ろうとした。


「行っちゃだめだ!」


 突然、背後から声がした。

 驚き振り返ると、ひとりの少年が立っていた。

 白い服を着ていて、両目の色がそれぞれ違う。

 少年は2人に話しかけた。

「あれに近づいちゃだめだ。災悪は人を襲うから」

「さいあく?」

 戸惑う晴喜たちをよそに、少年はおばあさんを睨む。

「君たちのどちらかが呪われた少年の名前を言っちゃったんだ。そのせいで……」

「えっ??」

 それを聞き、晴喜は健一郎のほうを見る。

「呪われた少年の名前って……」

 少年の言うとおり、噂では名前を言うと呪われてしまうのだ。

「まさか、健一郎くんが名前を言っちゃったから?」

 晴喜は、自分たちが呪われてしまったことに気づいた。

「そんなのただの噂じゃなかったの?」

 名前を言った健一郎がオロオロしながら言う。

「この霧も、災悪の影響かもしれない……」

 少年はそう言いながら、おばあさんを見る。


 すると、おばあさんがわずかに宙に浮いた。


「あれは」

 少年は、ハッとすると晴喜たちのほうに顔を向けた。

「今すぐ逃げなきゃ!」

「逃げる?」

「あのおばあさんが、災悪なんだ!」

「えっ」

 晴喜たちは、交差点の向こうに立つおばあさんが宙に浮いていることに気づいた。

「何なのあれ!?」

「いいから逃げなきゃ!」

 少年が声を上げる。

 次の瞬間──、


 スゥゥゥ


 おばあさんは宙に浮きながら、晴喜たちのほうへと近づいてきた。

「うわあああ!」

 人間ではない。

 捕まったらどうなるか分からない。

 晴喜と健一郎は、少年とともにあわてて逃げ出した。



   ●


「名前を言ったせいで呪われちゃったんだ……」

 霧の中。

 晴喜は必死に走りながら、状況を理解しようとしていた。

「そんなこと言われても、僕、知らなかったんだ」

「そ、それはそうだけど」

 健一郎は、涙声になっている。

「今はそんなこと言ってる場合じゃないよ!」

 少年は、晴喜に言う。

 しかし、晴喜は走りながら少年に尋ねた。

「どこに逃げればいいの??」

 今、どこを走っているのかさっぱり分からなかったのだ。

 道路や周りの建物は、町で見かけたことのある物ばかりだ。

 だが、その位置がおかしかった。

「ここを右に曲がったら、大きな駐車場があるはずなんだ」

 晴喜はそう言いながら、道路を右に曲がる。

 そこには、駐車場ではなく、レストランの建物が建っていた。

「このレストランって、たしか駅前にあるやつだよね??」

 本来は別の場所にある建物だ。

「こんなの絶対おかしいよ」

 晴喜は理解ができず震える。

 健一郎も戸惑っている。

 一方、少年は周りを睨むように見ていた。


「この霧のせいだ。霧に包まれたせいで、位置がぐちゃぐちゃになっちゃったんだ」


 少年は、町から出られないことに苛立つ。

 そのときふと、晴喜たちのほうを見た。

「えっ」

 気づくと、晴喜たちがいない。

 霧のせいではぐれてしまったのだ。

 少年は周りを探す。

 だが、どこにもいない。

「そんな……」

 少年は、あわてて駆け出した。


 一方、晴喜は必死に走り続けていた。

 すると、健一郎が声をあげた。

「ねえ、さっきのお兄ちゃんがいないよ!」

「ええ?」

 立ち止まって、後ろを見るが、たしかに少年がいない。

「まさか、はぐれちゃったの?」

 道路の位置はぐちゃぐちゃになっている。

 探すのは困難だ。

「どうしよう」

 晴喜がそう思っていると、ふと、霧の中に影が見えた。

「お兄ちゃん?」

 晴喜はさっきの少年だと思い、声をかける。

 しかし、返事はない。

「ね、ねえ」

 晴喜たちが戸惑っていると、薄らとその人物が見えた。


 あのおばあさんだ。

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