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【期間限定】『呪ワレタ少年』1巻無料スペシャル連載 第3回

 おばあさんは宙に浮きながら、晴喜たちに迫った。

「ひいい」

 晴喜は道路の脇に飛ぶように逃げる。

「は、晴喜くん」

 健一郎は怯え、その場から動けない。

 おばあさんは健一郎の腕を掴んだ。

「健一郎くん!」

「やめろ!」

 晴喜は健一郎を助けようとするが、それよりも早くおばあさんが動いた。


 スゥゥゥゥ


「うわああ!」

 健一郎が腕を掴まれたまま地面を引きずられて行く。

「助けて!!」

 健一郎は、引きずられながら必死に叫ぶ。

 その顔が、みるみる青白くなっていく。

「ああ、あああ」

「健一郎くん!」

 声を上げる晴喜のほうに、健一郎は顔を向ける。

 それは、いつもの健一郎の顔ではなかった。

「はる……き……くん」


 健一郎の顔は、シワシワの老人のようになっていた。


 おばあさんは、掴んでいた手を離し、健一郎をその場に放り捨てる。

「う、ううう……うう」

 顔だけではない。

 身体も細くなり、シワだらけになっている。

「健一郎くん!!」

 晴喜は、健一郎に駆け寄ろうとする。

 だが、そばに立つおばあさんを見て、思わず立ち止まった。

 その身体から白い霧が出ている。


 次の瞬間、おばあさんは、若い女になった。


「そんな……」

 女は、目を細めて、不気味にほほ笑む。

 そのまま、スゥゥッと動き、霧の中へ消えて行った。

「はる、き……、くん」

「健一郎くん、しっかりして!」

 晴喜は、健一郎を抱きかかえる。

 健一郎は無事だが、完全に老人になっていた。

「いた!」

 そんな2人のそばに、少年が走ってやってきた。

「お兄ちゃん! 健一郎くんが!」

 少年は、健一郎の顔を見て戸惑う。

「おばあさんに掴まれて! おばあさん、若い女の人になったんだ」

「若い女に……??」

 それを聞き、困惑した表情になった。

「とにかく、君は彼と隠れてて」

「でも」

 晴喜は戸惑うが、少年はそのまま霧の中へと走り出した。


 深い霧の中。

 少年は走り続ける。

「早く名前を視ないと」

 奥歯を噛みしめ、強く握り締められた拳が震える。

「このままじゃ全員が。──僕がなんとかしなきゃ」

 少年は走りながら、懸命に女を探し続けた。


 その頃。

 晴喜は健一郎とともに、駐車場に停めてある車と車の隙間に隠れていた。

「健一郎くん、しっかりして」

 少年が何者なのか、どうやって女を倒すのかも分からない。

 だが、彼なら健一郎を助けてくれるかもしれない。

「はる……き……くん」

 ふいに、健一郎が目を開けた。

「健一郎くん!」

 健一郎は、弱々しい瞳で晴喜のほうを見る。

「ごめん……ね。僕の……せい、で……」

 健一郎のシワシワの目から、涙が流れる。

 呪われた少年の名前を言ったのは、健一郎である。

 彼はそのことを謝っていたのだ。

「健一郎くん……」

 晴喜は目に涙を浮かべながら、首を大きく横に振った。

「悪いのは僕だよ!」

 呪われた少年のことをちゃんと説明しなかった自分が悪い。

 晴喜は心からそう思っていた。

「すぐ元に戻るからね」

 晴喜は、目に涙を浮かべながら、健一郎の手を強く握り締めた。


 そのとき、健一郎が目を大きく見開いた。


「あ、あ、ああ」

「どうしたの、健一郎くん?」

「ああ、あ」

 健一郎は目を大きく見開きながら、身体を震わせる。

「どこか痛いの? しっかりして!」

 晴喜は必死に健一郎に声をかける。

「あ、ああ、あ」

 健一郎は、ゆっくりと手を挙げる。

 震える手の指が、晴喜の後ろを指さす。

「えっ?」

 晴喜は、戸惑いながら、後ろを見た。


 そこには、あの若い女が立っていた。



   ●


 少年は、道路を走っていた。

 角を曲がり、また角を曲がる。

 やがて、坂の前に辿り着いた。

「あっ」

 ふと、坂の上に、霧に包まれた何かの影が見えた。

「あれは!」

 少年はあわてて坂を登る。

 影は奥へ奥へと歩いて行く。

 その動きは、フラフラとしていて、そばにある公園へ入ろうとする。

「待て!」

 少年が声をあげると、影はその場に立ち止まった。


 ドサッ


 突然、影が倒れる。

 少年があわてて駆け寄ると、そこに倒れていたのは、老人だった。

 老人は、子どもの服を着ている。

「まさか!」

「う、うう、うう」


 それは、シワシワの老人になった晴喜だ。

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