みんなにナイショで、あたし、つくっちゃうよ。プロの舞台!
あたし、こころ。人と話すのは超ニガテだけど、セリフを妄想するのがトクイな中学1年生! でも……「妄想ノート」を学校でなくしちゃった!?
2026年6月10日発売の『かくしごとっ! あたしが天才作家の身がわりに!?』(深海ゆずは・作、tanakamtam・絵)を、先行ためし読みできちゃう!
大人気「こちらパーティー編集部っ!」「スイッチ!」「七色スターズ!」シリーズの深海ゆずはさんがおくる、元気とトキメキいっぱいの【お仕事×学園ラブコメ】はじまるよっ☆
『かくしごとっ! あたしが天才作家の身がわりに!?』
深海ゆずは・作 tanakamtam・絵
6月10日発売予定!
あたしの「妄想ノート」を読みあげているのは、いったいだれ!? 全速力で放送室に向かった主人公・こころが見つけたのは……? とびきり楽しい【お仕事×学園ラブコメ】ためし読み第2回!
※これまでのお話はこちらから
【2】「学園パーフェクト」参上!
ハアハアハア。バターン!
「ちょっとそこのアンタっ! じじじじ、自分が何をしてるかわかってる!?」
あたしはドアをあけるやいなや、後ろ向きで座っている男子に向かって仁王立ちになる。
そして、すっきりとした首の男の子の背中に向かって、どなりちらした。
「何をしてるか? このはずかしいノートの落とし主をさがしていただけですよ?」
男の子は背中を向けたまま、すずしい声でそう答えた。
「村田さんが佐野くんの手を取る。おどろく佐野くん。『手、つめたいね』」
ギャー! 本当にっ。本っっ当にやめて――っ!(魂の叫び)
ブチンッ!
怒りとはずかしさで、人見知りだったあたしの、羞恥心がはじけとぶ!
淡々とノートを朗読しつづける男子に向かい、あたしはイスをふりあげた。
「あたしを殺人鬼にする気!? それ以上読まないでええええっ!」
「ははっ、殺人鬼ですか」
なにハナで笑ってんの!? 本気で後頭部に直撃させたろかっ!
普段のあたしからはぜったいでないような大声が、お腹の底からわきでる。
「人の妄想を、声にだして読むだなんて! 殺意をいだかせるには十分すぎる! フードプロセッサーでみじん切りにして、餃子の具にしてやるから!」
「ははは。餃子ですか。怒りの感情が伝わってきていいですね」
え!? なんで笑ってんの、この人!? こっっっわっ!(ドン引き)
もはや正常な状態(=人見知り)でないあたしは、ふりあげたイスを最後の理性で床に置くやいなや、目の前の男の子に突進した。
「ふざけるなーっ! 鬼畜っ! アンタ、こっちに顔をみせなさいよ!」
あたしはズカズカと男の子の近くにいき、その肩に手をかけた。
いきおいにまかせて相手を振り向かせ、顔をジッと確認すると――。
あたしは「ぎゃあ」と悲鳴をあげて、フィギュアスケート選手が身体を大きくそらせるように(イナバウアーってやつね!)身体をのけぞらせた。
「う………うううう……ウソでしょ!? む……村雨リオウっ!?」
あたしの目の前にいらっしゃるのは、『学園パーフェクト』と呼ばれる王子様っ!
あたしのような地味女子には、まったく縁のない人だと思ってたのに……。
なんで目の前に、コイツがいるのおおおおっ!?
しかも雲の上の人が、よりによってあたしの妄想ノートを音読なんて、どんなバグ!?
「ははは。鬼畜なんて、はじめて言われたので新鮮です」
「この状況で!! ほかに当てはまる言葉ってある!?」
「なるほど。まぁ、自覚はあるので。やはり見る目がありますね」
げっ。笑顔でサラッと認めやがった!
やっぱり鬼畜! 鬼畜なだけでなく学年一のムカつかせ王子だわ!
それに、あたし――なんか、ヤバいかも。
いちばんはずかしいものを声に出して読まれてキレたせいか、ぜんぜんリオウには緊張しない。
人は命(=大事なノート)がかかっていると、火事場のバカ力がでるもんなんだなぁ。
「ノートひろってくれてありがとうございました! もう返してください」
「『返してほしければ、その指で俺の唇をこじあけてうばってみろよ』」
「ギャー! そんなハレンチなこと、あたし書いてない!」
「今は――ですよね? エンピツでこすったら、でてきました。はずかしくて消したんですか? 俺はこのセリフ、すごくいいと思いますよ。とてつもなくはずかしくて」
ぬあああああっ、そうですよ! はずかしくなって消したんです!(ヤケクソ!)
それを、ごていねいにエンピツで黒くぬって浮かびあがらせて読むなんて、鬼すぎるっ。
「書いてるときはノリノリでも、いざ読みかえしたらはずかしくなって消したパターン。筆がのりすぎってところかな」
ギャー! わからないでえええっ!
目を見ひらきフリーズするあたしに向かい、リオウはヒラヒラとノートをふった。
「羞恥心0で欲望のまま妄想して出力できるなんて。才能ありますよ」
さ……才能!?
「はじらいを持った普通の人間には、こんなこと、はずかしくてできませんから」
ぐはっ。イヤミが苦しい。苦しいよおおおおおっ!
「まぁ冗談はこのくらいにして。1年A組、桃山こころさん」
「ヒーッ! なんであたしの名前を!?」
「ふつー書きますか? こんな危険なノートに、自分のフルネーム」
「はっ。校則で、ぜんぶの持ち物に名前を書くってあったから、つい」
そうか。名前を書かなければ、サイアクあたしのものじゃないって言って逃げられたのかっ。
「しかもナンバー20って20冊目?」
「細かいところまで気づかないで!」
ヒマつぶしなら、ほかにいくらでもあるでしょうがー!
いつのまにかリオウがさらに近づいてくるもんだから、あたしは悲鳴をあげる。
「ノート、ひろってくれてありがとうございました。あなたのサイアクな本性はだれにも言いませんし、もう二度とお話しすることもないと思うので――はい」
あたしはリオウに向かって手を差しだす。ノートを返してもらって、速攻でオサラバだ!
「二度と話さないだなんて、ひどいこと言いますね。――俺は今、大変傷つきました」
うそ! まったく! 1ミリも傷ついた顔してないじゃん!
「そうだ。明日の昼の放送で、1年A組在籍の桃山こころさんのノートを朗読したら、あなたの学校生活は、さぞかしエキサイティングになると思いませんか?」
ギャッ。コイツ、人の名前とクラス、シレッと暗記してるし、おどしてくる!
あたしはうなだれながら、白旗をあげるように両手をあげた。
「お願い! 何でもする! 何でもしますから!」
だから、それだけは、やめてええええええええっ!(心の叫び)
「何でもする――そんなことを簡単に口にするなんて、うかつですね」
リオウの目がキラリと光る。(あたし、何かまちがえた!?)
「うれしいな。俺の頼み、何でも聞いてくれるんですよね」
「頼みを聞けば……返してくれるンデスヨネ?」
リオウはおもしろがりながら、「検討させていただきます」と告げる。
「わかった! でもキスとか……そーゆーのはムリ……だよ? あたしのファーストキスは、推しのアオ様にささげるって決めてるから!」
鼻息をあらくして言うと、リオウがあからさまにドン引いたように、顔を引きつらせる。
「――アオって声優の?」
意外。リオウがアオ様を知ってるなんて。
「そう。デビューからずっと応援してるの! あたしにとっては神様みたいに尊い人なのっ!」
「顔出ししてない人を? もし、すっごいブサイクだったら……」
「バカにしないで! 本当のファンはね、相手がどんな姿でも推せるの!」
「ははは。アオがきいたら喜ぶなぁ」
人の推しを、友だちみたいに気やすく呼ぶな! と言いたいけれど、今はそれどころじゃない。
「だから悪いけど、あたしの唇はあきらめてください」
「すでにいろいろ妄想されてるようで恐縮ですが、まったく求めてないので安心してください」
「よ……よかった」
「――え、本気で言ったんですか」
ドン引くリオウに向かい、あたしはあわてて反論する。
「いやっ。だって少女マンガの鉄板の展開だしっ」
リオウがあたしに迫るなんて、7回転生してもないってわかってるけど!
「――こころさん、大丈夫ですか? 命より大事であろうノートは普通になくすし、心の声はだだもれだし。今ノートを返しても、すぐにまたなくす未来が見えますよ?」
ぐはっ!
リオウの言うとおりだ。そこはあたしも否定できない!(涙)
「それで、頼みってなに?」
あたしが聞くと、リオウは大きく深呼吸をしてから、急に真顔になった。
「俺の頼みはシンプルです。――舞台の脚本を書いてください」
「あれ? 舞台って……もしかして、演劇部に入ったとか?」
リオウは別のクラスなんだけど、こんだけの有名人だから――。
もしどこかの部に入ったなら、うちのクラスにも情報が聞こえてきそうなのに。
「逃亡した脚本家の代わりに、脚本を書く人間が必要なんです」
「『逃亡』!? なにそれ! めちゃくちゃ大事件なんだけど! まさか殺人事件に……」
「こころさん。『逃亡』って単語だけで、そこまで妄想を広げなくていいです」
だ……だって。
リアルで『逃亡』なんて言葉聞いたことないから、ビックリしちゃうよ!
「ちなみに逃亡したのって?」
「俺のクソ兄貴です」
ク……クソ!?
今、学園パーフェクト様らしからぬ単語が聞こえたのは、気のせいですよね!?
あたしは耳をうたがって、マジマジとリオウの顔をのぞきこむ。
「兄は脚本家でしてね。生まれ変わってあの性根が変わるなら、クソ兄貴の息の根を止めてやりたいと常々思っていたんです。ただ、実行する前に失踪してしまって。痛恨のきわみです」
「ははは。なんか笑顔で冗談言うタイプなんですね」
ニコニコとしたまま、否定も肯定もしないリオウに、あたしは乾いた笑いを続ける。
でも、リオウのかくされた一面を目にした気がして――。少しワクワクする。
「こころさん相手に猫かぶってもしょうがないでしょ。これ知ってますか?」
リオウは自分のポケットからスマホを取りだすと、あるページをひらいてあたしに向けた。
ぎゃあああ――――っ、そ、それはっ!!!
キラキラキラッ!
あたしは目を輝かせる。
「もちろん! 今朝もテレビのニュースで見た! 大人気ゲーム・『戦国リベンジマッチ』が舞台化するって。こう見えてあたし、ゲームめっちゃやってます!」
今、人気急上昇中の若手俳優たちが集まって、舞台をするんだって!
あたしは伊達政宗のポーズを決め、政宗の決めゼリフを口にした。
「『――独眼竜。道は、我が斬り拓く!』くーっ、しびれる!」
「よかった。それだけ知ってるなら話は早い」
ん? 話は早い?
「クソ兄貴の代わりに、あなたにこの舞台の脚本を書いてもらいます。これは『お願い』じゃなくて『命令』なので、あしからず」
はああああっ!? 冗談でしょ!?
ただの妄想好きな中学生に、プロの代わりに人気舞台の脚本を書けってこと!?
「ムリムリ! ぜったいにムリいいいいいっ!」
あたしは今日いちばんの声で、そう絶叫したのだった。
『かくしごとっ! あたしが天才作家の身がわりに!?』
ためし読み 第3回につづく(5月29日公開予定)
作: 深海 ゆずは 絵: tanakamtam
- 【定価】
- 880円(本体800円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324115