
カラフルだったり、巨大だったり、世界中には変わった昆虫も存在しますが、この連載で取り上げるのはあえて「身近な昆虫」です。「知っているつもりのあの昆虫に、こんな姿が!」という新しい感動が巻き起こること間違いなし! 知識やトリビアはもちろん、実際に観察できる場所、探し方も紹介します。夏休みの自由研究にも役立ちます!
※ためし読みでは、本書の内容の一部を抜粋してお届けします。
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樹液争い最強は誰か? じつは負けないカナブンの作戦
夜の「樹液酒場」では、さまざまなドラマが生まれます。樹液をなめるためにたくさんの昆虫がやってきますが、夜行性の昆虫の中ではカブトムシが一番強く、クワガタなどが来ても角で追っ払ってしまいます。
カナブンも樹液酒場の常連ですが、何せ体が小さいので簡単にカブトムシに投げ飛ばされます。でも、カナブンは投げられても投げられても、なぜかすぐに戻ってくることができます。それを可能にしているのが翅の仕組みです。
カブトムシなどの甲虫は、硬い鞘翅(前翅)を開き、次に後翅を完全に開いてから飛びます。後翅は折りたたみ式になっていて、ゆっくり広げてから飛ぶので、飛び始めるのに時間がかかります。
一方、カナブンは鞘翅を開かず、ちょっとした隙間から後翅をさっとすばやく出すことによって、一瞬で飛び始められるのです。だから、カブトムシに何度木から投げ飛ばされてもしばらくすると舞い戻ります。

昆虫たちでにぎわう樹液酒場とは?
たくさんの昆虫が樹液に集まり、まるで酒場のよう。その中にはスズメバチやカブトムシ、クワガタといった大型の昆虫から、カナブンなどの中・小型サイズの昆虫までいますが、小さいサイズの昆虫は大型昆虫に邪魔され、樹液にありつけないことも。


カナブンの負けない戦略
カナブンは体を大きくしたり、角などの武器を持つことはしませんでした。その作戦はすばやく飛び立つこと。写真を見ると、鞘翅の下をわずかに開いて後翅を出していることがわかります。
<豆知識>
カナブンの幼虫の生態は最近まで謎でした。2009年にある昆虫写真家が植物のクズの下でカナブンの幼虫を発見。幼虫はクズの葉の腐葉土を食べて育ち、冬は地中に潜ることがわかりました。
この連載を読んでくれた大人の方へ
昆虫に興味を持ったら、お子さんたちに自然の中で過ごす時間を増やしてあげてください。初めて見る生き物や美しい風景が心に深い印象を与え、自己肯定感を高める要素となります。研究によると、自然環境での体験はストレスを軽減し、心理的な健康を促進する効果があることが示されています。
子どもたちが自らの好奇心を持ちながら事象を探求し、学ぶプロセスを通じて、子どもたちが自らの足で歩み、世界を探求する力を育まれることを願っております。
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- 【定価】
- 1,430円(本体1,300円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784046065841