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Children & Education

子育て・教育

子どもを叱ることは必要ない⁉ 必要なのは〇〇すること!


子どもを尊重する教育法として、今話題となっているモンテッソーリ教育。自身も7歳と1歳の子育てをしながら、モンテッソーリ教師として活躍しているあきえ先生に子どもを「叱る」ことについて、お話を伺いました。


「怒る」と「叱る」の違い。子どもに必要なのは?

「怒る」というのは、何かに腹を立てて感情的になり、その高まった感情のままに物事を言うことですよね。また、「叱る」というのは、相手の間違いを正すため、強く諭すように物事を言うことです。
子どものことを怒るのはよくないと感じる方は多いと思いますが、叱る必要はあると思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は叱る必要もありません。叱る行為は、立場が上の人が下の人に対してするものですが、親子の立場はあくまでも対等です。そのため、「叱る」ではなく「伝える」ことが大切なのです。

「叱る」→「伝える」への変換サンプル
●サンプル①スーパーの中で走り回る
叱る:「走らないで! 何回も言ってるよね?」
伝える:「ここはお店の中だから歩こうね」

●サンプル②おもちゃを散らかして片付けない
叱る:「こんなに散らかして! 早く片付けて」
伝える:「おもちゃを使い終わったら箱の中に戻すよ」

●サンプル③コップの水をこぼす
叱る:「ちゃんと見ないからこぼしたんでしょ!」
伝える:「2つの手を使ってこうやってコップを持つとこぼれないよ」


「叱る」では「早くして」「ちゃんとして」「いい加減にして」など、抽象度の高い声かけが多く見られます。「伝える」では、やってはいけないことは指摘しつつ、するべき行動を伝えているのがわかります。
子どもは大人ほど理解力が高くはないので、できるだけ具体的にすべきことを伝えてあげることが大切です。
とはいえ、子どもがしたことに対して、ついイライラしてしまい、感情的になってしまうこともあると思います。

感情的になりそうな時におすすめ!
①子どもと離れても大丈夫な場所であれば、一旦距離を置く
②言おうとしていることを口に出さずに深呼吸をする
③もし、感情的に物事を言ってしまったら、気持ちを落ち着けてから「さっきの言い方はよくなかったよね。ごめんね」と、子どもに伝える




こんな場面では注意が必要! でも「叱る」のはNG



感情のコントロール力や理解力が未熟な子どもは、時に「伝える」だけではいけない2つの場面があります。その対処法についてお話しますね。

場面① 自分、他人、物に危害を及ぼす(叩く、噛む、蹴る、物を投げる・落とすなど)

叩いている手や噛んでいる口を大人が手で制して
「叩くことはやってはいけません。〇〇が欲しかったんだよね。そういう時は『かして』って言うんだよ。一緒に言ってみようか?」

場面② 自分の身が危ない(道に飛び出すなど、ケガをしそうなシチュエーション)
大人の身体を使って子どもの身体をホールドして
「車が走っているところで飛び出すことはやってはいけないことだよ。早くお店に入りたかったんだよね。でもここは危ないから、ママと手をつなごう」

【伝え方のポイント】
・身体を使って制止する
・わかりやすく線引きをする
・子どもの気持ちを代弁する


このような場面では、いつもの伝え方とは違った伝え方をする必要があります。しかし、このような場面でも「怒る」「叱る」は必要ありません。



「他人に迷惑をかける」という概念が子どもにはない

「他人に迷惑をかける」というシーンにおいて、子どものことを叱らなくては!と思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、子どもには「他人に迷惑をかける」という概念がありません。ただ楽しくてつい声が大きくなる、公園にいるお友達がやっている遊びがやってみたくておもちゃを取ってしまう、お友達に「貸して」と言われても貸すことができない。このようなシーンにおいて、子どもには全く悪気がありません



私たち大人は、まわりから「うるさい」と思われているかも、相手の親に対して気まずいなど、大人ならではの理由で、子どもに注意したり、叱ったりしてしまうことがありますよね。そのような場面でも、「叱る」を「伝える」に変えていきましょう。
あとは、極力そのようなことがないよう、子どもの自由を保障する考え方も必要になります。例えば、空いている時間に公園を利用する、借りる本を予約してから図書館に行く、ネットスーパーを利用するなど、少し先回りして考えるだけでも、状況は変わってきますよね。
そして、会話を控える、走らないで歩くなど、子どもにやって欲しい行動をまずは大人がやって見せることも大切です。
しかし、急な体調不良などで、病院に行かなくてはならない時など、先回りできない時もあります。同じ境遇の人が多い病院では、周りもある程度は理解してくれるので、周りの目を気にしすぎなくてもいいかもしれないですね。


「叱る」にまつわるお悩みにあきえ先生がアンサー!




Q お友達のおもちゃを取ってしまった時の声かけは?

A まずは子どもがしたかったことを認めてあげましょう

お友達と一緒に遊ぶことができるようになるのは、4歳頃から。それまでの子どもは基本的に一人で遊んでいることが多く、「一緒に使う」ということが難しいのです。そのため、子どもの視点からだと、おもちゃを取ったというよりは、おもしろそうなおもちゃを手に取っただけ。
相手に迷惑をかけてはいけないと思い、つい叱ってしまうことがありますが、まずは子どもがしたかったことを認め、してほしいことを具体的に伝えてあげるようにしましょう。

【声かけ例】
「これはお友達のおもちゃだから取らないよ。〇〇ちゃんも使ってみたかったんだよね。そういう時は『かして』って言うんだよ」




Q 3歳の娘に朝の支度で「早くしなさい」と言ってしまうことが多いです。

A 早くして欲しい行動を具体的に伝える

3歳くらいになると、自分で身支度ができるようになったり、ごはんをきれいに食べられるようになったり、赤ちゃんから幼児になったと感じる機会が多いと思います。
そのため、私たち大人の期待値も高くなり、抽象的な声かけでも話が通じていると思ってしまいがちです。
しかし、3歳頃は理解力も未熟で、やることをやるにも時間がかかります。早く何をして欲しいかを伝えることで、行動に移しやすくなります。
そして、あらかじめ「まだ3歳。時間がかかって当たり前」と、考えておくこともおすすめです。

【声かけ例】
「もう保育園に行く時間だから、靴下をはこうね」「靴下をはいたら、何をするんだっけ?(子どもの回答を待って)そう、靴をはくんだよね」




Q 片付けができない時、どうすればいいでしょうか?

A 3歳前半くらいまではできなくて大丈夫!

3歳くらいまでの子どもの場合、自分でお片づけをするのは難しいので、大人が片づけてあげるか、一緒に片づけることが必要です。
3~4歳頃になったら、自分で片づけられるようになるので、子どもでも片づけやすいよう、おもちゃの数をしぼり、片づけやすい引き出しやボックスを用意するなど、子どもでも片づけられるシステムを作りましょう。
それでも片づけない場合は、してほしいことを具体的に伝え、時には選択肢を出して、子どものお片づけをサポートしていきます。



【声かけ例】
・「このおもちゃはここにしまおうね。お母さんが箱を持っているから、〇〇くんは入れてくれる?」
・「おもちゃは全部で5個あるね。まずはどれから片づけようか?」




Q 子どもが親の叱り方をマネします。

A 子どもは聞いたことのある言葉しか発しません

3歳くらいになると、お友達に「それはちがうよ、こうするんだよ」などと指摘するような姿が見られることがあります。そういう時に「いい加減にしなさい」「だめって言ってるでしょ」と、どこかで聞いたことのあるような口調で話をすることがありますよね(笑)。
子どもは聞いたことのある言葉しか発しません。それは、親はもちろん、園やその他のお友達、メディアからの吸収などさまざまです。
もし、話して欲しくない言葉を使っていることがあったら、子どもが耳にする言葉に気をつけるようにしましょう。

【声かけ例】
(いい加減にしてという発言に対して)「お友達に早く進んでほしかったんだよね。そういう時は『〇〇ちゃん、進んで』と伝えるといいよ」




Q 子どものお友達に注意する仕方がわかりません。

A わが子とお友達、同じ伝え方でOK

前述したように、危険が及ぶ時以外は普通に会話をするように伝えればいいので、それはわが子でも、お友達でも変わりません。「叱らなくては」と思うと、言い方に気を遣うという側面があるかもしれませんが、子どもがわかるように伝えることは、気負わずに出来ると思います。
ただ、物を投げている、高いところから落ちそうなど、危険な場面に遭遇し、お友達のご両親が気づいていない場合は、身体を使って止めてあげることも必要です。

【声かけ例】
(砂場で砂を投げているお友達に)「ちょっと手を触るね。砂を投げることはしないんだよ。投げてみたかったんだよね。投げるんじゃなくて、掘ってみるのはどう?」




子どもがすべきことを具体的に伝えましょう!



子どものことを思うあまり、「きちんと叱らなければ」と、思ってしまいますよね。しかし、子どものことを強い口調で注意すると「怒られた」「こわい」というイメージだけが残ってしまい、何を言われたのかが抜け落ちてしまいます。そのため、また同じようなことをして、叱られるという悪循環にはまるのです。
「叱る」ことの一番の目標は「伝わる」、ことですよね。子どもは1回言っただけでは理解できないことも多いので、理解できるまで100回でも同じことを伝えるということが大切です。
これは、研究でも明らかになっていることですが、0~2歳くらいの子どもはどんな人に対しても親しみを持って接していくのに比べ、3歳以降は自分を尊重してくれる人に対してリスペクトを持つようになっていくのです。
そのため、「叱る」を「伝える」に変換して、子どもを尊重することで、その気持ちが次第に子供に伝わっていくと言えるでしょう。



次回は、「モンテッソーリ流の褒め方」をご紹介!11月10日(金)公開予定です。


監修:モンテッソーリ教師あきえ

国際モンテッソーリ教師ディプロマ(AMI)、保育士、幼稚園教諭。
公立の幼稚園教諭をしていた頃、日本の一斉教育に疑問を抱きモンテッソーリ教師に。現在は「子どもが尊重される社会」を目指して、モンテッソーリ教育に沿った子どもや子育てについての発信、オンラインスクール「Montessori Parents」の運営、ベビーブランド「mu ne me(ムネメ)」ファウンダー、オンラインコミュニティ「Park」を主宰。


◆「Montessori Parents
◆「mu ne me(ムネメ)
◆「Park

 


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