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子どものゲームは何歳から?【どうしてもやめられない……子どものゲーム依存】 第1回


子どもがどうしてもゲームがやめられない……そんな悩みを抱えている親御さんも多いのではないでしょうか?
本連載では、子どものゲーム依存について、ネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングだけでなく講演活動も行っている森山沙耶さんにわかりやすく教えてもらいます。

第1回は「ゲームは何歳から?」という疑問について、ゲームのメリットやデメリットを踏まえながら考えていきたいと思います。特に親御さんが心配される子どものゲーム依存についても解説していただきました。



 




ゲームを始める年齢の傾向は?

 最近では、小学生だけでなく、保育園や幼稚園に通う子どもたちの間でもゲームのタイトルやゲームに出てくるキャラクターの話が飛び交うなど、未就学児でもゲームをプレイしている子どもが増えています。

 全国的な傾向を見てみると、2歳で6割の子どもがインターネットを利用するようになり、そのうちゲームをする割合は1%ほどと少ない割合です。しかし、6歳で8割が、7歳で9割がインターネットを利用するようになり、ゲームの利用率については6歳で3割、7歳で半数を超えるという結果となっています。このように年齢が上がるにつれてインターネット全体の利用率とゲームの利用率は上昇していきます。 ※(1)



内閣府「令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」から引用しグラフを作成



内閣府「令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」から引用しグラフを作成
低年齢層(0〜9歳)の保護者で「子どもがインターネットをしている」と回答した人における割合


ゲームを始める子が増えてくると「友達もやっているから自分もやりたい」という要求も増えることでしょう。親としては、やらせてあげたいと思う一方で、小さい頃からゲームをすることでゲーム依存になってしまわないかといった不安を感じる人も多いと思います。実際にどのような影響があるのか見ていきます。


そもそもゲーム依存とは?

 子どもがゲームを始める際に「やり過ぎて依存にならないか」ということは心配な点です。ゲーム依存とは、ゲームの時間や頻度をコントロールできなくなり、生活面や健康面でさまざまな問題が生じてもやめられなくなる状態です。依存の状態になってしまうと、ゲーム以外の他の活動に興味を示さなくなる、ゲームをしていないとイライラする、怒りっぽくなる、睡眠リズムが崩れるなど、子どもの心身の健康に悪影響を及ぼします。



 ゲーム依存の有病率は全体で3%ほどと報告されており、中高生くらいの思春期の年代で割合が高いと言われています。最近では、小学生のゲーム依存も報告されてきています。割合を見てみると9割以上の人は依存にならないと言えるので、過度に心配する必要はありません。ただ、特別な性格の人がなるものではなく、条件が揃えば誰でも依存の状態に至る可能性はあるため、危険性を含めて正しく理解しておくことが重要です。


ゲームを始める年齢の目安はあるのか?

 ある研究では、就学前にゲームを始めた場合と就学後にゲームを始めた場合で、中学生になった時点でのゲーム依存傾向の発生率を調べたところ、就学前にゲームを経験していた方がゲーム依存のリスクが約1.7倍高いことが明らかになっています。※(2)
 別の研究でも、5歳以前から習慣的にインターネットを利用していた子どもは12歳以降に利用を開始した場合と比較して、中学生時の依存のリスクが高いことを示しています。※(3)



 これらの結果から、就学前にゲームや動画などを習慣的に利用できる環境は、将来的な依存のリスクを高める可能性があります。ただし、まだまだ研究が始まったばかりの分野なので、何歳になればOKかということを断定もできないのが実情です。


一概にゲームが危険というわけではない

 もちろんゲームやインターネットの中には、知育や学習の効果があるものも見られます。例えば、アクションゲームでは、複数のターゲットに同時に注意を向けるスキルや、空間を理解する能力などの認知的な能力の向上に関連することが示されています。
 また、スポーツのような身体活動を増やすゲームをプレイすることで通常のゲームより消費エネルギーが増えるため肥満の予防として活用できるかもしれません。※(5)
 このように、ゲームが一概に危険というわけではないのです。動画やテレビ番組でも、教育目的の番組やコンテンツであれば、子どもの興味関心を高めたり、新たな価値観に触れる機会になることもあります。ゲームの内容や仕組みをしっかりと見ていく必要がありそうです。




こんなゲームは注意が必要?!

 低年齢の子どもがゲームをする場合に注意が必要なのは、暴力性の高い内容のゲームがあげられます。暴力的な行動を学習するプロセスは環境的なさまざまな要因が絡むので、ゲームだけが要因にはなりえませんが、これまでの研究結果を整理した論文では、暴力性の高いゲームは、攻撃的な行動、攻撃的な考え方、攻撃的な気持ちを高めることが指摘されています。 ※(6)CERO(特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構)は、ゲームの表現内容にもとづいて対象年齢等を表示するレーティングを示しているので、そちらも参考にしてみてください。


CEROレーティングマーク



ゲームを十分に理解することから始めましょう

 ゲームを始めるときは、年齢に応じて、どのようなゲームだと悪影響が生じにくいか、安全に楽しめるかを子どもと一緒に考えてみることが大切だと思います。その際に、子どもでも理解できるようなゲーム依存について解説された本もあるので一緒に読んでみてもよいでしょう。依存を予防しながら子どもがゲームと上手に付き合うための環境づくりや関わり方のポイントは次回以降解説していきます。


【引用文献】
(1)内閣府(2023)令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査
(2)Jeong, H., Yim, H., Lee, S., Lee, H., Potenza, M., & Shin, Y. (2021). Preschool Exposure to Online Games and Internet Gaming Disorder in Adolescents: A Cohort Study. Frontiers in Pediatrics, 9, 760348.
(3)Nakayama, H., Ueno, F., Mihara, S., Kitayuguchi, T., & Higuchi, S. (2020). Relationship between problematic Internet use and age at initial weekly Internet use. Journal of Behavioral Addictions, 9(1), 129-139.
(4)Oei, A., Patterson, M. (2013). Enhancing Cognition with Video Games: A Multiple Game Training Study. PLoS ONE, 8(3), e58546.
(5)Primack, B. et al. (2012).  Role of Video Games in Improving Health-Related Outcomes. American Journal of Preventive Medicine, 42(6), 630-638.
(6)Anderson, C. et al. (2010). Violent Video Game Effects on Aggression, Empathy, and Prosocial Behavior in Eastern and Western Countries: A Meta-Analytic Review. Psychological Bulletin, 136, 151-173.

 

【プロフィール】

森山 沙耶
ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)所長
公認心理師、臨床心理士、社会福祉士
2012年、東京学芸大学大学院教育学研究科修了。家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。
2019年、ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)を立ち上げ。当事者とその家族に対するカウンセリング、予防啓発のための講演、執筆活動を行う。
著書に『専門家が親に教える子どものネット・ゲーム依存問題解決ガイド』(2023年7月Gakkenより発売)



 



 


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