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「3歳で自閉症と診断。読み書きはできますが、言葉があまり出ません。なんとかしてやりたい。」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q21:3歳で自閉症と診断。読み書きはできますが、言葉があまり出ません。なんとかしてやりたい。

■家族構成
相談者:ゆらゆう(相談したい子の母、40代前半)、夫(30代後半)、長女、長男(相談したい子、7歳)

■ご相談
 3歳の時に療育センターにて、自閉症と診断。その後療育を開始するも、現在も言葉があまり出ません。

 自閉症と診断されてから、改善の為、いろいろ調べ療育などもしているのですが、なかなか言葉が出てきません。こちらの指示は通るし、小学校2年生ですが、読み書き計算などはできます。文章問題や、道徳などの人の気持ちを考える勉強などは、難しいです。最近色々調べていると、斜頭症だと稀に発達障害が起きるという記事を見ました。息子は生まれた時から、右を向く癖があり、かなり右が凹んでいます。おそらく軽度というより、重度だと思います。7歳で斜頭症を治す方法など調べるのですが、やはり赤ちゃんの治療法しかなく、どうすべきか悩んでいます。もし、息子の発達が斜頭症によるものなら、なんとかしてやりたいと思い連絡しました。

A. 専門家の回答

できないことよりも、できることを見てあげましょう

頭の形と発達障害
 頭の変形については、気にされる親御さんは多いようです。ほとんどは寝るときの向きグセによるもので、成長するにつれて目立たなくなっていくものですが、ごく稀に頭蓋骨縫合早期癒合症という治療が必要な変形があります。ただ、その場合は、これまでの受診で医師から指摘されているはずなので、特にこれまで何も言われていないのであれば、気にされなくてよいと思います。

 どうしても気になる場合は、頭蓋変形外来のある病院などを受診されてもいいかもしれませんが、2歳くらいまでならなんとか治療が可能でも、おっしゃるように7歳では、思うような効果は出ないかもしれません。

 頭の形と発達障害の関係については、医学的にはっきりしたことは何も言えないのが現状です。

「話す」と「聞いてわかる」は脳の領域が違う
 息子さんは話すことはあまりできないが、読み書き計算ができるとのこと。言語能力には、「話すこと」(表出言語能力)と「聞いて理解すること」(受容言語能力)の2つがあります。息子さんの場合は、表出言語能力は今の段階では獲得できていないけれど、受容言語能力は発達している、と言えます。

 この2つはそれぞれを司る脳の領域が異なります。「話すこと」に関する脳のネットワークに問題があるのかもしれませんが、聞いて理解することができるのは素晴らしいことだと思います。3歳で自閉症と診断され、ここまでゆらゆうさんと一緒にがんばって療育に通われた成果でしょう。

大事なのは「コミュニケーションする」こと
 ゆらゆうさんとしては、一緒におしゃべりもしたいでしょうし、言葉が出てこないことに不安があるのはわかります。でも、息子さんにとって大事なのは「話す」ことよりも、「コミュニケーションする」ことです。

 脳のことはまだわかっていないこともたくさんあります。今後もしかすると話す方の脳のつながりができて急に話しだすかもしれないし、このままかもしれない、それはわかりません。

 どうでしょう。頭の形や話す力を改善しようとするのではなく、今できている「読み書き」能力を活用して、自己表現やコミュニケーションの方法を習得させる方向にゆらゆうさんの考え方を変えてみませんか。

自己表現の手段を見つける
 タブレットで文章を打つと音声で変換されたり、視線で文字盤を追えば音声になって出てくるなど、テクノロジーの進歩は目覚ましいものがあります。息子さんが話せなくてもコミュニケーションに困らないよう、サポートしてあげてください。

 他にも何か息子さんが、大好きなことはありませんか。例えば、絵を描いてるときは何時間も夢中になっているとか。楽器に興味があるとか。

 自分の考えていること、思っていることを伝えるのは、言葉だけではありません。息子さんに合った自己表現の手段が見つかるといいな、と思います。

「うちの子ちょっと変わってる?」子どもの発達お悩み相談室はこちらから

 

久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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