KADOKAWA Group

News

お知らせ

【レビュー】悩み多き「フンころがし」を通じて、子どもの自己肯定感を自然に育む

 丸めたフンの上にひとりたたずむフンころがし。フンころがしは悩んでいました。「ぼくはこのままでいいのだろうか」と。『フンころがさず』は、フンをころがすことに疑問をもったユニークなフンころがしを通じて、お子さんの自己肯定感を育てる物語です。
 子育てのキーワードに「自己肯定感」という言葉が使われることが多くなりました。園や学校でも、「自己肯定感を育てましょう」と言われることも増えてきています。しかし、私たち親が子どもの頃には、そんな言葉さえありませんでした。ライターの私も5年くらい前までは、原稿で「自己肯定感」と書くときには、後ろにかっこをつけて、「自分のことを大切な存在だと自分で認められること」などと説明を入れていました。それくらい新しい子育ての概念なのです。ですから、「そんなこと言われても、どうすればいいかわからない!」という親御さんのお気持ちはもっともだと思います。

 では、小さなお子さんにも響く、自己肯定感を伸ばすための具体的な方法というのはあるのでしょうか。もちろんあります。それは「あなたのままでいいんだよ」というメッセージを、親が発し続けることです。
 しかし、これが簡単なようで、なかなか難しい。なぜなら私たちには無意識のうちに、人と比較するくせがあるからです。きょうだいと比較する、お友達と比較する、はたまたいもしない「理想の子ども」と比較する。比較には際限がありません(これはきっと、私たち自身も同じですね)。そんな比較のくせから逃れるために、この「フンころがさず」はぴったりな絵本です。

 主人公は悩み多き「フンころがし」。まわりのみんなにばかにされ、フンを転がすことをやめてしまいます。



 フンを転がさなければ、「フンころがし」なんて名前じゃなくなると考え、フンを押したり、フンを持ち上げたりなど、色々な工夫をこらすフンころがし。しかし、なんだか気持ちはすっきりしません。



 悩むフンころがしは、木ばかりつつくキツツキとの出会いで、大切なことに気がつきます。

 子ども達の世界での同調圧力は思った以上に強く、「みなと同じが安全」という気持ちは、無意識のうちに子どもに刷り込まれています。そのため、ちょっと変わった特技や趣味について、周りのお友達に隠している子もいます。大人が同じ物差しを使って比較を続ければ、子どもはその物差しに当てはまらない自分を隠そうとします。でもその違いの中に、実は大切な宝物が隠されているのです。
 絵本の中で、フンをころがすとばかにされているフンころがし。実は太陽や月の光を元に方角を決め、移動距離を計測して移動する小さな科学者であることが知られています(他のフンころがしから離れた場所へごちそうのフンを運んだり、自分の巣へ持ち帰ったりするためです)。フンころがしがそうであるように、「人と違う」の中には、新しい未知の世界が広がっているのです。そんなふうに「人と違うって面白い」という気持ちを私たち親が持つことができたら、きっとそこから何かが変わっていくはずです。

 かく言う私も、つい2人の娘(姉)と、息子(弟)を比べて叱っている自分にがっかりする毎日。子育てはそう簡単にはいきません。そんな日々の中で、人と比較をするクセを少しでも変えるために、この絵本はきっと役に立ちます。子どもと一緒にフンころがしの悩みに寄り添い、「あなたのままでいいんだよ」という言葉にしにくいメセージを、わかりやすく楽しんで伝えていけたらと思います。

黒坂真由子

 

ためし読み、本の詳細はコチラ!





この記事をシェアする

特集

ページトップへ戻る