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何のために学ぶのか【故事成語】


子どもたちの思考力の基礎をつくる「ことば」を、親子で楽しく学べる『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』。

連載第1回は、本誌の中から『何のために学ぶのか【故事成語】』をピックアップします!

※本連載は『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』から一部抜粋して構成された記事です。



 


ショートストーリーで覚える「故事成語」

 問題 

次の文を読んで、何の故事成語(中国の昔話からできた慣用表現)を示した例文かを考え、その故事成語を記号で答えなさい。

①    あと一歩で甲子園出場の夢を絶たれた相手に勝つために、ぼくは来夏に向けて自らにしいトレーニングを課している

②    わたしの父は写真家で夏はヨーロッパに、冬は南アメリカ大陸にと忙しく動き回っている。

③    あの人の言動は許せないが、ああいう人になってはいけないのだと学ぶきっかけにもなった。

ア 他山の石
イ 朝三暮四
ウ 背水の陣
エ 南船北馬
オ 四面楚歌
カ 臥薪嘗胆

こたえはコチラ

―――――――――――――――――――――――――
「故事」とは、主に中国の古典や口承などによって昔から伝えられてきた、いわれのある
事柄や語句のことで、このような表現を「故事成語」と総称します。

「故事成語」の問題は中学入試でよく登場しますが、ほとんどが、「慣用句」や「ことわ
ざ」と同列に並べられてその知識が問われる形式であり、故事成語の単独問題は管見(かんけん)の限り存在しません。冒頭の問題をオリジナルにしたのはそういう理由です。中学入試で出題される故事成語は比較的限定的なのです。

また、先に述べたように、故事成語は中国の古典や口承から生まれたことばです。そう
考えると、それらのストーリーとあわせて故事成語を覚えると、わが子の頭の中にしっか
り定着するのではないでしょうか。


 


 

漁夫の利
〈意味〉

両者があらそっているうちに、他人がその利益を横取りしてしまうこと。

〈ストーリー〉
どぶ貝が口をあけて陽にあたっていると、しぎ(鳥)がやってきて、その肉をついばんだ。すると、どぶ貝も負けじと口を閉じて、しぎの口ばしをはさんだ。どちらも
相手を離さず、じっとしているうちに、漁師がやってきて両方ともつかまえられてしまっ
た。

 


 

五十歩百歩
〈意味〉

多少の差はあっても、そんなに変わらないこと。どちらも大して差はないこと。

〈ストーリー〉
戦場で戦いがおこなわれている。ある兵士はおそろしくなって鎧(よろい)をぬぎすて武
器を引きずって、逃げ出しはじめたが、五十歩逃げて止まった。またある兵士は同じよう
におそろしくなって逃げ出したが、百歩逃げて止まった。五十歩逃げた兵士が百歩逃げた
兵士を臆病者といってあざわらったが、さて本当に五十歩逃げた者が百歩逃げた者をその
ようにわらうことができるだろうか。結局、逃げ出したことには変わりはない。

 


 

塞翁(さいおう)が馬
〈意味〉

人生の幸不幸は予測できないこと。

〈ストーリー〉
昔の中国の、国境の近くに住んでいた老人(塞翁※「塞」とは「国境のとりで」、
「翁」とは「おじいさん」の意)の馬が、となりの国へにげてしまった。近所の人々は老人をなぐさめたが、老人は「これがいいことをもたらすかもしれないよ」と言った。数か月し
て、にげた馬がとなりの国の優れた馬をつれて帰ってきた。近所の人々がお祝いを言いに
きたが、老人は「これがわざわいをおこすかもしれないよ」と言った。優れた馬がふえた
のを喜んだ老人の息子が、この馬に乗ったところ、馬から落ちて足の骨を折ってしまった。
近所の人々がお見舞いにきたが、老人は「いやいや、これがまたいいことをもたらすかも
しれないよ」と言った。それから一年ほどして戦争がおこり、若者たちの多くは戦死して
しまったが、この息子は足の怪我(けが)のおかげで兵隊にとられず無事であった。人生は何が起こるか分からないものなので、老人はひとつひとつの出来事を喜んだり悲しんだりしなかった。

 


 


語彙力も、思考力も、受験合格も、家庭での言葉遣いが明暗を分ける!

連載第1回は、本誌の中から『何のために学ぶのか【故事成語】』をピックアップしました。

「わが子のことば遣い、“ヤバい”かも(そして、実は自分自身のことば遣いが“ヤバい”かも)……」と思った方は、本誌をチェック!


著者:矢野 耕平

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046062598

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【著者プロフィール】

●矢野耕平
1973年東京都生まれ。中学受験指導スタジオキャンパス代表、国語専科博耕房代表。東京の自由が丘と三田に2教場を構える。指導担当教科は国語と社会。中学受験指導
歴は今年で29年目を迎える。2児の父。法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。現在は社会人大学院生として同大学大学院同研究科国際日本学インスティテュート日本文学専攻博士後期課程に在籍し、認知言語学、語用論などをベースに学齢児童の言語運用能力の研究に取り組んでいる。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』( 講談社+α新書/講談社)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書/文藝春秋)、『13歳からの「気もちを伝える言葉」事典―語彙力&表現力をのばす心情語600』(メイツ出版)など。中学受験や中高一貫校、国語教育などをテーマにした連載記事を担当し、これまでにオンラインメディアの記事を300本以上執筆。

 

 オリジナル問題の解答 

①    カ
②    エ
③    ア

 



 

 

 


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