著者累計部数3500万部超の人気漫画家・河原和音、初の絵本『おにぎりをおかあさんに』制作秘話。 【河原和音インタビュー】
『高校デビュー』『青空エール』や、テレビアニメ化され現在も連載中の『太陽よりも眩しい星』など、著者累計部数3,500万部を超える人気漫画家・河原和音さん。彼女が初めての絵本の作画を手がけた『おにぎりを おかあさんに』(KADOKAWA)が刊行されました。
お話を書いたのは、「くまのがっこう」シリーズなどで知られ、2022年に永眠されたあいはらひろゆきさん。本作はあいはらさんの遺作となりました。お母さんと二人で暮らす男の子・そうたが、お母さんのために初めておにぎりを作る心温まる物語です。
幼少期から今も絵本が大好きだという河原さんに、作画の舞台裏や絵本への想いを伺いました。
初めての絵本を描くことになった経緯について
――初めて絵本を描くことになった理由を教えてください。
河原和音(以下、河原)さん あいはら先生が「ぜひ河原さんの絵で」と声をかけてくださり、この絵本のお話の原稿をいただいたことがきっかけです。2019年3月に、あいはらさんが「くまのがっこう」のサイン会で札幌に来られて、そのときにお会いして、お話しました。「『青空エール』あたりの絵がいい」と具体的に言ってくださったのも印象深くて「それだったらやってみよう」と思えました。自分では気づけない私の絵の良さを見つけてくださったのだと思うと、すごくありがたかったです。それと、私が元々、「くまのがっこう」の絵本が好きでしたし、子どもが『ジャッキーのうんどうかい』の絵本がお気に入りだったということもあります。
――この絵本の原稿を読んだとき、どのように感じられましたか?
河原さん そうたは、いい子だなと思いました。おはなしを読んで、そうたの家や、住んでいる街、お母さんの職場など、様々な絵が浮かんできました。
――そうたやお母さんの絵のキャラクター設定はどのように作られましたか?
河原さん 自分が見てきた他のお母さんたちやお子さんたちをイメージして想像しました。あいはらさんが思い描いた世界に近づけたいと思いました。何パターンか、そうたやお母さんを描いてみて、編集さんと相談しながら決めていきました。
河原和音さんは、絵本の絵をどのように描かれたのか
――今回の絵本で、使用された画材や制作プロセスをくわしく教えてください。
河原さん 下塗りでは、「ドクターマーチン」のカラーインクや「ホルベイン」の透明水彩を使いました。
その上に、「カランダッシュ」の24色の水彩色鉛筆で色を塗って、ぼかしたりして描いていきました。
最終的な仕上げには、水彩色鉛筆に加えて、「カランダッシュ」の36色の色鉛筆を使用しています。
黒い部分は、しっかりと一生懸命塗りました。他にも、ボールペンを使ったり、渋めの色のところは、「いわたけ」の岩彩水彩や、「ぺんてる」のアートクレヨンを使ったりしました。
河原さんのカラーインク、筆記用具、画材
河原さんの色鉛筆やアートクレヨン
――漫画を描く時とは、描き方は違ったのでしょうか?
河原さん 漫画はもうちょっと透明感を持たせたいので、ほぼカラーインクのみです。今回の描き方で漫画の絵を描くと、重ねて重ねて塗るので、透明感は出ないですし、素朴な印象になります。今回の絵本では担当編集さんと相談して、色鉛筆をメインにした描き方になりました。ご期待にそえているといいなと思います。
――絵の制作は、どのくらいお時間がかかりましたか?
河原さん 色を検討している時間が長かったです。
ラフに1か月、制作時間はぺージによって異なりますが、1枚1日~1週間かかりました。
――絵の制作で大変だったのはどんな点ですか?
河原さん 漫画連載と並行してやるものじゃないと思いました。きちんと向き合ってやらないと絶対ムリです。
――絵の制作で楽しかった点はどんな点ですか?
河原さん 子どものころに絵を描いていたような、図工の時間のような気持ちに時々なりました。図工の時間が大好きだったので、懐かしい気持ちになりましたね。新しい画材も使って、とても楽しかったです。
河原和音さんの絵本への想いと魅力
――特に子どもに見てもらいたい、お気に入りの絵はどのページですか?
河原さん 街や道路を俯瞰したロングの見開きは、自分が子どもの頃こういうページをずっと見て楽しんでいたので、同じように楽しんでもらえたらいいなとの思いで頑張りました。絵は製本の都合上(四隅を裁断するタチキリを意識して)、大きめに描いたのですが、全部入れていただけたので、薬屋なども入っていますね!
――大人(親)に向けて、特に意識して描いたページはありますか?
河原さん ひとりひとり好きなように読んでいただきたいので、特に思うことはないですが、スーパーの廊下にあるポスターや、「お客様の声」はちょっと笑っていただけたら嬉しいです。あと、そうたが靴下を脱ぎっぱなしなところも。すぐ裸足になる子のイメージで描きました。
――この絵本を、小さなお子さんには、どう読んでもらいたいと思いますか?
河原さん 「おにぎり作り」に興味を持ってくれたらと思いました。
おにぎりは、地球の食べ物で一番好きなんです。具は何でも好きですが、1つ選ぶならしょっぱい梅干しの梅おにぎりが好きです!
お子さんにも好きなように読んでいただきたくて、逆にどういうふうに読んだか、教えてほしいです。
(編集担当さんから、)見返しのところにおにぎりを描いてほしいと追加でご依頼があったのですが、少しはりきって勝手に7種類くらい増やしました。楽しんでいただけたらいいなと思います。
――この絵本で伝えたい点は何でしょうか?
河原さん ストーリーはあいはら先生が執筆されたので、あいはら先生に私もお伺いしたいです。あいはら先生が伝えたかった世界を少しでも表現できていたらいいなと思っています。
強いて言うなら、この絵本が、「コミュニケーションツール」になってくれたら良いと思っています。この絵本をきっかけに、親が思ったこと、子どもが思ったことを正直に話し合える時間を作ってもらえたらと思います。
――河原さんが好きな絵本は? また、母親として、絵本の良さ、魅力とは何でしょうか?
河原さん 好きな絵本は挙げるとキリがないです。絵本コーナーが大好きです。名作がいっぱいありますよね。絵本はただ楽しいから好きなのですけど、構えず心を柔らかくして素直に向き合えるので、存在そのものが好きです。最近買ったのは自分用に「パンどろぼう」(柴田ケイコ・作)シリーズと、『赤い蝋燭と人魚』(小川未明・作、いわさきちひろ・画)と、『ビロードのうさぎ』(マージェリィ・W・ビアンコ・原作、酒井駒子・絵/抄訳)です。
――河原さんの漫画ファンに向けて、メッセージをいただけましたらお願いいたします。
河原さん 普段は漫画で、ほぼ一貫して高校生の学校に行っている子たちばかり描いているので、はじめての経験で、私のほうにはつたない部分もありますが、あいはら先生の少年に対する想いとお母さんを大切に思う心が見えるので、お手に取っていただけたら嬉しいです。
――本日はありがとうございました。
河原和音(かわはら かずね)
北海道出身。漫画家。著者累計3,500万部を超える。主な作品に『先生!』(全20巻)、『高校デビュー』(全15巻)、『青空エール』(全19巻)、『素敵な彼氏』(全14巻)、『太陽よりも眩しい星』(既刊14巻)、原作担当として『俺物語!!』(作画:アルコ、全14巻)など。『俺物語!!』は「このマンガがすごい!2013」オンナ編1位、第37回講談社漫画賞少女部門、『素敵な彼氏』は第64回小学館漫画賞少女部門を受賞。アニメ化、映画化された作品も多数。
(インタビュアー・文=坂本真樹)
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