
世界で最も名誉ある賞とされる「ノーベル賞」。毎年10月に受賞者が発表され、12月に授賞式が開かれています。2024年にはAI(人工知能)に関わる研究の物理学賞・化学賞の受賞や、長年核兵器廃絶を訴えてきた日本の団体の平和賞受賞が大きな話題となりました。
ノーベル賞はどのようにして始まり、どのような分野で授与されているのでしょうか?
今回はノーベル賞の成り立ちや種類、そして2024年の受賞者について、角川まんが学習シリーズのまんがとともにご紹介します。
ノーベル賞は、スウェーデンの化学者であり、ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベルの遺言によって創設されました。
貧しい家庭に生まれた彼は、家族を助けたいという気持ちで勉強を続け、生涯で350を超える特許を取得し巨額の富を得ました。
しかし、世界を豊かにするはずの発明品が戦争で使われたことで、「死の商人」とよばれるようになってしまいます。
それでも発明や発見が人びとのためになると信じたノーベルは、残された財産を人類の希望や平和のために使ってほしいと考えました。
そこで遺書に「分けへだてなく世界中の人びとの中で、人類に貢献した人に、遺産を運用した利子から賞金を送る賞を作ること」と記しました。
ノーベルの死後、助手たちによって遺書どおりにノーベル賞が創設されました。
ノーベル賞は世界で最も名誉のある賞といわれ、授賞式は毎年ノーベルの命日である12月10日に行われています。




ノーベルの遺言によって設置されたノーベル賞は以下の5つです。
●物理学賞
物質の性質を追究する物性や、量子力学、素粒子や宇宙といった分野の物理学の研究が受賞対象となります。
●化学賞
生化学や有機化学をはじめ、化学に関わる幅広い分野が受賞対象となります。
●生理学・医学賞
遺伝学や免疫学など、生理学や医学に関連する幅広い研究成果が受賞対象となります。
●文学賞
日本の「芥川賞」のような作品単位ではなく、優れた文学作品を創作した文学者自身に贈られます。
●平和賞
国際平和や人権擁護、紛争解決に貢献した個人・団体が表彰されます。
また、のちにスウェーデン国立銀行の創立300周年を記念して、経済学賞が設置されました。そのため、現在のノーベル賞には6つの賞があります。
日本初のノーベル賞受賞者
中間子の存在を予言した湯川秀樹理学博士は、1949年に日本人で初めてノーベル物理学賞を受賞しました。2024年までにノーベル賞を受賞した日本人は米国籍取得者含め28人です。


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ノーベル賞はどのような功績に与えられているのでしょうか?
2024年のノーベル賞受賞者を見てみましょう。
●物理学賞
ジョン・ホップフィールド氏(米プリンストン大学教授)
ジェフリー・ヒントン氏(カナダ・トロント大学教授)
…現代AIの根幹とも言える「機械学習」や「深層学習(ディープラーニング)」の基礎を、物理学の知見から発見した功績が評価されました。
●化学賞
イビッド・ベイカー氏(米ワシントン大学教授)
デミス・ハサビス氏(英グーグル・ディープマインド社CEO)
ジョン・ジャンパー氏(英グーグル・ディープマインド社上席研究員)
…新たなたんぱく質の設計に成功したベイカー氏と、たんぱく質の立体構造を予測するAIを開発したハサビス氏とジャンパー氏が受賞。
●生理学・医学賞
ビクター・アンブロス氏(米マサチューセッツ大学教授)
ゲイリー・ラブカン氏(米ハーバード大学教授)
…ヒトには1000を超える細胞内の分子「マイクロRNA」があることを発見し、マイクロRNA遺伝子の働きを制御する仕組みを明らかにしました。
●文学賞
ハン・ガン氏
…代表作は小説『菜食主義者』。韓国で史上2人目、アジア出身の女性として初めての受賞です。
●平和賞
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)
…被爆体験の伝承などを続け、世界に核兵器廃絶を訴えてきた活動が評価されました。日本のノーベル平和賞の受賞は1974年の佐藤栄作元首相以来50年ぶり、2回目です。各メディアは、今回の受賞とウクライナ情勢をはじめ核兵器使用への緊張の高まりを関連付けて報じています。
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物理学賞・化学賞の二部門でAIに関わる研究者らが受賞したことも注目されました。
特に物理学賞受賞者のヒントン氏は、2019年に「コンピュータサイエンスのノーベル賞」と称されるチューリング賞も受賞しています。
彼の研究室からは多くの優秀な研究者が生まれており、OpenAIの共同創業者兼チーフサイエンティストであったイリヤ・サツキバーもそのひとりです。
「チューリング賞」の由来、アラン・チューリングとは
コンピュータの父であり、AIの父でもある天才数学者アラン・チューリング。
現代社会を支える情報科学のパイオニアでありながら、その偉大な功績は、複雑な時代背景のなかで数十年にわたって隠されてきました。
幼いときから独特な考え方をもち、勉強ができなかったアランは、少年クリスへの恋などをきっかけに成績をのばし、優秀な数学者へと成長します。

第二次世界大戦時には暗号解読で大きな功績を上げ、いつしか「機械は知性をもつかどうか」を考えはじめるようになったアラン。
この考えが、のちのAI開発へとつながっていきます。
AIの社会的な影響力の大きさはどんどん増しています。
そのスピードはアランの予想をはるかに超えるものかもしれませんね。
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AIや核兵器廃絶など、現代社会を支える研究を評価し続けてきたノーベル賞。
ノーベルの「自分の財産を人類の発展のために使ってほしい」という思いが受け継がれているこの賞に、今後もぜひご注目ください。