
集団塾、個別指導、家庭教師、オンラインサロンなど、中学受験のための選択肢が増える中、「どこにどれだけ時間とお金をかけるのがわが子にとっての最適解か?」「塾におすすめされる教材や講習はどれだけ取り組めばいいのか?」「学校と塾の両立で気を付けるべきことは何か?」などの悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。本書は、実際の保護者がよく抱える悩みや不安を中心にその日からすぐ役立つアドバイスをまとめています。
※本連載は『「まだ伸びる!」をあきらめない 中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方』から一部抜粋して構成された記事です。
子どもの得意と苦手を分類する
私が塾講師だった頃、「国語はできたけど、算数は下がった」という、教科単位で「できる/できない」の判断をするだけで分析を終えてしまう家庭も多く見てきました。しかし、どの教科の中にも「得意な部分」と「苦手な部分」が必ず混在しています。
たとえば算数なら「計算問題はいつもほぼ満点だけど、図形や文章題になると点数が取れない」「比や割合は解けるけど、速さの単元になると×が増える」といった具合です。
そこで、テスト結果が手元に来たら、教科ごとの中身を細かく分類し、得意・不得意を分析しましょう。ここで大切なのは、子どもに質問をしながら、「何がどうできた、できなかった」ということを考えさせることです。こうすることで、子どもは自分の得意・不得意を自覚していきます。
こうした「得意・苦手の分類」は、特に学習計画を立てる上で非常に重要です。
以前、私が指導していたある子どもは図形と文章題が苦手だったので、これらの単元に集中して勉強を続けました。その分、得意な計算問題について取り組む時間は短くなりましたが、毎日続けました。その結果、次のテストでは算数自体の成績が上がり、子どもも「成績を上げるために苦手単元に取り組む重要性」を実感してくれました、このように、単元や問題の種類を細かく分類し、的を絞って学習することで、効率的に成績を伸ばすことができるのです。
- 目標と現状との差を具体的に明確化する方法
P144で、「合格可能性50%ラインの偏差値」を基準にし、その偏差値を取るために各教科で何点を取ればいいか決めるという方法をお伝えしました。ここでは、テスト後、設定した目標と結果の差の分析と、次につなげる方法についてご紹介します。
まず、テスト結果が返ってきたら、設定した目標偏差値・点数とテストの結果を比較し、両者の開きを数字で把握します。たとえば、「算数は偏差値50のライン(65点)を目標にしたけれど、実際には60点だった」場合、「その5点の差はどのような問題で発生したのか」「どの問題を取ればあと5点に到達できたのか」を確認します。
このとき大事なのは、「正答率70%の基本的な割合の問題で計算ミスをして3点を失った」「正答率50%の図形問題が1問解けていればあと3点追加できた」というように、具体的な問題と点数を明確に特定することです。
このようにギャップを具体的に「あと何点」「どの問題で何点取るべきだったか」というレベルまで掘り下げることが非常に重要です。
また、この分析を行うことで、「そもそも目標の設定が適切だったのか?」という点も振り返ることができます。もし「あと数点」が正答率の低い難問からしか取れないという場合には、目標設定自体が少し高すぎた可能性があります。反対に、基本的な問題を取るだけで目標に到達できるなら、設定は妥当であると言えます。
このように、目標と現状の差を細かく分析し、「次回どの問題を重点的に学習すればよいか」を明確にすることが、毎回のテストを『次の成長』へとつなげるカギとなります。
- 振り返りから次のアクションへつなげる方法
どんなにていねいにテスト結果を振り返っても、そこでの分析が次の行動につながらなければ意味がありません。テスト結果の分析をした後に重要なのは、子どもと一緒に次のテストまでに何をするべきか具体的に決めて、それを実行することです。
そのために必要になるのは、次のテストまでに何をすべきかを、子ども自身に決めてもらうことです。保護者がすべて決めてしまうと、子どもは「やらされ感」を覚えてしまいます。子どもが自分自身で決めることで、「これは自分で決めた目標だから、ちゃんとやろう!」という意識が生まれます。
ここで決める目標は、明日からでもすぐにできるような簡単なものがおすすめです。たとえば、「計算ミスが多かったから計算問題を、毎朝15分間だけ必ずやる」「社会の暗記内容が抜けていたから、1日10分寝る前にチェックする」といったものでOKです。
また、P147で「テストの目標点数を冷蔵庫に貼る」ことを記しましたが、この目標の横に、自分で決めた目標を書いて貼るといいでしょう。
そして最後に、次回のテストの際には必ず決めた目標が実行できたかを確認しましょう。
「ちゃんと計算練習したから今回はミスが少なかった」「暗記内容が頭に残っていたから問題が解きやすかった」というように、自分の行動が結果につながったという体験をさせることで、子どもの自信ややる気がさらに高まります。
【POINT】
●教科単位ではなく、各教科のどの問題ができた/できなかったを判断する
●目標と結果に差が発生した理由を「どの問題で〇点取るべきだった」という
ところまで分析
●テスト結果の振り返りをもとに、明日からできる改善策を子どもが考える
本書は、実際によくある悩みに沿ったアドバイスや提案を盛り込んでいます。中学受験の期間は長そうに見えて、あっという間。一生に一度の中学受験生活、ぜひそれぞれご家庭にあった方法を取り入れて悔いなく過ごしてくださいね。
【書籍情報】
著者: ユウキ先生
- 【定価】
- 1,760円(本体1,600円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784046076878