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受験生の親は必読!【中学受験の国語問題に必要なのは「読む力」】名門中学の入試問題に取り上げられる本『駅伝ランナー』『キャプテンマークと銭湯と』の著者、佐藤いつ子さんにインタビュー!


来年、2021年の中学受験を目指す、受験生の親は必読!【中学受験の国語問題に必要なのは「読む力」】名門中学の入試問題に取り上げられる本『駅伝ランナー』『キャプテンマークと銭湯と』の著者、佐藤いつ子さんに緊急インタビュー!
取材・文:編集部

デビュー作が発売直後、全国紙の国語問題に起用。

まず、佐藤いつ子さんのプロフィールをご紹介します。
東京で大学をご卒業後、IT企業に勤務。退社後、主に児童書の創作活動を開始。
2015年、あさのあつこさんの推薦を受けて『駅伝ランナー』でデビュー。
この『駅伝ランナー』は発売直後に、全国紙「朝日小学生新聞」の年末年始号に国語の問題として大きく取り上げられました。

数年にわたり、全国の名門中学入試問題や参考書、模試に起用される『駅伝ランナー』

――名門といわれる中学校の国語入試問題や参考書などに、著作の『駅伝ランナー』シリーズ(全3作)と2作目『キャプテンマークと銭湯と』がよく使われています。著者としてその理由はなんだと思われますか?

佐藤:入試問題というのは、たとえ長文問題だとしても、10ページ分くらいです。物語の全体は二百数十ページあっても、そのわずか5%にも満たない分量です。解答を導き出すには、物語のごく一部を、試験会場で初めて読んだだけでも、文章に人物たちの状況や心情が立ち上がるような描写が必要で、それがあるのかな、と思いました。あとは、読者から「読みやすい」とよく言っていただけるので、そういう点もあるのかな、と。



中学の国語入試問題によく出るテーマ

――入試問題によく出るテーマは「友情、家族、成長」と言われていますが、ご自身から見て著作のどの部分がポイントだったと思われますか?

佐藤:両作とも、成長物語が軸になっていますが、そのなかで友情や家族も、当然重要なファクターになっています。出題されるのは、成長の過程における主人公の葛藤のところが多いのかな、と感じました。たとえば『駅伝ランナー』では、主人公の走哉が、運動会のリレーの選手に選ばれるために、元スプリンター(短距離選手)の父親に無理矢理、特訓を受けているシーンなどです。本当はやりたくないのに、嫌だと言えないところとかですね。

――『駅伝ランナー』では補欠の選手が主人公であったり、『キャプテンマークと銭湯と』ではキャプテンを他のチームメートに代えられてしまう選手が主人公でした。他にも貧困の母子家庭や廃業に追い込まれる銭湯など社会的弱者も描かれています。小学生の読者に読み解けますか?

佐藤:圧倒的才能のあるヒーロー物語であれば、憧れをもって読めると思いますが、わたしが描いた主人公はどこにでもいそうな子です。だからこそ、主人公のなかに自分を投影して、こういうことあるよね、と小学生はもちろん大人まで共感してもらえるんじゃないかと思います。

今まで本を敬遠していた、息子のママ友から「初めて夢中になって本を読んでる」と言われたときは、嬉しかったです。

いわゆる社会的弱者も、子どもたちの世界で特別なことではありません。パッと見では分からなくても、給食で命をつないでいるような子どもたちがいます。さまざまな現状を知るきっかけにもなってほしいです。

――著者として読者へは何を期待されますか?

佐藤:今のような(新型コロナウイルスで)社会的に不安なときや、哀しいとき、辛いとき……、読書をして物語の世界にひたっていると、そのことから放れられます。「読者への期待」というよりは、わたしの本がそんな風に、ひとときでも、別の世界に導く物語であったら嬉しいです。

――佐藤さんご自身も、母親として二人のお子さんの中学受験を経験されていますね。

佐藤:はい。今は大学生(娘)と高校生(息子)ですが、二人とも中学受験しました。

姉は成功、息子は残念な結果でしたが、息子はひそかに(反抗期なので表には出さず)闘志を燃やし、高校入試でリベンジしました。

――受験生の母として気をつけていたことは何かありますか?

佐藤:おしつけないこと、小言を言わないこと、に気をつけていました。それから、「女優」になって、心配を顔に出さないようにすることですかね。

中学受験はやらなくてもよい受験です。親の誘導もあるかも知れませんが、うちでは子どもたちが自分で「やりたい」と言ったので受験勉強を始めました。でも、小学生なのでその決意にブレがあったりすることもあります。息子のように、姉を見てなんとなく「中高一貫校というのは楽しそうだなぁ」的なノリで始めてしまうと、その膨大な勉強量におののき、それをこなしながらも結局最後まで本気になれなかった、ということもあります。でも、親から言われて始めたのではなく、自分でやるって決めたのだから、途中でやめたいとは言わなかった(言えなかった?)ですね。中学受験で大いなる挫折感を味わった息子は、高校受験のときは、しめるところはきっちりしめて、ラストまで駆け抜けました。いろいろ小言を言いたくなったこともありましたが、そこはグッと我慢しました。やる気スイッチは自分でしか押せないのです。

――お子さんは佐藤さんの本を読まれていますか? もし読んでいらしたら、その感想はどうでしたか?

佐藤:読書量の多い娘は喜んで読んでくれましたが、息子は読んでません!

おたがい照れくさいし、細かい感想は言わないけれど、娘からは一気読みして「面白かったよ」と。自分のインスタで宣伝してくれたり、母親が作家なのを自慢に思ってくれているようで、嬉しいです。また、学校の陸上部の友だちを紹介してくれたりと、取材にも協力してくれます。

一方、息子が中一のときの横浜市学力・学習状況調査の国語では、なんと『駅伝ランナー』から出題されたのです。試験中、クラスが「これって佐藤のお母さんの本じゃね?」とざわめいたそうです。と、ママ友から連絡を受けて初めて知り、何も言わない息子に問いただすと、「あぁ、そうそう」で終わり。「もちろん、全問正解だよね」とつめよったのですが、「本読んでないから、間違ったわ」とのことでした(笑)。

――ご自分の中学受験体験があれば教えてください。

佐藤:わたしは当時、関西に住んでいて、国立大学の附属中学を受験しました。今のように競争は過酷ではなかったと思いますが、幸運にも頑張ったことが成績にあらわれてきたので、受験勉強が辛かったという記憶はあまりありません。人生のなかでも受験勉強として一番頑張ったのは、中学受験だったかも知れません。試験には合格したのですが、最後に抽選なるものがあって、そこで落ちました。親は悔しがっていましたが、わたしはそれほどでもなく、涙も出ませんでした。偉そうですが、結果よりもやりきった感があったのでしょうか。

――子どもの頃の読書体験はどうでしたか? 愛読書があれば教えてください。

佐藤:そこそこは読んでいたかも知れませんが、文学少女にはほど遠いと思います。母が買ってくれた世界の名作のなかでは『あしながおじさん』が好きで、繰り返し読んでいました。小学生の頃は、宝塚が好きだったので、マリー・アントワネットの自伝や、もう少し大きくなってからは『風と友に去りぬ』も愛読していました。

――デビュー作、次作と中学入試問題に使用される児童書が続いていますが、3作目のご予定はありますか?

佐藤:今度は、自分にとって何か新しいこと、児童書という枠にとらわれない作品に挑戦したいと思っています。読後、ほっこりしていただけるような物語を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。

(本インタビューは、カドブン2020年5月18日号より転載したものです)

書籍紹介

『駅伝ランナー』



12歳の少年が友情に支えられながら、駅伝ランナーになる夢をあきらめずに走り出すまでをみずみずしく描いた、心が奮う青春駅伝小説!




 

『キャプテンマークと銭湯と』



ずっとつけていたサッカーのキャプテンマークを、他のチームから移籍してきた大地に渡さなくてはいけなかった周斗。くやしくて、チームメイトからも孤立してしまう。自分がいやになっていた周斗が出会ったのは古ぼけた時代遅れの銭湯だった。あさのあつこ氏の推薦デビューの著者が描く、切なく温かい感動の物語。




 

佐藤 いつ子
IT企業勤務後、創作活動開始。「フリマでゲット!」で第30回日産童話と絵本のグランプリで優秀賞受賞。


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