KADOKAWA Group

大人気!「お天気係におねがい! 運動会を晴れにせよ!」ためし読み連載 第3回

「――ハレくん、きて!」

 中休みになってすぐ、ハレくんをつかまえて、人通りが少ないおどり場まで連れていく。

「ねえ、特訓はやめよう! おねがいっ」

 手を合わせて、必死にたのみこむ。でもハレくんは、あっさり首を横にふる。

「やめない。はじめたばっかりだろ」

「はじめたばっかりで、すごく目立ってるのっ」

 二時間目の体育も、たいへんだった。

 跳び箱にびくびくしていると、ハレくんが「だから、度胸が足りない」って、先生を無視して個人レッスンをはじめちゃって……。

「わたしたちが知り合いって、バレちゃったし」

「バレたってべつにいいだろ。ほんとうにそうなんだから」

「そうだけど……そもそも、度胸をつける特訓ってなに?」

「神さまはな、たよられるのがしごとなんだよ。たよられるやつは、どんなときも堂々としていなくちゃいけない。そのために必要なのが、度胸なんだよ」

「そんなこと言われても。わたし、たよられるキャラでもないし……」

「あ、空ちゃん」

 ふいに、蘭ちゃんが下の階からあらわれる。

「太陽くんとお話ししてるのに、ごめんね。でも、この前のお礼をちゃんと言いたくって」

「お礼?」

「天気を聞いたとき、雨がふるって言ってくれてうれしかった。しかも、そのあとほんとうに雨がふって……。さすが、ぜったいにお天気予報を当てるお天気係だね!」

 蘭ちゃんは、キラキラした顔で言う。

「ありがとう。これからも、たよりにしてるね」

「うっ! う、うん。まかせて……」

 もうたよりにしないでなんて、言えないよ。よろこんでくれてるのに。

「ふ~ん、なるほどなあ」

 蘭ちゃんが行って、ハレくんは大げさな声を出す。

「たよられるキャラじゃないとか言いつつ、学校では堂々と自慢してたんだなあ」

「いや、その……だって、じぶんが天気の神さまになるなんて思わないから~~」

「今さら、泣きごと言うな。まかせろって答えたんなら、がんばるしかないだろ」

「でも、自信ないよ。運動会を、カンペキに晴れにするなんて」

 六月はよく雨がふる。悪天蝶だって、晴れにさせないようジャマしにくるって話だし。

「ハレくんたちも不安だよね。こんなわたしが、天気の神さまになっちゃって……」

「いいや、まったく。不安に思ってるヒマない。空を、地獄に行かせるわけにいかないからな」

 あ……。

「地獄は、ほんとうにやばいところだ。オレたち以上に、空にはつらいだろ。それにじっさい、地獄に落ちた仲間がいる。そいつも自信がなくて、いつも不安がってた。ぜったい助けるって約束したのに、助けられなかった……。仲間を失うのは、二度とごめんだ」

 ハレくんは、くやしそうにくちびるをかむ。

「ハレくんは、わたしを仲間って思ってくれてるってこと?」

「あたりまえだろ。きっかけはどうであれ、空はオレたちの仲間だ。だから、お前がどんなに自信をなくしても、オレたちがきっと助ける」

 ハレくんは、きっぱり答えてくれた。

 ただきびしいわけじゃなくて、ぜんぶわたしのためを思ってしてくれているんだ。

「たしかに、天気をコントロールするのはたいへんだ。でもそれも、空の気持ち次第なんだよ。空の、『熱くなる心』をきたえさえすれば、ぜったい晴れにできる」

 熱くなる心……。

「あのね、ハレくん。そのことなんだけど――」

「あっ、分かったぞ!」

 ハレくんは、一人でなにかをひらめく。

「特訓の前に、空には、神さまの自覚を持たせなくちゃだめなんだ。よし、行くぞ」

 そう言って、ぐいぐいわたしの背中をおしはじめる。

 行くって、いったいどこに?


次のページへ▶


この記事をシェアする

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • LINEでシェアする
ページトップへ戻る