
わくわくいっぱい、つばさ文庫の新シリーズ! 超~優柔不断で自分になかなか自信がもてない5年生の女の子、天川空がある日突然、天気をあやつるチカラを手にいれた!? 勇気も自信もなかったけど、つよい意思で天気をあやつるために、はじめて自分で目標をたてて、やるって決めた! 個性豊かなお天気男子たちといっしょに、運動会を晴れにせよ!(公開期限:2025年9月30日(火)23:59まで)
3★あらわる、お天気の神さまたち⁉
「――なあ。こいつ、いつまで寝てるんだ?」
ぼんやりする頭の中で、声がひびいた。だれの声だろう?
「ムリやり起こそうぜ。オレは、もうまてない」
すぐそばで聞こえるけど、まぶたが重くて目が開けられない……。
「ほんとうに、せっかちだね。ぼくは、反対。ムリやりなんて、かわいそうだよ」
「もっと大きな声で呼べば、起きるんじゃない? おーい、聞こえるー?」
「声の大きさは関係ない。それより、病院に連れて行ったほうがいいかもしれない」
いろんな声が聞こえる。何人いるの? 三人? 四人?
「あっ、そうだ。おれ、寝ちゃってる人を起こす方法を思い出した! 口をくっつけたら、目を覚ますんだよ」
「なんだそれ。そんなヘンな方法で、起きるわけないだろ」
「ほんとうだって~。神社でたおれて寝ちゃった人を、そうやって起こしてたの見たし」
それって、人工呼吸なんじゃないかな? わたし、息はしてるんだけど。
「あー、もう分かんねえ。とりあえず、やってみるか」
がしっと、両肩をつかまれる。
へっ? やるの? でもこのままだと、ただのキスになっちゃうんじゃ……キス⁉
「あわわわっ、それはだめ!」
ゴツン!
勢いよく起き上がったわたしの頭が、だれかのおでこと思いっきりぶつかった。
「う~、いたい……あっ」
声の正体が、やっと分かる。周りにいるのは、四人の小学生くらいの男の子たちだった。
でも、クラスの男の子たちとは雰囲気がちがう。みんな、夜雲さんみたいな和服を着ていて、ちょっと大人っぽい。
それぞれ髪の色もちがう。青い髪の子、みどり色の髪の子、むらさき色の髪の子。
そして――。
「親切で起こそうとしたら、頭突きとは……」
赤い髪の男の子はおでこをおさえながら、こっちをにらんでいる。
ぶつかったのはこの子なんだ。あわわわっ、すごくおこってる!
「ごめんなさい! でも、頭突きをしたかったわけじゃなくて……」
「ったく。お前に力をとられただけでもイライラしてるのに。悪天蝶にも逃げられるし」
「あ、あくてんちょう? それって、なに?」
「鈴にとまっていた、蝶のことだっ」
へえ~、ふしぎな名前。聞いたことない。
「でも、力をとられたっていうのは? わたし、なにもとってない……」
「鈴をこわしただろ」
「そ、それもごかいだよ! とろうとしたんじゃなくて、勝手にはずれちゃったの!」
「あのなあ! 鈴がこわれたせいで、オレたち天気の神の、天気をあやつる力がお前にうつったんだ。とられたも同じだろっ」
「??」
さっきから、赤い髪の子が言ってることがさっぱり!
「て、天気の神さま? わたしが、なに?」
「だーかーら、オレたち四人の代わりに、今はお前が天気の神さまなんだよ!」
ビシッ! まっすぐ、わたしを指さす。
「え――――――――――――!?」
ドキッ! びっくりして、わたしの心臓が鳴った。
ピカッ! ド―――――ンッ!
とつぜん、空が白く光って、カミナリが鳴る。
「きゃあ! なんでカミナリ⁉」
ドキッ、ドキッ!
ピカッ、ドーン! ピカッ、ドーン!
「こわい! わたし、カミナリ苦手なのに~!」
しゃがんで、うずくまる。そこに、むらさき色の髪の子が近づいてくる。
「落ちついて。ゆっくり三回、深呼吸するんだ。きみが落ちつけば、カミナリも止むから」
どういうこと? 分からないけど、ほかに方法も思いつかなくて言われたとおりにする。
「……あれ? ほんとうに、止んだよ。どうして?」
きょとんとするわたしに、赤い髪の子があきれたように息を吐く。
「お前がびっくりしすぎるからだ。天気の神さまになったって、教えたばっかりなのに」
「それだよ! それでびっくりしたのっ。わたしが天気の神さま?」
ありえない、ありえない、ぜったいありえないっ‼
「そんな話、信じられないっ」
「おい、なに耳ふさいでるんだ。ちゃんと話を聞けよっ」
「ムリですっ。見ず知らずの人の話は、あぶないから聞いちゃだめって言われてるんですっ」
「だいじょうぶ。ぼくたちは、きみの味方だよ」
ふわっと、青い髪の子が前に出てきた。わたしの両手をとって、やさしくにぎる。
「きみを傷つけたりしない。それに、見ず知らずじゃないよ。天川空ちゃん」
「ど、どうして名前を……」
「ぼくたちは、きみが何度もお願いしに来ていたのを見ていたんだ。天気の神さまとして、鈴の中から。こうして、ちゃんと顔を合わせるのは初めてだけどね」
おだやかな笑顔に、やさしい話し方。
あぶない人には見えないし、ウソや冗談を言っているようにも聞こえない。
「じゃあ、四人はほんとうに、お天気の神さまってこと……?」
「そう。ぼくの名前は、アメ。雨の神さまだよ」
そう言って、左の手のひらを見せる。黒い線で、マークみたいな絵が描かれている。
「おれは、風の神さまのフウ」みどりの髪の子は、明るく笑う。「よろしく♪」
「俺は、ライ」むらさきの髪の子は、クールな顔のまま。「カミナリの神さまだ」
さいごに、赤い髪の子が一歩前に出る。
「そしてオレは、ハレ。晴れの神さまだ」
三人の手のひらにも、それぞれ形のちがう絵が描かれている。
「みんなの手のひらの絵は、なに?」
「これは、天気の神さまの印だよ。力をつかうと、光るんだ」
「今はただの印だけどな。オレたち四人の力はぜんぶ、空が持ってるし」
「わたしの手のひらには、印なんてないけど……」
「力をつかえば、光って浮き出てくる。口で説明するより、オレたち神さまのしごとをすれば分かるだろ」
「神さまのおしごとって?」