
今度はちょんまげ姿のカービィが、いつものプププランドとはちがう世界で大かつやく!
大人気サブゲーム『刹那(せつな)の見斬(みき)り』の小説版だよ!!
◆第7回
プププ町をさわがせるナゾのサムライ「なぞなぞ仮面」の正体・メタナイトと協力して、悪の城主ロクエモンを倒すことになったカービィ。計画を成功させるためには、二人が協力していることは、絶対にひみつにしなければならない。
はたして、のんきで正直者のカービィに、ひみつを守ることはできるのか!?
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カービィのかくしごと
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次の日の夕方。
カービィは、ブラブラと「かわさき亭」にやって来た。
「こんばんは! コックカワサキ、おでんの盛り合わせをちょうだい。あと、肉じゃがと、たまごかけごはんと、さんまの塩焼きと、まぐろのおさしみと、うな重と、だいこんのおみそしると、あと、あと……」
「カービィ……」
コックカワサキと、店にいた客の全員が、カービィをじっと見つめた。
いつもと様子がちがう。カービィは、きょとんとした。
「あれ? なあに? みんな、どうかした……?」
コックカワサキが言った。
「今、ワドルドゥの話を聞いてたんだ……」
ワドルドゥが、大きくうなずいた。
カービィは、ワドルドゥのとなりにすわって、たずねた。
「なんの話?」
「昨夜(さくや)の事件のことでありますよ!」
ワドルドゥは、大きな目を見開いてさけんだ。
「ワタシ、見ちゃったのであります! カービィが、なぞなぞ仮面をやっつけるところを!」
「ええ!?」
カービィは、びっくりした。
バーニンレオが、うたがわしそうに言った。
「ぜったい、見まちがいだよな。おまえが、そんなに強いはずねえもん」
客たちが、いっせいにうなずいた。
ワドルドゥは、むきになって言い張った。
「見まちがいじゃありません! 刀を振り回してあばれ回るなぞなぞ仮面を、カービィがこてんぱんにやっつけたんであります。なぞなぞ仮面は刀を取り落とし、『ひぇぇ、おゆるしください、カービィ様! もう二度と、こんな悪さはいたしません!』って、泣いてあやまったのであります!」
ワドルドゥの記憶(きおく)は、だいぶん、大げさになっている。
カービィは、あせって言った。
「し、知らないよ、そんなの! ぼく、メタ……」
メタナイトのことなんか、と言いかけて、カービィはあわてて口を押さえた。
だれにも話してはいけないと言われたことを思い出したのだ。
ワドルドゥが聞き返した。
「メタ?」
「めた……めた……えっと……めたらしだんごが食べたいなあ!」
カービィは、とっさに、ごまかした。
コックカワサキが、ふしぎそうに言った。
「みたらしだんごのこと? おだんご税があるから、出せないんだよ」
「あ、そうそう! そうだった!」
「なんだか変だね。カービィ、なんで、そんなにソワソワしてるんだ?」
コックカワサキは、首をかしげながら、おでんや肉じゃがを盛りつけたおさらをカービィの前においた。
カービィは、ウソをつくのが、とにかく苦手。かくしごとをしようとすれば、ぜったいに顔に出てしまう。
みんなにバレないように、顔をふせて、料理をいっきにすいこんだ。
バーニンレオが言った。
「やっぱり、なにかのまちがいだよなあ? おかしいと思ったぜ。カービィが、なぞなぞ仮面と戦って、しかも勝つなんてさ」
「そ、そうだよ。あははー、そんなこと、あるわけないよ!」
カービィはわざとらしく笑って、立ち上がった。
「ごちそうさま。ぼく、もう帰るね」
「え? 今、来たばかりじゃないか」
「もう、おなかいっぱいになっちゃった。じゃあね!」
カービィは、引き止められる前に、すばやく店を飛び出した。
店の客たちは、顔を見合わせた。
チリーが言った。
「どうしたんだろう、カービィ。なんだか、すごく、あせってたね」
ワドルドゥが言った。
「みんなから、ほめられるのが、照れくさかったんでありますよ。カービィは、いがいと、ひかえめな性格なんであります」
ナックルジョーが言った。
「ひかえめから、いちばんかけはなれた性格だと思ってたッス。カービィのこと、見直したッス!」
バウンシーも、ぴょんぴょん飛びはねて賛成した。
「ほんとね。大てがらを立てたのに、ちっとも、いばらないなんて。かっこいいわ!」
「やるなぁ、カービィ!」
カービィの話題で、「かわさき亭」は大いに盛り上がったのだった。
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プププ町をさわがせていたなぞなぞ仮面は、ぱったり出現(しゅつげん)しなくなった。
町は、なぞなぞ仮面を倒したカービィのうわさで持ちきりだ。
みんなが話を聞きたがったが、カービィはなにかと理由をつけて逃げ回り、けっして話そうとしない。それがまた、ひょうばんになった。
「知らなかったなあ、カービィがそんなに強いなんて!」
「しかも、手がらをひけらかしたりしないんだ。おくゆかしいぜ!」
カービィの人気が高まるにつれて、ふきげんになっている者がいる。
目明かしのデデデ親分だ。
今日も、親分は部屋に閉じこもって腕組みをし、うなり声を上げていた。
「カービィめ……なぞなぞ仮面をこらしめるのは、オレ様の大事な仕事だったんだぞ! それを、横取りしおって!」
自分が毎日ゴロゴロしているのをたなに上げて、手がらをうばわれたと、逆うらみしているのだ。
手ぬぐいワドルディが、困り顔で、親分をなだめた。
「親分には、他にも大事なお仕事がたくさんありますから。川原でお昼寝するふりをしながら町を見張ったり、銭湯(せんとう)でダラダラするふりをしながら町を見張ったり……」
「当たり前だわい! だが、オレ様のすばらしい仕事ぶりが、町民たちにちっとも伝わっておらんのだ! カービィばっかり、もてはやされて……ええい! 腹立たしいわい!」
デデデ親分は、ふてくされて、ゴロンと横になった。
「こうなったら、もっと大きな事件を解決するしかない!」
「え?」
「なぞなぞ仮面が青ざめて逃げ出すくらいの、おそろしい大事件だ! 探してこい、ワドルディ!」
こんな、ぶっそうなことまで言い出す始末。
むちゃくちゃな命令だが、親分の言うことにはさからえない。
手ぬぐいワドルディは、トボトボと家を出て、あてもなく歩き出した。
プププ川にかかる橋に差しかかったとき、大きな声がした。
「あ、ワドルディだ! こんにちは!」
振り返ると、エフィリンが、大きな耳をパタパタさせていた。
「いいお天気だねえ! 今日は、お芝居(しばい)がおやすみなんだ。だから、ボク、おさんぽに……」
楽しげに話しかけてきたエフィリンだが、手ぬぐいワドルディの暗い表情に気づいて、たずねた。
「どうかしたの? なんだか、元気がないみたい」
「う……うん……」
「親分にしかられたの?」
「ううん、そうじゃないよ。ただ……」
手ぬぐいワドルディは、ふーっとため息をついた。
エフィリンは、心配そうに言った。
「なやみごとがあるの? ボクでよければ、話を聞かせて」
「ありがとう、エフィリン」
二人は、川ぞいの土手にすわった。
手ぬぐいワドルディは、話し始めた。
「なぞなぞ仮面の事件が解決したことは、知ってる?」
「うん。ぱったり姿をあらわさなくなったんだってね。おかげで、みんな安心して出歩けるようになったって」
エフィリンは、にっこりした。
「カービィのお手がらだって聞いたよ。なぞなぞ仮面を、こてんぱんにやっつけたんだってね。すごいなあ!」
手ぬぐいワドルディは、うかない顔で言った。
「そのことで、親分はきげんが悪いんだよ」
「え? どうして?」
「親分は、目明かしだからね。本当は、自分が解決したかったのに……」
「あ、そうか。カービィに、手がらを取られちゃったと思ってるんだね」
「そうなんだ。それに、カービィの様子も、なんだかおかしいんだよ」
手ぬぐいワドルディは、川面を見つめた。
「遊びにさそっても、ことわられてばかりなんだ。ぼくと話すのを、さけているみたいなんだよ。『かわさき亭』にも、あんまり来なくなっちゃったしね」
「それも聞いたよ。カービィは、おくゆかしいから、自分の手がらをひけらかしたくないんだって」
手ぬぐいワドルディは、ため息をついた。
「うーん……なんだか、ちがう気がするんだ。いつものカービィなら、なぞなぞ仮面をどうやってやっつけたか、楽しそうに話してくれると思うんだよ。なのに、なにも話してくれないなんて……なにか、かくしごとをしているように思えるんだ。そんなの、カービィらしくないよ」
「ふーん……なんだか、変だね」
「カービィが、やっかいなことに巻きこまれていなければいいんだけど……」
手ぬぐいワドルディは、しょんぼりした。
そんな顔を見て、エフィリンは言った。
「ボクにまかせてよ、ワドルディ」
「え?」
「ボクが、カービィのこと、調べてみる!」
きっぱりとした、力強い声だった。
手ぬぐいワドルディは、おどろいてエフィリンを見た。
かわいいエフィリンだが、いつもよりも力強く、たのもしく見える。
「ワドルディもカービィも、友だちだもん。困ってることがあるなら、協力したいんだ」
「エフィリン……」
「なにかわかったら、すぐに知らせるね。またね、ワドルディ」
「あ……エフィリン!」
手ぬぐいワドルディが引き止める間もなく、エフィリンは、パタパタと耳を動かして飛んでいってしまった。
大切な友だちだから、カービィのかくしごとが気になってしまう手ぬぐいワドルディとエフィリン。
エフィリンは、カービィの「ひみつ」にたどりつくことができるのか? そして、カービィとメタナイトの「ロクエモン打倒作戦」は成功するのか!?
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