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今度はちょんまげ姿のカービィが、いつものプププランドとはちがう世界で大かつやく!
大人気サブゲーム『刹那(せつな)の見斬(みき)り』の小説版だよ!!
◆第4回
平和なプププ町だったけど、新しいお殿様が出した「おだんご税」や「きなこ禁止令」で、町人たちは大よわり。
しかも、さらに事件の予感が……!?
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なぞなぞ仮面あらわる
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しんしんと、プププ町の夜がふけていく。
町じゅうが、すっかり寝しずまったころ。
「ふう、すっかりおそくなっちゃったであります」
夜道を急いでいるのは、魚売りのワドルドゥ。
頭に笠(かさ)をかぶり、長いつりざおをせおっている。かかえているのは、魚がたくさん入った大きなカゴだ。
川で夜づりを楽しんでいるうちに、ついつい夢中になってしまい、気がついたらこんな時刻になってしまったのだ。
あたりは静まり返っているが、プププ町は、あくびが出るほど平和な町。夜おそくなっても、こわいことなんてない。
ワドルドゥも、まったく心配することなく、のんきに家路(いえじ)をたどっていた――が。
とつぜん、目の前に、スッと黒い影がまいおりてきた。
「わわわわ!?」
ワドルドゥは、おどろいて、ひっくり返ってしまった。
月光を浴びて立っているのは、仮面をつけたサムライだった。りっぱな刀を身につけている。
仮面のサムライは、静かな声で問いかけた。
「答えよ。あまく、白く、冷たきものは?」
「……ええ?」
いきなり、きみょうなことを聞かれて、ワドルドゥは大きな目をぱちくりさせた。
「な、なんでありますか? あまくて、白くて、冷たい……?」
「答えよ」
サムライは、スッと一歩進み出た。
静かなものごしだが、異様(いよう)な迫力をただよわせている。仮面の下の目は、冷たい光をはなっていた。
ワドルドゥは、ふるえ上がった。
サムライの視線に射すくめられたように、身動きができない。
「あ、あ、あまくて……しろくて……つめたい……えっと……えっと……」
「答えよ」
地の底から聞こえてくるような、おそろしい声だった。答えられなければ、たちまち斬(き)りきざまれてしまいそうだ。
ワドルドゥはガタガタとふるえながら、とっさに思いついたものをさけんだ。
「え、えっと……水あめのツボに落っこちて、水あめまみれになっちゃったチリー!」
すると仮面のサムライは、急にきょうみを失(うしな)ったように、顔をそむけた。
「行け」
「……え?」
「さらばだ」
次の瞬間(しゅんかん)、サムライはもう姿を消していた。
ワドルドゥは、何度もまばたきをした。
信じられないようなふしぎなできごとだったが、夢ではない。あくびが出るほど平和なプププ町に、まさかの大事件――!
「た、た、たいへんでありますー!」
ワドルドゥは、かかえていたカゴを放り出して、いちもくさんに駆け出した。
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さて、そのころ、町を守るデデデ親分の家では。
ねっころがった親分が、ふきげんそうな様子で、子分のワドルディ組に命令していた。
「声が小さいわい。もっと気合を入れて数えろ」
「は、はい。ひつじが三百六十八匹!」
「ひつじが三百六十九匹!」
「ひつじが、えっと、えっと、三百八十匹……」
「ばかもの! 三百六十九の次は三百七十だろうが! やり直し!」
「は、はい。ごめんなさい」
デデデ親分は、プププ町の平和を守る「目明かし」だ。
毎日、大きな目を光らせて、町を見守っている――はずだが、実は、ゴロゴロとお昼寝ざんまいの日々を送っていた。
なにしろ、プププ町は平和すぎるのだ。親分が見張らなくても、事件なんて一つも起こらない。だから、親分もぐうたらになってしまうのだった。
今日も、昼寝をしすぎたせいで、夜になっても、ちっともねむくならない。
そこで、ねむくなるおまじないとして、子分たちにひつじを数えさせているというわけだ。
「だめだ。ぜんぜん、ねむれん。おまえたち、もっと他の方法を考えろ……」
デデデ親分が、むっくりと起き上がって、そう言ったときだった。
ドンドン! と、はげしく戸をたたく音がした。
ワドルディ組のかしら、手ぬぐいワドルディが言った。
「だれでしょう? こんな夜ふけに」
「風の音だろう。ほっとけ」
やっかいごとがきらいなデデデ親分は、めんどうくさそうに言った。
けれど、手ぬぐいワドルディは立ち上がった。
「風ではなさそうです。はーい、今、開けますね……」
手ぬぐいワドルディが戸を開けると、いきおいよく何者かがころがりこんできた。
ゼイゼイと息をしているのは、つりざおをせおったワドルドゥ。
「あれ? ワドルドゥ? どうしたの、こんな夜ふけに……」
手ぬぐいワドルディがびっくりしてたずねると、ワドルドゥはカラカラにかわいた声でさけんだ。
「出た、出たんでありますー! 刀を持った、おそろしいサムライが……!」
「……え!?」
「ワタシ、おそわれたのであります! 斬(き)りつけられそうになって、命からがら、逃げてきたのでありますー!」
「ええ!?」
ワドルディたちは、びっくりぎょうてん。
デデデ親分が、うたがわしそうに言った。
「刀を持ったサムライだと? この町に、そんなぶっそうなヤツがいるわけないわい」
「いたんでありますよ! ワタシ、この目で見たのであります!」
「なにか、とられたのか?」
「はい! たくさんつった魚を、カゴごと、とられたであります!」
本当は、自分でおっことしたのだが、ワドルドゥはすっかりおびえて、サムライにとられたと思いこんでいる。
さすがに、ぐうたらなデデデ親分も、身を乗り出した。
「なるほど、大事件だな。そのサムライの特徴(とくちょう)は?」
「仮面をかぶってたので、顔はわからないであります。りっぱな刀を身につけていたであります。低くてかっこいい声で、おそろしいなぞなぞをしかけてきたのであります!」
「……なぞなぞ?」
「え、えっと、たしか……あまくて冷たいものはなーんだ? とか、そんな感じの……」
おびえきったワドルドゥは、記憶(きおく)が混乱(こんらん)している。
デデデ親分は、首をかしげた。
「なぞなぞをしかける、仮面のサムライだと? なんなんだ、いったい」
「わからないであります! とにかく、ワタシ、おそろしくて、おそろしくて!」
手ぬぐいワドルディが、キリッとして言った。
「これは事件です。現場を調べに行きましょう、親分!」
「……むぅ。もう、こんな夜ふけなのに……」
「でも、仮面のサムライが、また、だれかをおそうかもしれません。早くつかまえないと!」
「むぅ……仕方あるまい」
デデデ親分は、ワドルディ隊とワドルドゥを連れて、現場に向かった。
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けれど――見つかったのは、ワドルドゥが放り出したカゴだけ。中に入っていた魚も、無事だった。
ようやく、ワドルドゥは記憶(きおく)を取りもどし、きまり悪そうに言った。
「そういえば、これは、ワタシが自分で落としたのでありました。サムライに、とられたわけじゃなかったであります……」
「なーんだ!」
デデデ親分はあきれて、大あくびをした。
「おくびょう者め。きっと、なぞなぞ好きのヒマなサムライが、おまえをからかっただけだろう。これにて、一件落着(いっけんらくちゃく)だ!」
「は……はぁ……」
ワドルドゥは不満そうだが、サムライの手がかりがなにも残っていないのでは、仕方がない。
「駆け回ったせいで、ねむけがおそってきたわい。さあ、帰って寝るぞ!」
「はい、親分!」
デデデ親分はワドルディ組を引き連れて、家に帰ったのだった。
プププ町の平和を守る「目明かし」・デデデ親分のもとに飛びこんできたのは、仮面のサムライの事件。サムライのなぞかけには、いったい、どんな意味があるのか……?
そして、デデデ親分が、名すいりで仮面のサムライの正体にせまる!? 次回「犯人をさがせ」、お楽しみに!
(2月24日公開予定)
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- 9784046321824
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