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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 刹那の見斬りで悪を断て!』第1回 プププ町は今日も平和? 前編


今度はちょんまげ姿のカービィが、いつものプププランドとはちがう世界で大かつやく!
大人気サブゲーム『刹那(せつな)の見斬(みき)り』の小説版だよ!!

◆第1回

いつものプププランドとはちがう世界、『プププ町』で、ちょんまげ姿のカービィが大かつやく! 大人気サブゲーム『刹那(せつな)の見斬(みき)り』小説版がはじまるよ~!! 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

さあさ、お立ち会い!

 

よってらっしゃい、見てらっしゃい!

 

 

春らんまんのプププ町

 

長屋住まいのカービィは

 

今日もゴロゴロお昼寝ざんまい

 

 

町を見下ろす天守閣(てんしゅかく)

 

そのてっぺんにおわするは

 

天下無敵のお殿様

 

だけどなにやらよからぬことを

 

たくらんでいるとか、いないとか……!?

 

 

闇を切りさく仮面の剣士

 

神出鬼没(しんしゅつきぼつ)のアニマル一座

 

小舟あやつるあやしい商人

 

あっちもこっちも目がはなせない

 

てんやわんやの大さわぎ!

 

 

……え?

 

プププランドは? デデデ城はどうしたって?

 

ヤボなことは言いっこなし!

 

いつものお話とは、まったくちがう世界の大冒険!

 

はじまるよ~!

 

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

プププ町は今日も平和? 前編

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 うららかな日差しがふりそそぐ、プププ町。

 

 ゆったりと流れる川には大きな橋がかかり、おおぜいの町民たちが行き来している。

 

 いつもながらの、活気あふれる朝の光景だ。

 

 そんな中、トボトボと足を引きずるようにして、橋をわたっていく者がいた。

 

 桃色で、まんまるなからだをしている。

 

 のんきそうな見た目だが、頭にはキリリとちょんまげを結(ゆ)い、長い刀を身につけていた。

 

 すれちがった大工が、声をかけた。

 

「おはようッス、カービィ。なんだか、元気がないッスね?」

 

「……おはよ、ナックルジョー」

 

 カービィは足を止め、小さな声で答えた。

 

「ぼく、おなかがすいちゃって……」

 

「え? そりゃ大変ッスね。『かわさき亭』で、ごはんを食べたら……?」

 

「食べたよ。いま、ひがわり定食を十人前、食べてきたばっかりなんだ。でも……」

 

「でも?」

 

「おだんごが、ないんだよ!」

 

 カービィは涙ぐみ、ふらふらと倒れそうになった。

 

「ごはんのあとは、山盛りのおだんごを食べるのが、楽しみだったのに! おだんごのないお食事なんて、ちょんまげのないサムライみたいなものだよー!」

 

「ああ、そのことッスか」

 

 ナックルジョーは、困り顔でうなずいた。

 

「しかたないッスよ。急に、おだんご税が十倍にはね上がったッスから。どこのお店でも、おだんごは出せないッスよ」

 

「ひどいよ! どうして、そんなことを……!」

 

「しっ、カービィ。あんまり大きな声で言わないほうがいいッス。お殿様にもんくをつけてると思われたら、つかまっちゃうッスよ」

 

 ナックルジョーは、手振りでカービィをなだめた。

 

「みんな、ガマンしてるッス。そのうち、また、おだんごが食べられる日がくるッスよ」

 

「……ううう……」

 

 カービィはナックルジョーと別れて、また、トボトボと歩き出した。

 

 橋をわたりきると、にぎやかな音曲(おんぎょく)と声が聞こえてきた。

 

「さあさ、よってらっしゃい、見てらっしゃい! 大ひょうばんのアニマル座が、いよいよプププ町にお目見えだ! 見なきゃぜったい、ソンしちゃうよ! さあさ、見てらっしゃい!」

 

 よく通る、かわいらしい声だ。

 

 カービィは、そちらに目を向けた。

 

 橋のたもとのプププ広場に、色あざやかなノボリが何本もひるがえっている。

 

 ノボリに書かれた文字は、

 

「満員御礼(まんいんおんれい)! アニマル座!」

 

「大人気、エフィリン見参(けんざん)!」

 

「みわくの曲芸師(きょくげいし)キャロル登場!」

 

……などなど。

 

 ノボリにかこまれて、きのうまではなかった、急ごしらえの芝居小屋(しばいごや)が建っていた。

 

 芝居小屋(しばいごや)の前で声を張り上げているのは、大きな耳をした、水色のいきものだった。

 

「んん? なんだろう?」

 

 カービィは、近づいてみた。

 

 おおぜいの町民が、ワイワイとさわぎながら取りかこんでいた。水色の子は、にっこり笑

って、カービィにチラシを差し出した。

 

「はい、お兄さんもどうぞ! お友だちとさそい合わせて、見に来てね!」

 

 カービィは、受け取ったチラシをながめてみた。

 

 大きな字で「アニマル座へようこそ!」とあり、その下に、水色の子が刀をかまえている絵が描かれている。「剣士エフィリンのわるもの退治!」という説明がある。

 

「けんし……えふぃりん……?」

 

 カービィがつぶやくと、水色の子が張りきってさけんだ。

 

「ボクのこと! ボクが、必殺のワザで、わるものたちをやっつけちゃうよ!」

 

 と、芝居小屋(しばいごや)から、毛むくじゃらのけものが何匹も飛び出してきた。

 

「ガルルル!」

 

「ガルル! ガル、ガル!」

 

 まわりを取りかこんでいた通行人たちに、ほえかかる。

 

 みんな、びっくりしてあとずさった。

 

「わあ!? も、猛獣(もうじゅう)!?」

 

「かまれたら、大変だぞ! 逃げろ!」

 

 さらに、けものたちに続いて、美しい着物をまとった豹(ひょう)の女の子と、大きなゴリラがあらわれた。

 

 豹(ひょう)は長いツメをひらめかせ、ゴリラは胸をドンドンとたたいた。

 

「ニャー!」

 

「ンガァァァァー!」

 

 すごい迫力(はくりょく)だ。

 

「わああ! 逃げろー!」

 

 みんな、血相(けっそう)を変えて逃げ出そうとした。

 

 カービィは、あわてて、刀に手をかけた。

 

 町なかでは、刀をけっしてぬかないと決めている。だれかを傷つけたら大変だし、刀を見ただけでもおびえてしまう町民がほとんどだからだ。

 

 でも、今は、そんなことを言っている場合ではない。みんなを助けなくては。

 

 しかし、そのとき。

 

「待て、わるものども! このエフィリンが相手だよ!」

 

 エフィリンがさけんで、すばやく刀をぬいた。

 

 本物の刀ではなく、竹の棒に銀紙を巻きつけた、おもちゃの刀だ。

 

「やぁ!」

 

 エフィリンが、はでな動きで切りつけるまねをすると、豹(ひょう)もゴリラもけものたちも、いっせいにひっくり返った。

 

「ニャアン!」

 

「ンゴォォ!」

 

「ガルル……」

 

 まいった、というように、おおげさにふるえている。エフィリンは刀をくるくる回して、スパッと、さやにおさめた。

 

 カービィは、あっけにとられた。

 

「え……? ひょっとして、今のは、お芝居(しばい)……?」

 

 観客たちは、ワッと声を上げて手をたたいた。

 

「お芝居(しばい)だったのか! びっくりしちゃった! すごい迫力だったよ!」

 

「エフィリン、かわいいのに強いなあ!」

 

 大きな拍手につつまれて、豹(ひょう)もゴリラもけものたちも、ニコニコして頭を下げた。

 

 エフィリンが、彼らを紹介した。

 

「みわくの曲芸師(きょくげいし)キャロルと、力じまんのゴルルムンバ、それにガルルフィ軍団だよ! 大あばれのわるものたちを、ボクがバッタバッタと倒しちゃう! みんな、見に来てね!」

 

「おー! おもしろそう!」

 

「ぜったい、見に行くぜ!」

 

 拍手が、ますます大きくなる。

 

 カービィも、さっきまでしょんぼりしていたのをわすれて、夢中(むちゅう)で手をたたいた。

 

「すごーい! エフィリン、かっこよかったー!」

 

 カービィのわけび声がとどいたのか、エフィリンはにっこり笑って、カービィの前に飛んできた。

 

「今、キミ、戦おうとしてたでしょ? ボク、あせっちゃったよ。たった一人で、みんなを守ろうとするなんて、キミはすごく勇気があるんだね!」

 

「え、ぼく? うん、ぼくはね……」

 

 カービィはいきごんだが、とたんに、まわりから笑い声が上がった。

 

「カービィにあるのは、勇気じゃなくて、食う気と寝る気だけだよ」

 

「すごい食いしんぼうで、いつもゴロゴロ昼寝ばっかりしてる、のんき者だぜ」

 

 エフィリンは、きょとんと首をかしげた。

 

「え? でも、りっぱな刀を持ってるのに……」

 

 炭屋のバーニンレオが、ニコニコして言った。

 

「カービィが刀をぬくとこなんて、だれも見たことないぜ!」

 

 氷屋のチリーも、うなずいた。

 

「たぶん、本物じゃなくて、おもちゃの刀なんだよ。エフィリンが持ってるのと同じようにね」

 

 カービィは、だまりこんだ。

 

 むきになって言い返したら、刀を見せろと言われるかもしれない。みんなの前で刀をぬくのは、どうしてもイヤだった。

 

 すると、エフィリンが、笑いながら言った。

 

「チャンバラは、お芝居(しばい)の中だけでいいよ! ボクのチャンバラ、期待しててね!」

 

 カービィは、うなずいた。

 

「うん! ぜったい見に行くよ。友だちのワドルディもさそってみるね」

 

「ありがとう、カービィ。みなさん、アニマル座をよろしくね!」

 

 エフィリンもキャロルもゴルルムンバも、みんなに手を振った。ガルルフィたちは、短いしっぽをいっしょうけんめいに振った。

 

 さわやかな風が吹き、ノボリがパタパタとひるがえる。

 

 あっというまに、「アニマル座」のひょうばんは町じゅうに広がっていった。

     


旅の一座「アニマル座」のエフィリンとなかよくなったカービィ。
今日も平和なプププ町だけど、あたらしいお殿様がかけた重税「おだんご税」などなど、じつは、ちょっと問題が起こっていて……?
次回「プププ町は今日も平和? 後編」をおたのしみに! (2月3日公開予定)

 


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