
今度はちょんまげ姿のカービィが、いつものプププランドとはちがう世界で大かつやく!
大人気サブゲーム『刹那(せつな)の見斬(みき)り』の小説版だよ!!
◆第2回
おなかをすかせたカービィが行く先といえば、もちろんコックカワサキのめし屋『かわさき亭』!
プププ町のみんなが集まるかわさき亭には、殿様の悪行の話や、こわいうわさも集まってくるようで……?
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
プププ町は今日も平和? 後編
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
日もとっぷりくれた、その晩(ばん)。
昼間はそうぞうしかったプププ町も、すっかり静まり返っている。
だが、川っぷちにある一軒(けん)のめし屋だけは、いつものお客たちでガヤガヤとにぎわっていた。
店の軒先(のきさき)につるされた赤ちょうちんには、「かわさき亭」の文字。
この店の大将コックカワサキは、プププ町でいちばんのうでまえの料理人なのだ。
大にぎわいの店内で、腰かけにすわって大声を上げているのは、カービィだった。となりには、友だちの手ぬぐいワドルディもいる。
「ぼく、もう、おなかペコペコ! コックカワサキ、大至急でお願いだよ。たまご焼きと、てんぷらと、きつねそばと、かぼちゃの煮物と、ぶり大根と、おとうふのおみそしると、あと、あと……!」
「はいはい、ただいま」
コックカワサキはニコニコ顔で、カービィの注文の品を皿に盛りつけた。
手ぬぐいワドルディが言った。
「じゃ、ぼくは、おかかのおにぎりと、ワカメのおみそしるをお願い。あと、わらびもちも……」
すると、コックカワサキは、もうしわけなさそうに言った。
「ごめんね、手ぬぐいくん。わらびもちは、出せなくなっちゃったんだ」
「え?」
「ついさっき、おふれが出たんだよ。きなこ禁止令だってさ」
「……ええええ!?」
手ぬぐいワドルディとカービィは、声をそろえてさけんだ。
他の客からも、おどろきの声が上がった。
チリーが言った。
「きなこ禁止!? どうして? おだんご税だけでも、みんなこまってるのに!」
かんざし屋のバウンシーも言った。
「おだんごが食べられないから、わらびもちが楽しみだったのに。きなこ禁止だなんて、どういうこと!?」
コックカワサキは、小さな声で言った。
「ぼくだって、困ってるんだ。だけど、殿様が出したおふれだから、さからえないよ」
カービィは、目に涙をうかべてさけんだ。
「ひどいよー! どうして殿様は、つぎつぎに、いじわるなおふれを出すんだろう? ぼく、ゆるせないよー!」
「しーっ! カービィ! 殿様に知られたら、大変なことになっちゃうよ!」
手ぬぐいワドルディが、あわててカービィの口をふさいだ。
バーニンレオが、暗い声で言った。
「心配しなくてもだいじょうぶだぜ、ワドルディ。この店には、殿様に告げ口をするようなヤツはいねえから。オレだって、カービィと同じ気持ちさ」
店の客たちは、いっせいにうなずいて、文句を言い始めた。
「きなこ禁止とか、おだんご税とか、わけがわかんないよな。殿様の気まぐれだよ」
「前の殿様のときは、こんなこと、なかったのにね。新しい殿様になってから、ひどいことばっかりだよ」
「今の殿様は、おいしいお菓子を、オレたちに食べさせたくないのさ。ぜんぶ、ひとりじめしたいんだ。ひどいヤツだぜ!」
コックカワサキが、あわてて言った。
「み、みんな、そのくらいにしておこうよ。万が一、だれかに聞かれたら、うちの店が殿様ににらまれて、ぼくがつかまっちゃうよ」
「おっと、そうだな」
みんな、だまりこんだ。
しーんとした中、くすり屋のスカーフィがつぶやいた。
「そういえば……こわいうわさを聞いたんだけど」
「え? こわい……?」
「お城には、殿様にさからった者を入れる、地下牢(ちかろう)があるらしいよ」
「ち……ちかろう!?」
みんな、顔を見合わせた。
スカーフィは、ますます声をひそめて、続けた。
「真夜中に、なわでしばられた罪人(ざいにん)が引きずられて行くんだって。罪人(ざいにん)は地下牢(ちかろう)に閉じこめられて、二度と出られないらしい……」
「や、やめてぇ!」
こわがりのバウンシーが悲鳴を上げた。
チリーが言った。
「そ、そんなの、ただのうわさ話だろ? ち、地下牢(ちかろう)なんて、だれかが本当に見たわけじゃあるまいし!」
すると、それまでだまって話を聞いていた飛脚(ひきゃく)のウィリーが、声をひそめて言った。
「実はさ、オレ、あやしい声を聞いたことがあるんだ」
「……え? あやしい声?」
「荷物の配達がおそくなっちゃって、夜中に、お城のそばを通りかかったときのことだ。『ンギャォォォ……』っていう、苦しそうな声が聞こえたんだよ」
「ええ!?」
みんな、ぞっとして顔を見合わせた。
チリーが言った。
「き、聞きまちがいだよ! ただの風の音だよ、きっと!」
「いや、風なんかじゃないよ。あれはきっと、地下牢(ちかろう)に閉じこめられた罪人(ざいにん)の、うらみの声……」
「きゃああ!」
バウンシーが、ふるえ上がった。
コックカワサキが、大声でさえぎった。
「もう、やめようよ! こわくなっちゃうよ。みんな、もっと楽しい話をしよう!」
ナックルジョーが、うなずいた。
「そ、そうッスね。そういえば……アニマル座のこと、知ってるッスか?」
カービィが言った。
「知ってるよ! プププ広場にできた、お芝居(しばい)の小屋だよね。すっごく、おもしろそうだったよ」
「お芝居だけじゃなく、歌や曲芸(きょくげい)やおどりや、いろいろなだしものがあるらしいッス。明日から始まるらしいッスよ。ぜったい、見に行くッス!」
「ワドルディ、いっしょに行こうよ」
カービィがさそったが、手ぬぐいワドルディは、残念そうに答えた。
「ごめんね、明日はダメなんだ。デデデ親分のお使いを言いつけられてるから」
「え、また? ワドルディ、きのうも親分のお使いでいそがしかったのに……」
「そりゃ、そうだよ。ぼくは、ワドルディ組のまとめ役だもん!」
手ぬぐいワドルディは、ほこらしそうにそっくり返った。
バーニンレオが口をはさんだ。
「たまにはサボっちゃえよ、ワドルディ。デデデ親分のヤツ、人使いが荒すぎるぜ」
手ぬぐいワドルディは、頭を振って言い返した。
「ううん、そんなことないよ、バーニンレオ。親分は、町を守る『目明かし』だからね。毎日とっても、いそがしいんだ。ぼくらワドルディ組がお手伝いするのは、当たり前だよ」
「そっかぁ? オレが見るかぎり、デデデ親分は、毎日かわらでゴロゴロしたり、めし屋でゴロゴロしたり、銭湯(せんとう)でゴロゴロしたり、カービィに負けないくらいゴロゴロしてるけどな」
「ちがうんだ。親分は、ゴロゴロしてるふりをしながら、町を見守ってるんだよ。みんながしあわせに暮らせているか、いっつも目を光らせているんだ」
「ふぅん……?」
店内の全員が、うたがわしそうな顔になった。
手ぬぐいワドルディは言った。
「それじゃ、ぼく、もう帰らなくちゃ。ごちそうさま、コックカワサキ」
「はい、また来てね、ワドルディ」
「ぼくも帰る!」
カービィはそう言って、ぴょこりと立ち上がった。お皿に山盛りだった料理は、あっというまに平らげたあとだ。
「おなかいっぱいになったら、ねむくなっちゃった。おやすみなさい、みんな」
「おやすみ、カービィ、手ぬぐいくん」
「また明日な!」
カービィと手ぬぐいワドルディは、みんなに手を振って、店を出た。
新しいお殿様は、なぜ町民たちを苦しめるのか? そして、城から聞こえてくるという苦しそうな声の正体は……??
なじみの町民みんなでおしゃべりして、おなかいっぱいになったカービィと手ぬぐいワドルディ。二人の帰り道で、何かが起こる!? 次回「ナゾのからくり兵士」をおたのしみに!(2月10日公開予定)
『星のカービィ 刹那の見斬りで悪を断て!』は好評発売中!
『星のカービィ まんぷく、まんまる、グルメフェス!』好評発売中!ためし読みも公開中だよ♪
作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと
- 【定価】
- 792円(本体720円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046321824
大人気発売中『星のカービィ メタナイトとあやつり姫』ためし読み公開中!
大人気発売中『星のカービィ 大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』ためし読み公開中!
その他のカービィの本は以下のバナーからチェック♪
©Nintendo / HAL Laboratory, Inc. KB22-P3926