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今度はちょんまげ姿のカービィが、いつものプププランドとはちがう世界で大かつやく!
大人気サブゲーム『刹那(せつな)の見斬(みき)り』の小説版だよ!!
◆第3回
コックカワサキのめし屋『かわさき亭』でおなかいっぱいになったカービィと、カービィの友だちの手ぬぐいワドルディ。なかよしな二人の帰り道、とつぜん、「ある人物」があらわれて!?
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ナゾのからくり兵士
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明るい満月が、町をてらしている。
「かわさき亭」を出たカービィと手ぬぐいワドルディは、川ぞいの道を歩いていた。
カービィが、ニコニコ顔で言った。
「おいしかったあ! コックカワサキのお料理は、やっぱり最高だよね!」
手ぬぐいワドルディも、笑顔でうなずいた。
「うん! おかかのおにぎり、おいしかったな。明日は、のり茶づけを食べようっと」
「わあ、おいしいよね、のり茶づけ! ぼくは、しゃけ茶づけと、梅ぼし茶づけと、塩こんぶ茶づけにしようっと! あと、たらこのおにぎりと、しらすのおにぎりと、焼きおにぎりと、あと、あと……!」
カービィが、思わずよだれをたらしそうになったときだった。
とつぜん、まがりかどから、なにかが飛び出してきた。
「わああ!」
カービィは、思いっきりぶつかられて、ひっくり返ってしまった。
「あ、ごめんなさい」
声をひそめてあやまったのは、大きな耳をした水色のいきもの――エフィリンだった。
カービィは、びっくりした。
「エフィリン……!?」
エフィリンはカービィの顔を見て言った。
「え? キミは……あ、昼間の……カービィさん……だっけ」
「うん! どうしたの? なんで、そんなに急いで……」
「こっちへ来て! かくれよう!」
エフィリンは、カービィと手ぬぐいワドルディの手を引っぱって、ものかげに飛びこんだ。
すると――カタカタと音を立てて、ふしぎな一隊(いったい)があらわれた。
木材を組み合わせた、からくり細工の人形たちだ。手に、長いヤリを持っている。
「あれは……!?」
カービィは思わず声を上げたが、エフィリンがあわてて口をふさいだ。
「しっ! 静かにして!」
人形たちは、しばらくキョロキョロとあたりをうかがっていたが、やがて、あきらめてもどっていった。
エフィリンが、ふーっと息をついた。
「助かった……」
手ぬぐいワドルディが、ふしぎそうにたずねた。
「君は、だれ? カービィのお友だちなの……?」
カービィが答えた。
「アニマル座のエフィリンだよ。エフィリン、こっちはワドルディ。ぼくの友だちだよ」
カービィが紹介すると、エフィリンはていねいに頭を下げた。
「はじめまして、ワドルディさん。びっくりさせちゃって、ごめんなさい」
カービィは、エフィリンにたずねた。
「なにがあったの? エフィリン、どうして、追いかけられてたの?」
手ぬぐいワドルディも、心配そうに言った。
「さっきのやつら、ヤリを持ってたよね。あんなぶっそうな連中が町をうろついてるなんて、ほうっておけないよ。つかまえなきゃ。ぼく、デデデ親分に知らせてくる!」
かけ出そうとする手ぬぐいワドルディを、エフィリンはあわてて止めた。
「待って! 今夜のことは、だれにも言わないで!」
「え?」
カービィと手ぬぐいワドルディは、おどろいてエフィリンを見つめた。
エフィリンは、ためらいながら言った。
「今のは……お城の兵士たちなんだ」
「ええ!?」
「ボク、お城に忍びこもうとして、見つかっちゃったんだ。それで、追いかけられてたんだよ」
カービィも手ぬぐいワドルディも、あぜんとした。
手ぬぐいワドルディが言った。
「お城に……? 君、どうしてそんなことをしたの?」
すると、エフィリンは、目をそらせて答えた。
「えっと……その……すごくりっぱなお城だから、中を見たくなっちゃって。こっそり、へいを乗り越えたんだ。そうしたら、たちまち、追いかけられて……えへへ!」
手ぬぐいワドルディが言った。
「もう、そんなことしちゃダメだよ。あぶないからね」
カービィも、うなずいて言った。
「お城には『ちかろー』があるんだって。つかまったら、閉じこめられちゃうよ」
「……地下牢!?」
エフィリンは、顔をこわばらせた。
手ぬぐいワドルディが言った。
「うわさだけどね。殿様にはむかったりすると、つかまっちゃうらしいよ」
「牢(ろう)の中から『ンギャォォ』っていう苦しそうな声が聞こえてきたんだって。飛脚(ひきゃく)のウィリーが聞いたって言ってた」
「……そう」
エフィリンは、深刻(しんこく)な表情で考えこんだ。
カービィが言った。
「エフィリンは、プププ広場の芝居小屋(しばいごや)に帰るんでしょ? だったら、同じ方向だから、いっしょに行こうよ」
「あ……うん!」
エフィリンは、われに返って、うなずいた。
カービィと手ぬぐいワドルディは歩き出した。エフィリンは、耳をパタパタさせて、飛びながらついてくる。
カービィが言った。
「お芝居(しばい)、明日から始まるんでしょ? がんばってね。ぼく、見に行くよ!」
「ありがとう、カービィさん」
「カービィでいいよ!」
手ぬぐいワドルディがたずねた。
「お芝居(しばい)って、どんなことをするの?」
エフィリンは、にっこり笑って答えた。
「ボクが主人公でね、とくいの剣術で、わるものたちをバッタバッタと倒していくんだ」
「わあ……おもしろそうだね!」
手ぬぐいワドルディは、目をかがやかせた。
エフィリンは、うれしそうに話を続けた。
「それだけじゃないよ。お芝居(しばい)の合間に、大迫力の曲芸(きょくげい)や、力じまんの芸もあるし、びっくりするようなからくり細工(ざいく)だって……」
「え? からくり細工(ざいく)って? どんなもの?」
カービィがたずねた。
エフィリンは、ハッとして、息をのんだ。
「え、えっと……あの……ごめん。からくり細工(ざいく)は、今回は、ないんだ」
「え?」
「からくり細工師(ざいくし)が、ちょっと前から、病気になっちゃってね。残念だけど……」
「……そうなの?」
カービィは、がっかりした。
手ぬぐいワドルディが言った。
「からくり細工師(ざいくし)さん、早く良くなるといいね。病気がなおったら、からくり細工(ざいく)も見せてもらいたいな」
「う、うん……」
エフィリンは、なぜか、うなだれてしまった。
なんとなく、会話がはずまないまま、三人はプププ広場までやってきた。
ノボリにかこまれた芝居小屋(しばいごや)が見える。昼間のにぎわいがウソのように静かだ。
エフィリンは、ホッとしたように言った。
「じゃ、ここでお別れだね。おやすみなさい、カービィ、ワドルディ」
「おやすみ、エフィリン」
カービィたちが手を振った、ちょうどそのとき。
芝居小屋(しばごや)の木戸が開いて、中からだれかが出てきた。
大がらで、美しいたてがみがある。いげんに満ちた姿だ。
エフィリンがさけんだ。
「あ、ただいま、レオン!」
「帰ったか、エフィリン。おそいから心配したぞ……おや? そちらは?」
レオンは、カービィたちに目を向けた。
するどい目つきだ。手ぬぐいワドルディはビクッとして、思わずあとずさった。
エフィリンが言った。
「カービィとワドルディだよ。友だちになったんだ」
「……友だち……?」
「うん! カービィ、ワドルディ、こちらはアニマル座の座長のレオン。ボクらの、かしらだよ」
「はじめまして!」
カービィは元気よく、手ぬぐいワドルディはこわごわと、あいさつをした。
レオンは無言でうなずき、身をひるがえした。
「じゃあね、カービィ、ワドルディ」
エフィリンは、レオンに続いて小屋に入っていった。
カービィと手ぬぐいワドルディは顔を見合わせ、歩き出した。
手ぬぐいワドルディが言った。
「それにしても、お城に忍びこんじゃうなんて、びっくりしたよ。エフィリンって、意外と、だいたんだね」
「つかまらなくて、よかったよ。お城の兵士たち、乱暴そうだったもん」
「うん! だけど、お城の兵士がからくり人形だなんて、おどろいちゃった」
「前は、あんな兵士たち、いなかったよね? 新しいお殿様になってから、急に、お城の警備がきびしくなったんだよ」
「そうだね……からくり……からくりの兵士かぁ……」
手ぬぐいワドルディは、なにやら考えこんだ。
カービィは、ふしぎに思ってたずねた。
「からくりが、どうかしたの?」
「……エフィリンが話してたことを思い出しちゃって。からくり細工師(ざいくし)が、ちょっと前から病気だって言ってたよね。お城のお殿様が変わったのも、ちょっと前のことだよ」
「うん……?」
「それに、エフィリンは、カービィが地下牢のことを話したら、だまりこんじゃった。じっと、考えこんでるみたいだったよ。なにか、思い当たることでもあるのかな」
「思い当たること……?」
「からくり細工師(ざいくし)、からくり兵士……これって、ただのぐうぜん……かなあ……?」
まもなく、プププ長屋についた。カービィの住まいだ。
「それじゃ、またね、ワドルディ」
「うん。おやすみ、カービィ」
カービィと別れてからも、手ぬぐいワドルディは、歩きながら考えこんでいた。
「なんだか、気になるなあ……からくり……からくり……うーん……?」
意外な場所で、急にあらわれたのは、エフィリンだった! 手ぬぐいワドルディは、エフィリンの話や、『かわさき亭』で聞いたうわさが気になっているみたい……?
そしてさらに、平和なはずのプププ町で事件発生!? 次回「なぞなぞ仮面あらわる」をおたのしみに!
(2月17日公開予定)
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