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今度はちょんまげ姿のカービィが、いつものプププランドとはちがう世界で大かつやく!
大人気サブゲーム『刹那(せつな)の見斬(みき)り』の小説版だよ!!
◆第5回
プププ町で、ナゾのサムライがなぞなぞをしかける事件が発生!
町の平和を守る「目明かし」・デデデ親分が、ワドルディ組をひきつれて、事件解決にのりだした。デデデ親分が犯人だと考えるのは、意外な「あの人」!?
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犯人を探せ!
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さて、それからのプププ町では――。
プププ広場でくり広げられるアニマル座のお芝居(しばい)が、連日、大にぎわいだった。
まず、なんといっても、主役のエフィリンが大ひょうばん。
かわいくてゆうかんな旅人エフィリンが、すばしっこい豹(ひょう)のキャロルや怪力(かいりき)ゴルルムンバといった悪役をバッタバッタとなぎ倒す、笑えて泣けるお話も好評(こうひょう)だ。
お芝居(しばい)の合間にはさまれる、キャロルの曲芸(きょくげい)や、ゴルルムンバの怪力芸(かいりきげい)も、見ごたえたっぷり。一座をひきいるレオンも、しぶくてかっこいいと、大人気になっている。
しかし、昼間の盛り上がりのいっぽうで、夜になると、仮面のサムライの被害(ひがい)が続出(ぞくしゅつ)していた。
おそわれた者たちの証言は、みんな、一致(いっち)している。
「急におそわれて、不気味ななぞなぞを仕掛けられたんだ!」
「今にも斬(き)られそうな迫力だったぜ! こわかった!」
「この世のものとは思えない殺気(さっき)だったわ! あれは、地獄(じごく)からの使者よ!」
これほどさわぎが大きくなると、デデデ親分も、ほうってはおけなくなってきた。
親分は、ゴロゴロとねっころがって、推理(すいり)をめぐらせた。
「これまでに、このプププ町で、こんなさわぎが起きたことはなかったのだ……それが、急にぶっそうになってきた……ということは……つまり……!」
デデデ親分は、むっくりと起き上がって叫んだ。
「読めた! 事件の筋書きが、ぜーんぶ、わかったわい!」
「え! もう、わかったんですか!」
「さすがです、親分!」
ワドルディ組のみんなは、親分に尊敬のまなざしを向けた。
親分は、ニヤリと笑って言った。
「この事件は、よそ者のしわざにちがいない」
「え? よそ者って?」
「アニマル座とかいう連中だ」
デデデ親分は、そっくり返って言い切った。
手ぬぐいワドルディが、目をまるくして言った。
「え!? でも、アニマル座は、大人気の一座ですよ。そんな悪いことをするはずが……」
手ぬぐいワドルディは、アニマル座のエフィリンとは、友だちだ。
カービィといっしょに、もう何度も、一座のお芝居(しばい)を見に行っている。
かわいいエフィリンとゆかいな仲間たちがくり広げる舞台(ぶたい)は、時間をわすれてしまうほど楽しかった。
あのエフィリンたちが、悪いことをするなんて、ぜったいに思えない。
けれど、デデデ親分は、自信まんまん。
「フン! 旅の一座とは、世をしのぶ仮のすがた! やつらの本性は、なぞなぞをしかけて町民たちをおどす、悪の一味(いちみ)なのだ!」
「で、でも親分。悪の一味(いちみ)がなぞなぞをしかける目的は、なんなんでしょう……?」
「それを、オレ様が確かめてやる! おまえたちも、ついて来い!」
デデデ親分は、さっそうと立ち上がった。
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アニマル座は、本日の興行(こうぎょう)を終えて、あと片づけをしていた。
レオンが、みんなを見回して言った。
「みな、ご苦労だった。明日も、このちょうしでたのむぞ」
キャロルが、少し不満そうな表情で、レオンにつめよった。
「ニャ! ニャニャ!」
「……うむ。わかっている。この町に来た本当の目的を、わすれたわけではない」
レオンは、声をひそめて言った。
「だが、今はまだ、身うごきが取れないのだ。この町にとけこみながら、少しずつ城の情報を集めねば……」
そのとき、芝居小屋(しばいごや)の木戸が、強引にこじ開けられた。
ガルルフィたちが身がまえて、いっせいにほえだした。
「ガルルルル!」
「ガルルル!」
レオンは振り向いた。
「む? だれか来たのか……?」
そのとき、ガルルフィたちの声を圧倒するほどの、大きな声がひびきわたった。
「御用(ごよう)あらためである! 神妙(しんみょう)にせよ!」
言い放ったのは、デデデ親分。背後に、おおぜいのワドルディ組をしたがえている。
エフィリンが、まっさきに手ぬぐいワドルディに気づいて、さけんだ。
「あ、ワドルディ! どういうこと……!?」
手ぬぐいワドルディは、申しわけなさそうに答えた。
「ごめんね、エフィリン。ちょっと、調べたいことがあって……」
デデデ親分は、ずんずんと進み出て、レオンの前に立った。
「きさまが、この一座のかしらか?」
レオンはデデデ親分を見下ろして、うなずいた。
「いかにも。座長のレオンだ。調べたいこととは、なんだ?」
「きさま、近ごろ町をさわがせている、なぞなぞ仮面のことを知っているな?」
「なぞなぞ仮面……?」
レオンは、ふしぎそうに、うなずいた。
「うわさを聞いたことがある。なぞなぞをしかけてみなをおどす、ふとどきなサムライが出没(しゅつぼつ)しているとか……」
「うむ! これまで、このプププ町では、そのような事件など起きたことがなかった。だが、きさまらがやって来てから、このありさまだ!」
決めつけるように言われて、レオンはギラリと目を光らせた。
「……どういう意味だ?」
「しらばっくれるか。なぞなぞ仮面の正体は――レオン! きさまだ!」
デデデ親分は、レオンにビシッと指を突きつけた。
手ぬぐいワドルディが、あわてて言った。
「ち、ちがいます、親分。被害者(ひがいしゃ)の証言(しょうげん)によれば、なぞなぞ仮面は、もっと小柄(こがら)です。レオンさんの大きさでは、仮面から、からだがはみ出ちゃいます」
「う、うむ、もちろんだ! そんなこと、オレ様は、とっくにお見とおしだわい!」
デデデ親分は、腕を組んで、まちがいを取りつくろった。
「レオンは、黒幕だ。なぞなぞ仮面に化けているのは、もっと小柄(こがら)なヤツ――そこの水色の、おまえにちがいない!」
デデデ大王が指さしたのは、エフィリンだった。
エフィリンは、おどろいて、耳をパタパタさせた。
「ええ――!? ひどいよ! ボク、そんなことしないよ!」
手ぬぐいワドルディが言った。
「証言(しょうげん)によれば、なぞなぞ仮面の声は、低くて、おちついた感じだそうです。エフィリンの声は、高くて、かわいいです!」
「む……むむ……だが、役者なら、声音を変えることぐらいできるはず……」
「――デデデ親分とやら」
レオンが、一歩、前に出た。
はげしい怒りの表情を浮かべている。その迫力に、さすがのデデデ親分も、たじたじとなった。
「な、なんだ……?」
「オレの部下は、だんじて、町民をおどすようなことはせん! うたがうなら、証拠(しょうこ)を見せてもらおうか!」
「しょ、証拠(しょうこ)だと……」
「証拠(しょうこ)もなしに、オレの部下をうたがうのは、ゆるさん! 帰れ!」
「う……」
デデデ親分は、くやしそうな表情になった。
それを見て、レオンは態度をやわらげた。
「……すまん、言いすぎた。オレたちは無関係だと、わかってもらえれば、それでいいのだ。プププ町を守る親分に、さからうつもりなんて、ないからな。なにかあったら、協力すると約束しよう」
「う、うむ! たのんだぞ」
デデデ親分は気を取り直し、ワドルディ組を引き連れて、帰っていった。
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親分たちが帰ったあと、キャロルやゴルルムンバは、不満そうに声を上げた。
「ニャ! ニャニャー!」
「ンゴォォォ!」
アニマル座がうたがわれたことを怒っているのだ。
キャロルは、「あんな、いばりくさった親分なんて、ぶっ飛ばしちゃえばよかったのに!」と、目でうったえた。
レオンは首を振った。
「ああ見えても、この町を守る実力者だ。敵に回すのは、まずい。オレたちの計画を知られないためにも、きげんを取っておくほうが良いのだ。さいわい、単純な性格のようだから、おだてておけば良い」
エフィリンが言った。
「それにしても、なぞなぞ仮面って、いったいなんなの? なにが目的なのかな?」
「知らん。だが、そいつのおかげで、町の警備(けいび)がきびしくなりそうだな……オレたちが、動きにくくなる。困ったことだ」
レオンは、苦い顔になった。
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さて、町がどれほど大さわぎになっても、カービィはまったく気にしていない。
あいかわらずゴロゴロと、お昼寝をしたり、エフィリンたちのお芝居(しばい)を見たり、コックカワサキのめし屋でごはんを食べたり、楽しく暮らしている。
今も、「かわさき亭」でまんぷくになって、長屋へ帰るところだ。
「ああ、おいしかった! だけど、おだんごも、きなこもないのは困るよ……わらびもちとか、ごまだんごとか、おなかいっぱい食べたいなあ」
そんなことを思いながら歩いていると――とつぜん、目の前に、黒い影がまいおりてきた。
仮面で顔をかくし、りっぱな刀をさしている。
町でうわさの、なぞなぞ仮面だ。
けれど、のんき者のカービィは、みんながこわがっている曲者(くせもの)のことをさっぱり知らなかった。
一瞬おどろいたけれど、すぐに気を取り直して、にっこりした。
「こんばんは! えっと……だれ? ぼくに、なにか用? まいごなの?」
仮面のサムライは、すっと一歩進み出て、低い声で言った。
「答えよ。あまく、白く、冷たきものは?」
「え?」
カービィは、きょとんとした。仮面のサムライは、静かにカービィを見つめている。
「あまくて白くて冷たい? それって……なぞなぞ?」
「……答えよ」
「えっとね、あいすくりん!」
カービィは元気よく答えた。
仮面のサムライは、ハッと息をのんだ。
カービィは言った。
「知ってる? 『あいすくりん』って、異国のおやつだよ。氷みたいに冷たいけど、すごくあまくて、おいしいんだ……」
「御免(ごめん)」
仮面のサムライは、カービィの言葉のとちゅうで、いきなり刀をぬいた。
カービィは、びっくりぎょうてん。
「え!? ど、どうしたのー!?」
「君も、刀をぬきたまえ」
「どうして……!?」
仮面のサムライは答えず、刀を低くかまえて、じっとカービィをねらっている。
カービィは、なんとかやめさせようと思ったが、すぐに考え直した。
サムライの殺気(さっき)は、本物だ。
気をぬけば、たちまち斬(き)りつけられてしまうだろう。
とすれば――この場を乗り切る方法は、一つしかない。
カービィは息をひそめ、刀のつかに手をかけた。
サムライは満足げにうなずいた。
二人は、じっとにらみ合った。
風さえも流れを止めるような、緊張(きんちょう)の中――。
!
二人は同時に大地をけり、大声を上げた。
「たぁぁぁぁ!」
「でやぁぁぁ!!」
せつなの勝負!
タァァァァン――!
サムライの刀が、くるくると宙(ちゅう)に舞(ま)った。
カービィが、すれちがいざまに、さやでサムライの手を打ち、刀をはじき飛ばしたのだ。
サムライは、あせって振り返った。サムライの刀が、地面に突き刺さっていた。
刀をぬかずに相手の武器を吹っ飛ばす、おそるべき早ワザだった。
カービィはフゥッと息をついて、サムライを見た。
「ぼくの勝ち! なんだか知らないけど、もう、こんなあぶないことしちゃダメだよ。じゃあね、おやすみなさい」
カービィはサムライに背を向け、すたすたと歩き出した。
「――待て」
サムライは、すばやくカービィの前に回りこんだ。
カービィは、こまり顔で言った。
「まだやるの? やだよ。ぼく、もうねむい……」
「そなた、カービィ殿とお見受けする」
「……え?」
カービィは、めんくらった。
サムライは、さっきまでの荒々しい態度(たいど)をあらため、礼儀(れいぎ)正しく頭を下げた。
「わが名はメタナイト。ごぶれいのほど、おゆるし願いたい」
「め……めたないと? えーと……なんで、ぼくのこと知ってるの……?」
「くわしい事情をお話ししよう」
メタナイトは、暗がりのほうへ歩いて行く。
カービィは迷ったが、ついて行くことにした。
ぶっそうなサムライだが、なんとなく、放っておけない気がしたのだ。
☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・
二人が去ったあと、ものかげから姿をあらわしたのは――ワドルドゥだった。
夜づりの帰り道で、たまたま、今の場面に出くわしてしまったのだ。
おそろしさに足がすくみ、ものかげにかくれて、息づまる戦いの一部始終(いちぶしじゅう)を目撃してしまったのだった。
「今のは……まちがいなく、なぞなぞ仮面であります! のんき者のカービィが、なぞなぞ仮面に勝つなんて……信じられないであります! みんなに知らせるであります!」
ワドルドゥは、興奮(こうふん)して飛び上がり、その場を走り去った。
「なぞなぞ仮面」は、仮面のサムライ・メタナイトだった!
メタナイトは、カービィをさがしていたみたい!? いったい何のために? メタナイトの言う「事情」とは何なのか……?
ついに、すべてが明らかに!? 次回「事件の真相」をおたのしみに!(3月3日公開予定)
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