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先行ためし読み!『かくしごとっ! あたしが天才作家の身がわりに!?』第5回


みんなにナイショで、あたし、つくっちゃうよ。プロの舞台!

あたし、こころ。人と話すのは超ニガテだけど、セリフを妄想するのがトクイな中学1年生! でも……「妄想ノート」を学校でなくしちゃった!?
2026年6月10日発売の『かくしごとっ! あたしが天才作家の身がわりに!?』(深海ゆずは・作、tanakamtam・絵)を、先行ためし読みできちゃう!
大人気「こちらパーティー編集部っ!」「スイッチ!」「七色スターズ!」シリーズの深海ゆずはさんがおくる、元気とトキメキいっぱいの【お仕事×学園ラブコメ】はじまるよっ☆



『かくしごとっ! あたしが天才作家の身がわりに!?』
深海ゆずは・作 tanakamtam・絵
6月10日発売予定!



推しとのそうぐうで、まさかの大ピンチ!? そして、リオウのまっすぐな想いにふれた、こころの決断は……? きっと勇気がもらえる、ためし読み第5回!


※これまでのお話はこちらから

【5】なんで敵認定!?

 うおおおおおおおおおおんっ!

 戻りたくない、戻りたくない、戻りたくないいいいいっ!

 あたしはリオウたちのいる資料部屋の扉を見つめ、頭をかかえていた。

 でも、戻らないと、もっと誤解される!(白目)

「ぬあああああああああっ!」

「もちホッペ! うるせーぞ!」

 絶叫したとたん、いきおいよく扉がひらき、あたしの額を直撃した。

 ゴチンッ!

 という、大きな音が出て、あたしは痛みでしゃがみこむ。

「アオ! こころさんがケガしたら、どうするつもりですか? 謝罪してください」

 リオウの冷静な声に、アオと呼ばれた男子は殺気のこもった視線をあたしに向けた。

「なんでオレが怒られるんだよ。ふつーこんな近くでしゃがみこんでるとは思わないだろ!」

「思うか思わないかじゃありません。こころさんに謝れと言ってるんです」

「あの! あたしのためにケンカしないでください! ……って、待ってえええっ! 今の、少女マンガのセリフみたいじゃないですか!?」

「「――」」

 ケンカをくり広げていた二人は、ドン引いた顔であたしを見つめる。

「よけいなこと言ってないで、部屋に入ってください」

 あきれ顔のリオウに言われ、あたしは、すごすごと部屋に戻る。

 しばしの沈黙。――大きなため息のあと、アオが口をひらいた。

「オイ、オマエがチハル先生の替え玉だって? バカっぽいけど、実はすごい脚本家なのか?」

 フルフル。

 首を横にふると、アオの眉間にグワッと深いしわが寄る。

「じゃあ――。プロの売れっ子小説家か」

「プロで売れっ子の小説家!? まさかまさか。小説なんて、最後まで書けたことないし」

 バン!

 その言葉を聞いた瞬間、アオは思いきりテーブルをたたく。

「リオウ、オマエ正気かよ!? 実力以前の問題じゃないか。コイツにあの天才脚本家チハルの代わりがつとまるわけねーだろっ! 神に対する冒涜だ!」

 燃えるような憎悪の視線に、あたしの頭はまっしろになる。

「おい。オマエ。オレはぜったいに認めない!

 えっ? 何であたし、イキナリ推しに憎まれてるのおおおっ?(動揺)

 しかも、アオって……村雨チハルの超・大ファンなんだ。

「つとまります。むしろクソ兄貴より期待しているくらいです」

「はああっ!? チハル先生の実力なめるな! コイツが1万回転生しても、足元にもおよばない!」

 えー……っと。なんか、あたし、メチャクチャけなされてる気がするんですが。

 でも、いきおいでリオウについてきちゃったけど、たしかにアオの言うとおりだ。

 あたしに天才脚本家・村雨チハルの代わりなんて、ムリすぎる。

「あのっ! あたしもムリだと思うので! ここで失礼しま――」

 ペコリとおじぎをして帰ろうとすると、ガシッとリオウに手をつかまれる。

「ぜっっったいに帰しませんよ、こころさん。――アオ、文句があるならオマエがでていけ」

 冷酷に告げるリオウを、アオは信じられないという顔で見つめる。

「――親友よりソイツをとるのかよ」

「…………」

 ちょっと! リオウ、だまってないで何か言ってよ!

「リオウがそこまで言うのはじめてだな……。わかった。オレがでていく」

「ストーップ! この人がでていくなら、あたしも帰ります!」

 あたしがヤケクソ気味にそう叫ぶと、

「少々取りみだしました。二人も落ちついて。まずは、話だけでもしませんか」

 リオウの言葉を聞き、アオは部屋をでていくのをやめ、もといたソファに座りなおす。

 ほっ、よかった。

「こころさん。先ほども言いましたが、兄・村雨チハルの代わりに『戦国リベンジマッチ』の舞台脚本を書いてもらいます。そこまでは覚えてますか?」

 正座をしたあたしは、ゴクリと唾を飲みこみうなずいた。

「よろしい。かんじんの〆切りまでの日数ですが、2週間しかありません

「「に……2週間んんんんんんんんっ!?」」



 アオはあたしと同時に叫び、バツが悪そうに顔をふせる。

 ギャー! 推しと声がハモってしまった! ……って、そこに萌えてる場合じゃない!

「ムリです! 身がわりをするのだって無謀なのに、2週間って!」

「そうだ! コイツの言うとおりだ! いくらなんでも時間がなさすぎるだろ!」

「そうです。全会一致、時間がない。だから今晩からこのノートに書いて、これから毎日、俺のチェックを受けてください。わかりましたか、こころさん」

「ムリムリ! あたし、中途半端なものを人に見せたくない!」

「なにいっちょ前なこと言ってんだ。永遠に中途半端だろ! 神・村雨チハルに比べたら!」

 いやいや本当に、そのとおりなんだけどっ。

 でもずっと一人で書いてきたし、本当に、はずかしいんだってええええっ!

 こっちをずっとにらんでいたアオは、真剣な顔でリオウの目を見すえた。

「――リオウ。コイツはダメだ。チハル先生の仕事、今すぐキャンセルしろ」

「それは、ぜったいにできません」

 リオウの言葉に、アオはまなじりをつりあげる。

「はあっ!? わかってると思うが、舞台は何十人ものスタッフと役者で作りあげる。総合芸術だ。脚本は『脚』と言われる要なんだぞ!!」

「――わかってます! だからこそ、こころさんに頼んだんです

 今までのリオウからは、想像もできないような強い口調に、あたしは目を丸くした。

「クソ兄貴の評判はどうでもいい。チハルのためじゃない。この段階で穴をあけて迷惑をかけること。それが、俺にとってぜったいに嫌なだけです」

「――まだ、あの時のこと、引きずってるのかよ。リオウのせいじゃないだろ」

 アオのいたわるような声に、リオウは首を横にふる。

「いや。俺がもっと気をつければよかったんです。アイツがギリギリで降りたせいで、現場のみなさんにものすごい迷惑をかけて、企画自体が中止になって。――俺は、もうぜったいに、そんなことはしたくない」

 リオウは拳をふるわせ、苦しげな顔をする。

 その横顔を見ながら、あたしはたくさんの人に関わる『脚本』という仕事のシビアさを感じ、ひそかにふるえた。

「――わかってると思うが、『できなかった』じゃすまされねぇぞ」

 リオウはアオのさぐるような目を、真正面から受け止め、うなずいた。

「もちろん。百も承知です」

 リオウの言葉に、アオは「はあっ」と盛大なため息をついた。

「そこまでシロウト以下のコイツに賭ける理由は、いったい何なんだよ」

 たしかに。リオウがこんなに期待してくれる理由がわからない。

 その理由は――いったい、何だろう。

 ドッドッドッ。

 リオウの回答を待っている間、あたしの心臓は早鐘のように鳴りひびく。

 ぜったいにできないし、断るつもりでついてきたけれど、それだけは聞いてみたい。

「――おもしろかったんです」

 え? ……今なんて?

 リオウの言葉の意味がわからず、あたしはまっすぐにリオウの顔を見つめる。

 リオウは少しとまどったような顔をしたまま、口をひらく。

「あらけずりですが、ワクワクしました。俺は、こころさんの書く『戦国リベンジマッチ』を純粋に読みたい。それが理由です」

「はあ!? 自分がただ読みたいって……無責任にもほどがあるぞ!」

「無責任? ご冗談を。チハルのよりおもしろくなりますので、ご安心を。ね、こころさん」

 い……いやぁ。ステキな顔でほほえまれても、あたしゃ、何も言えませんっ。

「――リオウがマジなのはわかった。オマエはどうなんだよ」

 にらみつけてくるアオの視線にひるみそうになりながらも、あたしは深呼吸した。

 リオウの真剣な目を見れば、彼の言葉が本気だっていうのはわかって――。

 あたしはグッと拳に力をこめた。

『アオの言うとおりです。あたしにはムリです』

 そう言おうと思っていたのに――。

「あたし――あたし、書きます! いや、書きたいです!」

 自分の口から飛びだした言葉に、あたし自身がいちばんビックリする。

 だって! はじめてだったんだもん。

 だれかに自分の書いたものを『おもしろい』って言われたの。

 それが、本当に。本っっっ当に、うれしくて。

 リオウの言葉を聞いたら、こんなあたしでも……できるんじゃないかって勇気がわいた。

 はじめてあたしの書いた物語をおもしろいと言ってくれた、リオウの役に立ちたい。

 それも、物語の力で。

 リオウの言葉に、あたしは背中を押されたから。

 あたしは、リオウの役に立ちたい!

「――ありがとうございます」

 そう言って笑ったリオウの顔は、今まで見たことないくらい優しくて、でも少し泣きそうにも見えて――。

 あたしは、リオウの本当の声をはじめて聞いたような気がしたんだ。


リオウの「おもしろかった」という言葉に動かされ、こころはついに、脚本を書くことを決意! でもアオはまだ、なっとくしていないかも……? 
そしてこころが書き始めた脚本は、いったいどうなるの!?
ワクワクのこのつづきは、6月10日発売の『かくしごとっ! あたしが天才作家の身がわりに!』を読んでね☆


作: 深海 ゆずは 絵: tanakamtam

定価
880円(本体800円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046324115

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