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大ヒット"体験型なぞ解き"ミステリー『暗号クラブ1 ガイコツ屋敷と秘密のカギ』ためし読み(2/5)

小学生から読める、本格暗号ミステリーの決定版!

児童書の翻訳ミステリー『暗号クラブ』は、本編全20巻、現在は続編シリーズ『スパイ暗号クラブ』が3巻まで発売中。世界累計100万部超え、日本でも81万部売れている大人気「暗号解読」小説です。

「暗号を解きながら楽しく読み進められる」「小学生がドハマりする」「解読作業が楽しい」と、小学生やその保護者のみなさんから大人気!

「"体験型なぞ解き"ミステリーって?」
「一体どんなお話なの?」

気になるみなさんのため、ヨメルバでは1巻冒頭のためし読みを公開!
お子さまが小説好き・ミステリー好きに育つことまちがいなしな傑作シリーズを、どうぞおたのしみください!


目次



第1章 ゾンビみたいな手
第2章 火事発生
第3章 秘密のメッセージ

第4章 暗号メモ

第5章 とどけられた脅迫状

人物紹介



 第2章 火事発生


 次の日の早朝、めざまし時計が鳴るずっと前の時刻。コーディはいやな夢を見ていた。謎の暗号が解読できなくて、ウンウンうなされる夢だ。とちゅうでかん高いサイレンの音が聞こえて、コーディは目をさました。

 コーディは窓べにかけよった。空はまだ暗いのに、二台の消防車の回転灯が、通りを赤く照らしている。

(ガイコツじいさんの家が火事だ!)

 ふいに、部屋のドアをドンドンとたたく音が聞こえた。

「コーディ!」

 ママが、ドアを開けて顔を出す。

「よかった、起きてたのね。おねがい、タナを起こして服を着せて、保育園に行く用意をさせておいてちょうだい。ママは、向かいの現場に行ってくるから」

 ママが階段を下りていく。かたベルトにつけたトランシーバーから、ガーガーと雑音が聞こえた。

 ママは警察官だから、真夜中や早朝にしょっちゅう、緊急の呼びだしを受ける。そういうときは、同じ市内に住むパパがかけつけるまでのあいだ、コーディがタナの世話をすることになっている。これは、「離婚後」にふえためんどうの一つだ。ママがバークレー市で警察官の仕事を見つけたので、コーディとタナはママといっしょに、カリフォルニア州ゴールド郡のジェイムズタウンから引っこしてきた。その一か月後、弁護士をしているパパも、コーディとタナのそばに住むために、バークレーのマンションに引っこしてきた。

 部屋の窓から、うねる煙とたけりくるう炎が見える。二台の消防車から、消防隊員たちが五、六人、とびだしてきた。ホースからすごいいきおいで水が出てきて、屋根に向けてカーブを描く。煙の雲が、うす暗い空にモクモクと立ちのぼる。

 消防士の一人が、げんかんのドアをたたきわった。入り口から煙がワッと出てくる。防火服にヘルメット、マスク、手ぶくろで身をおおった消防士たちが三人、家の中にすがたを消した。救急車が到着し、救急隊員が四人、外に走りでる。

 コーディは、その場から動くこともできずに、じっと消火のようすを見つめていた。

 紺色の警官服を着たママが、道路のまん中に立って、交通整理をしているのが見える。ママは、集まってきた見物人たちに、後ろに下がっているよう、指示を出している。少しして、ガイコツじいさんの家のげんかんから、消防士たちが出てきた。そのうちの一人は、ぐったりしたパジャマすがたの男の人を、かたにかついでいる。かけつけた救急隊員たちが、パジャマのけが人を担架にそっとうつし、灰だらけの顔に、酸素マスクをかぶせた。

(ガイコツじいさん! 生きてるの?)

 一瞬だったのでよく見えなかったけれど、意識がないようだった。救急隊員たちが、担架を救急車に運びいれた。サイレンを鳴らし、赤い回転灯を光らせながら、救急車は猛スピードで走り去った。たった一人でくらしていたおじいさんのことを、コーディはかわいそうに思った。

(ガイコツじいさんのうわさはいろいろ聞くけれど、どれが本当で、どれがうそなんだろう。めんどうをみてくれる親せきはいるのかな……)

 ふとわれに返ったコーディは、用事を思い出してタナの部屋に走った。

 妹をやさしくゆり起こす。

「タナ、起きて」

 タナは耳が聞こえないから、消防車のサイレンも聞こえていない。とうぜん、外で起こっていることは何も知らない。コーディは手話で、タナにつたえた。




 タナがピンクのTシャツとパーカ、青いサロペットを着て、スニーカーをはくのを手つだう。それから、コーディも急いで着がえた。ジーンズに赤いTシャツ、上から同じ色のパーカをはおる。

(準備完了。ちょっとくらい、外を見に行ってもいいよね?)

 コーディはタナの手を引いて階段を下り、げんかんポーチまで出た。予想どおり、クインが自宅の前庭にいる。クインは、となりの家の火事さわぎを、じーっと見まもっていた。

 火はもう、ほとんど消えていた。コーディはタナと手をつないで道路をわたり、クインのいるところまで歩いていった。前庭には、クインの両親もいた。二人とも、名門カリフォルニア大学バークレー校の数学教授なのだそうだ。

 火がおさまったのを見て安心したのか、ガイコツじいさんの家の前に集まった見物人たちが、それぞれの自宅にもどっていく。

「ねえクイン、どうして火事になったのか、知ってる?」

 コーディが聞くと、クインはかたをすくめた。

「さあ。サイレンの音が聞こえたから窓の外を見たら、となりの家が燃えてたんだ。そのあと救急車が来て、ガイコツじいさんが運びだされて……」

 コーディは火事のようすを思い出し、顔をゆがめた。

「あの二人組は、どこに行ったのかしら?」

「あれから見かけてないよ」

 クインの両親が、げんかんのドアを開けながら、声をかけた。

「もう中に入りなさい」

 クインが後ろをちらっとふり返る。

「じゃ、またな。メンバーの招集、かけとくよ。あとで秘密のポスト、確認しといて」

 コーディはうなずいた。と、警官服のママがこわい顔で歩いてくるのが見えた。

「コーディ、タナと家にもどりなさい! 外に出たらだめでしょう」

 コーディは急いで通りをわたった。家のドアの前で、最後にもう一度だけ、黒くススけたガイコツじいさんの家をふり返る。そのとき、じいさんの家のそばで、知っている顔がこちらを見ているのに気づいた。

(おジャマじゃマットだ! マットの家はこの通りじゃないのに、はるばるこんなところまで来て、何をやってるんだろう? どうせ、おもしろがって見に来たに決まってるけどね)

 人の不幸やトラブルを見るのが、マットの趣味なのだ。ママは、マットにはなるべく近づかないほうがいいわよ、と言う。これまでに二度ほど、通報を受けて、マットの家に注意をしに行ったことがあるからだ。マットが近所の家の窓目がけて、何度もボールを投げつけたときと、ゴミ箱の中身を道路にまきちらしたときだ。

(でも、近づかないほうがいいと言われたって、ムリなのよね。マットは同じクラスで、おまけにわたしの前の席なんだから)

 しばらくして、パパが来た。タナを保育園まで送っていくためだ。コーディはハグとキスでむかえてから、明け方の火事のことを話した。そうこうしているうちに学校に行く時間が近くなったので、リュックを取りに二階に上がった。頭の中は、わからないことだらけだ。

(どうして火事が起こったんだろう? ガイコツじいさんは無事なの? きのうの夜、おじいさんの家にいた人たちは、だれだったのかな? そして、あの二人は今、どこにいるんだろう?)

 コーディは立ちどまり、焼けてしまった向かいの家を見つめた。二階の窓に目をやると、焼けのこったカーテンが、引かれたままになっている。

 ふと、あるものに気づいて、コーディは鳥肌が立った。

 窓ガラスに、黒マジックで絵が描いてある。

 それは、四人の棒人間のような絵だった。




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著者: ペニー・ワーナー 翻訳: 番 由美子 イラスト: ヒョーゴノスケ

定価
935円(本体850円+税)
発売日
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四六判
ISBN
9784040664309

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定価
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サイズ
四六判
ISBN
9784041121498

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