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怪盗レッド スペシャル第14話 白里奏の部活体験!?

つばさ文庫の人気シリーズ「怪盗レッド」の最新刊
怪盗レッド22 家族の絆は、うばえない☆の巻』が12月14日に発売!

今回は、22巻にもチラッと登場する奏(かなで)が、スペシャルゲスト。
アスカのことがだーいすきな奏は、ちょっとした悩みがあるようで……。
アスカたちの楽しい学園生活がかいま見える、お話です。

    

 わたし――白里奏(しらさと・かなで)には、最近悩んでいることがある。
 なにに? って。
 わたしは放課後に、なにをしたらいいのか?――ってことなんだ。

 少し前まで、わたしには大事な「やるべきこと」があった。
 悪いやつらに盗まれた、おじいちゃんやおばあちゃんの美術品を、とりもどすこと。
 ずっと、1人で追いかけていたから、時間をもてあますなんてことはなかった。
 でも、あの怪盗レッドや、お兄ちゃんのおかげもあって、美術品をぶじに見つけることができた。
 今はまだ、美術品は警察にあるけど、いずれ帰ってくることはわかってる。
 すごくうれしい! 
 ……だけど、わたしの「やるべきこと」が、なくなっちゃったんだよね。
 いいことなんだけど、長いこと、それを目的にして暮らしてたから……。
 最近、胸にぽっかり穴が空いたようで。
 いまいち、なにをするにも、気分がのらない。
 でも、だからって、ぼ~っとすごしているのも、もったいないよね!

 というわけで、部活をさがしてみようかな、と思いついたんだ。
 まわりを見まわすと、クラスメイトや友だちは、放課後、楽しそうに部活をしているし。
 ずっと帰宅部だったアスカ先輩も、演劇部に正式に入部したしね!
 さっそく、わたしも!
 と、部活の一覧が書かれたプリントを職員室でもらってきたのはいいんだけど……。
 ………………多い……。
 部活の名前が、ずらりとならんでいる。
 運動部と文化部をあわせて、50個くらいありそう。
 春が丘学園は、生徒の自主性を大事にしている。
 中学校を選ぶときに、そこも気に入ったところだったっけ。
 同好会や、高等部と合同で活動してる部もある。
 放課後、これだけの部活がいっせいに活動していたら、すごいことになるはずだから、きっと、活動スタイルもいろいろなんだろうな。
 それにしても、こんなにあると、逆に、どれか選ぶのも大変だよね。
 1つ1つ見学するだけで時間がかかるし……。
 しかも今は、入部するには中途半端な、9月。
 そこで、わたしは考えたんだ。

「佐緒里(さおり)、志野(しの)、お願いっ! 2人の入ってる部活に、体験入部させてもらえないかな?」

 わたしは教室で、同じクラスのなかよし、片倉(かたくら)佐緒里と戸崎(とざき)志穂にむかって、両手をあわせる。
「えーっ? いきなり、どうしたの?」
 佐緒里が、おどろいた顔できいてくる。
 佐緒里は、髪をサイドのうしろでおだんごにしていて、制服もきちっと校則通りにきれいに、着こなしている。
 テキパキとしてて、いつも判断力のある子だ。
「あのね、わたし、部活に入ろうと思ったんだけど、どれにしたらいいか、見当もつかなくてさ。とっかかりがほしいなと思って。2人とも部活に入ってるでしょ?」
「わたしは部活っていうか、生徒会だよ? しかも役員じゃなくて、ただの委員だし」
 佐緒里が答える。
 生徒会には、役員だけだと人数が足りない仕事を手伝う、生徒会委員というのがある。
 委員になるには、けっこうハードルが高いらしいんだけど、役員の推薦があるとなれるんだって。
 佐緒里は、その生徒会委員としてがんばっている。
 来年は、生徒会役員になりたいらしい。
 いっそ生徒会長を目指すんじゃないの? と思ったんだけど、現生徒会長である氷室実咲(ひむろ・みさき)先輩にあこがれていて、近くで手伝いたいんだって。
 一方、志野は。
「わたしは……家庭科部だよ?」
 遠慮がちに言う。
 志野は、きれいな黒髪をハーフアップにしている。
 おとなしそうに見えるけれど、芯がしっかりしていて、言うべきことはちゃんと言える子なんだ。
 そんな志野は、お裁縫が趣味で、部活のない日でも、家でちょこちょこいろんなものを作るのが好きなんだって。
 わたしが裁縫をするっていうイメージはないだろうから、志野が疑問に思うのも、しかたがない。
 でも、一応、ソーイングセットくらい、わたしだって持ち歩いているんだから。
「うん、知ってるよ。生徒会も家庭科部も、いちおう興味はあるから、体験してみたいんだ」
「そういうことなら、会長に話してみる」
「わたしも、部長にお願いしてみるよ」
 佐緒里と志野が、うなずいてくれて、わたしはほっとした。
 充実した中学生生活を目指して、まずは一歩めだ!

     

「奏、今日これから、あいてる?」
 放課後、佐緒里に声をかけられた。
「あいてるけど、どうしたの?」
「生徒会の体験の話。さっそく会長に話してみたら、今日よかったらおいでよって」
「ほんと? 行く行く!」
 わたしは、よろこんで席から立ちあがる。
 佐緒里といっしょに、わたしは生徒会室にむかう。
 よく考えると、会長の氷室実咲さんとは、アスカ先輩の教室で何度も会ってるけど、生徒会室には行ったことがない。
「奏って、氷室会長と知り合いでしょ。直接たのめばよかったんじゃない?」
 佐緒里が、不思議そうにきいてくる。
「ん~。知り合いっていうか……あれは、わたしがしかられてるだけだからなぁ」
 アスカ先輩の教室にいくときって、いつも気持ちがウキウキしちゃって。
 気がついたら、ろう下を走ってたりするんだよね。
 それを毎回、会長に注意されちゃうんだ。
「もしかしてわたし、印象悪い!?」
 今になって、ちょっと心配になってきた。
 すると、佐緒里がくすくす笑った。
「そんなことないと思うよ。奏の話をしたら、興味をもってもらえるのは大歓迎って言ってたし」
 わたしは、むねをなでおろす。
 そのまま、生徒会室の前にやってくる。
 教室と同じドアに、【生徒会室】と書かれたプレートがかかっている。
 ちょっと緊張するなぁ。
   コンコン
「生徒会委員の片倉です」
 佐緒里が、ノックして声をかける。
「どうぞ」
 中から返事があって、佐緒里がドアを開けた。
 へえぇ……。
 わたしは生徒会室の中に入ると、思わず見まわす。
 部屋の広さは、クラスでつかう教室の半分ぐらい。
 壁ぎわには棚がずらりとならんでいて、書類や本がぎっしり置かれている。
 部屋の中央には、横机がならんでいて、何人かが作業している。
 窓側の奥には、実咲会長のすがたもある。
 なんとなく、生徒会長って特別豪華な机の前に座ってるのかな?なんて思っていたけど、ほかの役員と変わらない、ふつうの机だった。
「白里さん、生徒会へようこそ。佐緒里さんは、今日もよろしくね」
 実咲会長が顔をあげて、ほほ笑む。
「はい! 今日はよろしくお願いしますっ!」
 生徒会のほかの人たちが、びっくりしたようにわたしを見る。
「ご、ごめんなさい……」
 ついはりきりすぎて、声が大きくなっちゃった。
 実咲会長が、くすくす笑いながら、
「今日は生徒会への体験入会ってことだったよね?」
「はい。生徒会がどんな仕事をしているのか、よく知らないので……」
 いろいろ、生徒のために動いているんだろうってことは、わかるんだけどね。
 あと、学校行事の運営とか、部費を決めたりとか?
「今日は、佐緒里さんといっしょに、校内を見てまわってくれるかな? 場所は、ここにまとめてあるから」
 実咲会長から、1枚のプリントをわたされる。
 それは学校の平面図で、その上に手書きで、たくさんの丸と文字が書かれていた。
「これは?」
「生徒会に寄せられた苦情とか要望を元にした、チェック場所だよ。校舎の一部がこわれているとか、使いにくいとかね。そういう声を、ぬき出してまとめてあるの」
「こんなにあるんですか……」
 プリントには、30箇所ぐらいマークがある。
「これでも、しぼってあるんだよ。校舎についての要望や苦情以外は、べつにまとめてるし」
 実咲会長は、そう言って苦笑する。
「なにをチェックすればいいかは、佐緒里さんが知っているから。よろしくね」
 わたしと佐緒里は、さっそく生徒会室を出て、校内を見てまわることにした。
「生徒会って、こんなことまでするんだね」
 わたしは校舎を歩きながら、佐緒里に言う。
「よりよい学校生活を送れるように、生徒も自主的に行動する――っていうのが、うちの生徒会のポリシーだからね!」
「えと、そのポリシーって、今の高等部3年生の清瀬理央(きよせ・りお)先輩が、中等部の生徒会長だったときに、できたんだっけ?」
「そう。『伝説の生徒会』ってよばれてるんだよ。その人たちのポリシーが、今も受けつがれてるってわけ」
 佐緒里が、うれしそうに言う。
 生徒会の一員であるっていうことが、ほこらしそう。
 なんだか、いいなあ。
「それで、このリストって確認してどうするの?」
「それは、実際に現場を見たほうが、わかりやすいかも。ほら、そこが最初の場所だから」
 佐緒里は言って、目で先をしめす。
 そこは、校舎の2階に上がる東階段。
 生徒の通りは、そこまで多くない場所だ。
 佐緒里が、階段を1段ずつチェックしていく。
「もしかして、階段を全部チェックするの?」
「そうだよ。生徒会に寄せられたのは『階段にぐらぐらしてるところがある』ってコメントだけだったらしいから。それで、現場を確認して、壊れてたりケガの原因になりそうなところがあったら、これで写真をとっていくの」
 佐緒里はそう言って、小さなデジタルカメラをとりだす。
 わたしも佐緒里とならんで、階段を下りながら、1段ずつチェックする。
「危ないと思う場所には、『危険』っていう張り紙をしておくの。それを報告したら、生徒会役員がその場にきて、確認をして、それから学園側に伝えるんだって」
「けっこう、手間がかかるんだね」
「伝えるなら、生徒会のほうが気軽だし頼りになるって思う生徒が多いみたい。それに、生徒会が優先順位をつけてから伝えると、学園もすばやく対応してくれるんだって」
「なるほど」
 そういったコメントを確認整理して学園に報告するのが、生徒会なんだ。
 ……あっ。
「もしかして『ぐらぐらしてる』って、これかな?」
 階段の先についているすべり止めが、はがれている場所がある。
 はがれたゴム製のすべり止めが、ぶらぶらとして、たしかに危ない。
「これは、張り紙をしておこう」
 佐緒里が言って、デジタルカメラで記録のための写真をとる。
 それから手に持っていたバッグから、紙をとりだす。
 紙にペンで【すべり止めがはがれているため、階段の上り下り注意 生徒会】と書いて、階段の上の壁と下の壁に張りつける。
 これなら、階段を上る人も、下りていく人も、気づくはずだ。
「ここはいそいで直したほうがいいね。そういうところには、『緊急』って書いておくの」
 佐緒里は、プリントの【校舎2階東階段 ぐらぐらしている】という書き込みの横に『緊急』と赤いペンでつけ足す。
「さあ、次に行こう」
 佐緒里が、また先に立って歩きだした。

    ***

「終わったぁ……」
 1時間半ほどかけて、プリントに書かれた場所を、すべてまわってきた。
 マークは30箇所ぐらいあったけど、【理科室の前のろう下の壁 はがれてる】みたいに、すぐ確認できるものもあったから、なんとか下校時刻までに全部チェックすることができた。
「「ただいま帰りました」」
 生徒会室にもどって、わたしと佐緒里は、そろってあいさつする。
 生徒会室には、実咲会長と副会長の男子の先輩、それに2人ほど先輩たちが残っていた。
「おかえり。どうだった?」
 実咲会長がきいてくる。
「これがチェックしてきた結果です。写真もとってきました」
 佐緒里が、プリントとデジタルカメラを、実咲会長にわたす。
「なるほど。2階東階段と、3階の窓ガラスのヒビは、早い対応が必要だね」
「はい」
「けっこう危ないなって、思いました」
 佐緒里とわたしは、うなずく。
「中小路(なかこうじ)副会長、この2箇所の確認、お願いしてもいいですか?」
「そうだな。下校時刻前にすませておく」
 副会長とよばれた先輩は、プリントとデジタルカメラを受けとると、生徒会室を出ていく。
 すぐに確認してくれるみたい。
 たのもしいな、生徒会って。
「ありがとう。2人が今日仕事をしてくれたおかげで、だれかがケガする前に対応できそうよ。……それで白里さん。生徒会の仕事を体験してみて、どうだった?」
 実咲会長が、きいてくる。
 わたしは、ピンとせなかを伸ばした。
「え~と……すごくやりがいがありました。学園のみんなの役にたってるなあって」
「そっか。白里さんなら、歓迎するよ。佐緒里さんと同じ、生徒会委員という立場になるけど」
「そうですか……」
 実咲会長にそう言ってもらえて、うれしいんだけど……。
「でも、ピンとこなかった――かな?」
「えっ?」
 実咲会長に言われて、顔を上げる。
「そんな顔をしてるから」
「生徒会の仕事がいやだとか、そういうんじゃないんです!」
 わたしは、あわてて言う。
 やりがいがあったし、楽しかった……って言うとちがうのかもしれないけど、生徒会の仕事っておもしろいな、とも思ったもん。でも……。
「わかってるよ。フィーリングみたいなものだよね。今日、手伝ってくれただけでも助かったよ。わたしとしては、白里さんがきてくれればうれしいけど。すぐに結論を出さなくていいよ。ほかにも体験に行ってみるんでしょ?」
「は、はい。家庭科部にも行く予定です」
「そっか。白里さんが熱中できそうな部活に、出会えるといいね」
 そう言って、実咲先輩がにこっと笑ってくれる。
「はい! ありがとうございました」
 わたしはお礼を言って、佐緒里といっしょに生徒会室を出る。
 いっしょに歩きながら、ちらりと佐緒里を見る。
「……ごめんね。せっかく体験できるようにしてくれたのに、すぐに決められなくて」
 わたしは、佐緒里に、あやまる。
「気をつかわなくていいよ。奏って変なところを気にするよね。いつもは、突撃ー!って感じなのに」
 佐緒里が笑っている。
「なにそれ。わたしって、そんなイメージ?」
「アスカ先輩にはいつも、突撃してるでしょ」
「うっ……まあそうかもだけど」
 反論できない。
「でも、気がむいたら生徒会に入ってくれるとうれしいな。もちろん、無理はしないでいいけどね」
「うん、ありがと」
 そうして、わたしの生徒会の体験入会は終わった。

 


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