KADOKAWA Group

News

お知らせ

第2回 編集部直撃インタビュー 前編


第2回では編集部直撃インタビュー・前編をお届け!
最新作『りすのおふろやさん』の制作秘話、原画を見るときに注目してほしいポイントをたっぷり伺いました。



改行

――『りすのおふろやさん』で一番お気に入りのページがあれば教えてください!

きょうりゅうさんをみんなで洗っているページが好きです。泡でできたかたつむりなど、ラフから原画にする段階で色々と要素を増やしたので、他のページよりも少し時間がかかりました。



改行

――1ページあたり、どれくらいの時間をかけて描くのでしょうか?

『りすのおふろやさん』は全ページを1か月で描きました。単純計算では2日で1枚のペースですね。

――最初のページから順番に描いていくのですか?

1枚目から順番に「仕上げていった」、という具合です。砂の下地をいっぺんに作ってしまって、全部を床に並べて雰囲気を見ながら描いていきます。絵本をめくったときのイメージを膨らませて「ここにもうちょっと湯気を足そう」などと考えながら少しずつ塗り重ねました。湯気の印象も、ページによって少しずつ違う仕上がりにしたかったんですよ。

――たしかに、湯気のムラがページごとに微妙に違って表現されているのが分かります。

肌触りの良さそうなタオルの質感や、めくれたときの「ひらっ」とした感じをどの程度出すかも考えながら、慎重に描きました。もっと陰影をつけてリアルなタッチにすることもできるけど、そうすると生々しくなっちゃうから。

――リアルとファンタジーの絶妙なバランスが取られているように思えます。

そうですね。動物たちがゆぶねに入るときには、マナーを守ってタオルを頭の上に載せているところなんかも。笑
それから、「ばっちゃ~ん」となったページで、みんなが溺れないように助け合っているところもポイントです。きょうりゅうさんの水しぶきがあまりに大きいので、その跳ね返りで、ゆぶねのふちに立っていたりすさんが、反対側の端っこまで飛ばされてしまっているんですね。



改行

――はじめて知りました!まだ『りすのおふろやさん』に知られざる秘密があったとは。

りすさんは宙に飛ばされた時、ぎりぎりひつじさんのタオルをつかんで助かったんです。笑
ラフの段階では、しろくまくんのタオルと手をつなぐようにしたり、色々なパターンを作っていました。でも、りすさんは軽いから一番遠くまで飛ばされるだろうなと思って、この配置に落ち着きました。

――『りすのおふろやさん』の製作で、大変だったことはありますか?

僕の絵は砂の上に描くのでざらざらした質感になるのですが、ざらざらはある意味で「固そう」という印象を与えてしまうんですね。その中で湯気や泡の「ふわふわ感」を出すのが苦労しました。ざらざらとふわふわは紙一重なんです。

――たなかさんの絵を少し離れて見ると、砂の粒の色同士がまじりあって柔らかく見えます。その効果が「ふわふわ感」として生かされているように思いました。「きれいになったらゆぶねへどうぞ」「ばっちゃ~ん」のページは、特に湯気を意識して描かれたようですが。

そうですね。一回描いた絵の上に白い絵具で湯気を足していくので、けっこう勇気がいるんですよ。はじめは濃いめに動物を描いて、その上に湯気を重ねて薄く透けるようにしています。下の色をつぶさないで表面の砂にだけ白がつくように、ちょっと特殊な塗り方をしました。それから、どの範囲に湯気をかけるかも考えました。動物たちの顔の部分はちゃんと見え、湯気で隠れないようにしています。



改行

――シャボン玉の表現も、透け感や反射がリアルですよね。

タオルと一緒で、「絵本らしい印象をあたえつつ、リアルなシャボン玉に見える」という案配を目指して描きました。近くの動物の色なども意識しながら描いているので、ひとつずつ違う光り方をしているんですよ。でも、あまり写実的にしすぎるのも絵本の楽しみとは違うので、絵本を開いた時、違和感がなく自然に受け取れるように心がけています。

――0歳向けの『ねむねむごろん』『どこどこかわいい』に比べて、『りすのおふろやさん』は対象年齢が少し上ということも、陰影や質感を出している理由ですか?

はい。きょうりゅうさんの登場シーンも、どしんとしたボリューム感を出したくて陰影を強めに描きました。「すごいのがきたぞ!」と思ってほしくて。足の汚れもしっかり描きました。

――どの動物も、おふろやさんに来るときは少しずつ汚れていますね。

汚くなりすぎないように、というのは意識しました。子どもは顔まで汚して帰ってくることもあるけれど、でも不衛生には見えないように・・・お風呂の絵本なので。笑
全体として清潔感はありつつ、ちょっと汚れちゃったね、という具合になるように調整しました。

 



 

『りすのおふろやさん』の生原画が見られる貴重なチャンス!
たなかしんの旅と絵本の原画展」は12月6日(月)まで開催中。会場では『りすのおふろやさん』を購入できるほか、作家の在廊中にサイン会も開催されます。
お近くの方はぜひ足を運んでくださいね。

最終回(12月5日公開)の記事では、インタビュー後半の模様をお届けします。たなかしんさんが展示にこめた思いや、この先の展望について伺いました。

「たなかしんの旅と絵本の原画展」
場所:阪急うめだ本店 9階 阪急うめだギャラリー
日時:2021年12月1日(水)~ 2021年12月6日(月)
入場料:無料 

 


作・絵:たなかしん

定価
1,320円(本体1,200円+税)
発売日
ISBN
9784041118719

紙の本を買う

電子書籍を買う


この記事をシェアする

特集

ページトップへ戻る