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【レビュー】クリスマスの夜、ぽつんと置かれたぼうしくんのところへ動物たちがやってきて……。冬のプレゼントにぴったりの心あたたまる絵本『ぼうしくんのクリスマスプレゼント』

心やさしいぼうしくん

ぱっちりとした目がかわいい、赤いぼうしくん。「きょうは クリスマスなのに、あわてんぼうの だれかさんが ぼくを おとして いっちゃった。」ですって。きょろきょろ周りを見回しているように見えます。
そこへ「えーん えーん」とうさぎが泣きながらやってきて……「きょうは クリスマスなのに ひとりぼっち。だれも プレゼントを くれないよ。」と言います。

あたりは真っ暗で、もう夜。空には月や星が輝き、1日が終わろうとしているのに、ひとりぼっちで誰からもプレゼントをもらえない……。そんなせつないことはありませんよね。涙が出ちゃう気持ちもわかります。ぼうしくんは思わずこう言います。
「うさぎさん なかないで。クリスマスプレゼントに ぼくの ボンボンかざりを あげるよ。」



次へページをめくると……うさぎさんのしっぽに、フリフリ、モコモコのボンボンがざりが!
ぼうしくんからプレゼントをもらったうさぎさんは嬉しそう。でもぼうしくんからは、ボンボンかざりがなくなってしまいました。



次にやってきたのはくまさん。くまさんも泣いています。「がうー がうー ひとりぼっちは さみしいよ。プレゼントを くれるひとも いないんだ。」
ぼうしくんはまた、自分の体の一部を、くまさんへのプレゼントにします。



絵本を開いてまず伝わってくるのは、クリスマスの夜に誰からもプレゼントをもらえない悲しさ。だからこそ、ぼうしくんがプレゼントをあげると、動物たちは心が弾むような笑顔としぐさで「ありがとう」と言います。
自分の体をあげるなんて、なんと心やさしいぼうしくんでしょう。悲しむ動物たちに、ちょっぴりドキドキして心配になるから、よけいに読者にはぼうしくんのやさしさが伝わってくるんですね。読みながら、心がほかほかとあたたかくなります。

けれども小さなぼうしくんがあげられるものには限りがあり、ひとつもあげるものがなくなったとき……、あの、赤いぼうしくんの持ち主があらわれます。「あわてんぼうのだれかさん」……みなさんにはもうわかりますよね? そう、サンタさんです!

ぼうしくんの体を、何回も確認する子どもたち

サンタさんが見つけてくれるまでの間、プレゼントをあげつづけたために、体が減っていくぼうしくん。わが家の4歳の息子は、だんだん変わりゆくぼうしくんの姿に目が吸い寄せられていました。ぼうしくんが、自らの赤い体をあげて目だけになっちゃうシーンはびっくり! もらったのは誰で、動物のどんな一部になったのか、ぜひ絵本を見てみてくださいね。



けなげにも、とうとう目だけになったぼうしくんはかわいそうで、でも何だか変てこでユーモラスで、くすっと笑いたくなっちゃいます。
とにかく子どもは、ぼうしくんの体から一部が消え、動物の体へ移動するのがおもしろくてたまらないらしく、「もういっかい見せて」と何度も前のページにもどり、ページをめくっては「ぼうしくんのここが、これになったんだよ、ね!」と確認します。

最後はサンタさんやかわいいトナカイたちと「シャン シャン シャン シャン」とそりに乗って空へ舞い上がり「メリークリスマス!」とハッピーエンド。
作者の新井洋行さんにはたくさんのロングセラーがありますが、こんなふうにストーリーの余韻がのこる、心あたたまるクリスマス絵本は初めてかも。

新井さんは作品によっていろんな手法で絵を描かれますが、『ぼうしくんのクリスマスプレゼント』は切り絵の手作業で作られたそうなんです。手描きで描かれた絵の具のテクスチャーがふんだんに味わえる一方、ハサミで切り取られたぱりっとした線、あざやかな色のコントラストが華やかでおしゃれ! 登場人物たちが絵から浮き上がって動き出しそうなくらい、生き生きとしています。

黒々とした夜の色のなかに、あたたかさがあり、みんなひとりぼっちじゃないよと誰かに伝えたくなる……そんな絵本。大切な友達や家族へのクリスマスプレゼントにもぴったりの、とってもかわいらしい絵本です。

本の詳細はコチラ!


作・絵:新井 洋行

定価
本体1100円(税別)
発売日
サイズ
その他
ISBN
9784041101667

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