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【レビュー】保育園で読んだら恐竜遊びが大流行! オノマトペが楽しい『まいごのたまご』

 僕は認可保育園で園長として勤務し、保育園でも『まいごのたまご』を読み聞かせしていますが、2、3、4、5歳に大人気の絵本です。 読むたびに、新しい虫や植物を発見して楽しんでいます。この本を読んで以来、子どもたちのなかで恐竜が大流行! 女の子も「この恐竜は〇〇だね」と絵本を読みながら興味を持っています。



 風に吹かれて巣からころがり落ちたまいごの卵が、お母さんをさがしはじめるところからお話が始まります。ティラノサウルス、トリケラトプス、ブラキオサウルス、プテラノドン……と子どもが大好きな恐竜たちが、続々と登場! 「次は何の恐竜がきたかな?」とページをめくる度にドキドキ、ワクワクが膨らみます。それぞれの恐竜の特徴が子どもにもわかりやすく紹介されており、はじめての恐竜ブックとしてもおすすめ絵本です!   
 絵本を読んだ後に、恐竜の世界のイメージし恐竜になりきって楽しむ"恐竜鬼ごっこ"をしても楽しめること間違いナシ! 「プテラノドンが追いかけるぞ、ギャオー」と言いながら手を広げ羽ばたかせたように、恐竜(※編集部注:プテラノドンは正しくは翼竜ですが、ここでは恐竜として扱います)になりきって鬼ごっこを楽しむ姿もありました。

 



 また、絵本を読んだ後に恐竜図鑑で調べてみると、子どもたちの「調べる力」「探求心」を刺激し、よりお子さんが恐竜の世界を楽しめますよ。また粘土を用意すると、図鑑を見ながら粘土で恐竜を作ったり、遊びの世界が広がっていきます。平面の絵本の世界から、立体の粘土遊びに発展し、五感を使って楽しむ遊びに発展します。

 「ころころ」「ぽーん」「どしんどしん」といったオノマトペ※がたくさん出てくるのも、楽しいポイントです。擬音語・擬態語を使うことで、お話が生き生きと進み、「つぎは何がくるのかな」と子どもたちのワクワクが膨らみます。「ころころ ころころ ころがって」「いわに ぶつかり、ぽーーーんとはねて、ようやく、ストンととまりました」と、リズムのいい訳文で、思わず口にしたくなるような"心地いい音"で表現されています。



 この本を訳したのは、夜の路上で、大人に絵本を読み始めた「聞かせ屋。けいたろう」さん。革のトランクに絵本を詰め込んで、親子読み聞かせ、絵本講座、保育者研修会で全国を駆け巡って活躍され、絵本の文章や翻訳も手がけられています。「聞かせ屋。けいたろう」さんだからこそ拾い集めることができた、リアルな声や反応を、文章に反映させた翻訳も絵本の魅力の一つです。たまごを巣に戻すために恐竜たちが山を登る場面で、「たまごが まいごだ、うんとこしょ えっちら おっちら どっこいしょ」と訳したのは、とても面白い訳になっています。韻を踏み、繰り返しがあり、「うんとこしょどっこいしょ」や「えっちらおっちら」の日本語のおもしろさが生きています。読み聞かせの時には、思わず子どもたちとも笑顔で口ずさんでいました。
 もともとアメリカで路上読み聞かせライブをしていたこともあり、あえて、フォーマルな訳にとらわれず、より自由にインスピレーションを働かせて訳されていると感じられます。子どもも大人も声に出して読みやすい、絵本の文章に訳されています。けいたろうさんが非常勤で働いている保育園の3・4・5歳クラスで実際に読み、子どもたちの前で読んでみると「ここは長いな」「意味が伝わりにくいな」とわかるので、反応を見ながら何度も修正して、より読みやすい訳文を作りあげていったとのことです。

 保育園で僕が読んだときは、2歳児クラスから楽しめる内容となっていました。絵本にオノマトペがたくさん出てくること、子どもたちの関心のある恐竜の絵本ということ、次の展開に期待が膨らむ要素があることから、楽しめたのではないかと感じています。特に普段絵本をあまり親しまない、活発で部屋の中を駆け回る男の子が、じっくり集中して繰り返し読む姿も見られましたし、他の先生たちも「あの絵本、子どもたちから大人気でした」と大絶賛でした。大きくかっこいい恐竜が登場する話が、活発な男の子の興味を引き付けたのではないかと思います。僕が読み聞かせした後は、自分で「もういっかい読む」といって絵本を手に取って繰り返し見入ってました。
 子どもが次の場面に期待を持てる構成、オノマトペによる読みやすいリズム感、「次は〇〇恐竜かな!」とお子さんの言葉を引き出す構成で、読みやすい絵本なので、普段絵本の読み聞かせに慣れていない、どうやって読んだらいいのかなと迷っている親御さん、お子さんにどう関わったらいいかわからない親御さんにも、ぜひおすすめの一冊です。この絵本をき
っかけにお子さんとたくさんコミュニケーションを取るきっかけにしていただけたらと思います。

※オノマトペ=擬態語(デレデレ、ニヤニヤなど)や擬音語(ドカーン、サラサラなど)のこと 

大竹 龍
 


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