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【レビュー】0歳0か月から楽しめる!あかちゃんがよく見てくれる絵本『かお かお ばあ』

 筆者は、言語聴覚士※という職業柄、言葉の発達に遅れや偏りがあるお子さんの療育の一環として一緒に絵本を読む機会が多く、この作品も何人かのお子さんと楽しませていただいた。
 また、生まれたばかりの知人の子どもとも一緒に読ませてもらったのだが、この作品に対して間違いなく言えることは、子ども達が、かなり“よく見てくれる”ということだ。お子さんが“よく見てくれる”ということは、一緒に絵本を読んでいる大人の方が、ことばを掛けてあげるタイミングも分かり易いということでもある。お子さんの視線が絵本のページに向き、「あ、いま見てる!」という時に、「おめめ だね~」や「お顔、出てきたね!」などのことば掛けをしてくださることで、共感も生まれやすく、ことばを覚えることに繋がっていくだろう。



 近年、乳児期のあかちゃんからでも絵本を楽しむことができる、ということが広く認知されるようになり、“あかちゃん絵本”と呼ばれるものも数多く出版されるようになった。選択肢が増えるというのは良いことだが、書店に沢山並んだあかちゃん絵本の中から、どの絵本を選べば良いのか?と、迷われている親御さんの姿を見かけることもしばしばあったりする。もちろん、お好きな絵本を選んでいただければ良いと思うのだが、あかちゃんと一緒に絵本を楽しむに当たって、“あかちゃんがよく見てくれる絵本”というのは、当然ながら選ぶ際にとても大切な要素だ。
 その点に関して言うと、この『かお かお ばあ』は申し分がないだろう。あかちゃんが顔を認知する能力の発達に関する研究に基づいて作られており、実験の結果から、あかちゃんに見えやすい色使いやコントラストのデザインが取り入れられているのだ。



 『かお かお ばあ』の作り手は、共に心理学分野の研究に携わられている大学教授であり、ご夫婦でいらっしゃる山口真美さん(中央大学文学部心理学研究室教授)と、金沢創さん(日本女子大学人間社会学部心理学科教授)。つまり、第一線の研究職の方によって作られた絵本なのである。
 絵を担当されたのは、教育番組のアニメーション制作もされている作家のミスミヨシコさん。本作品では、切り絵を使った表現を用いられており、印刷の際には、目や鼻といったパーツの縁に自然な影がつくため立体感も感じることができる。これは、あかちゃんが見る。自然と見てしまうのだ。手を伸ばして触りたくなる子もいるだろう。



 内容を少しご紹介してみよう。例えば、最初のページをひらくと、真っ黒の背景に「ぱち」っと目玉が一つ。次のページでは、目玉が「ぱち ぱちん」と二つに増える。そして次のページをひらくと…、「ばあ」というテキストに合わせて背景は鮮やかな黄色に変わり、2つの目玉と一緒に大きく開いた真っ赤な口が現れる!といった具合である。これはシンプルに楽しい。
また、ページをめくった時に、目玉の位置が変わらない。これも大切なポイントだと感じた。絵本自体の位置を動かさずにページをめくることで、前ページの目玉が次のページの顔の目玉に対応しているということが理解しやすくなるわけだ。
 
 まさに0歳0か月のあかちゃんから一緒に楽しむことができる『かお かお ばあ』。お子さんの成長とともに、お子さんの反応の変化を楽しむことができるのではないだろうか。 

圓山哲哉

※言語聴覚士:生まれつきの障害や病気などにより「話す」・「聞く」といったコミュニケーションや「食べる」ことに不自由がある方に対して、検査や訓練などの支援を行う国家資格。


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