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【レビュー】海の砂で描かれた絵が眠りを誘う。何度読んでも心が温かくなるおやすみ絵本

 子どもの寝かしつけ絵本を探している方におすすめの「おやすみなさい」の絵本です。「さあ寝る時間ですよ!」としつけるのではなくて、読んでいるうちに、ふっと眠くなってしまいそうな、とても落ち着いた雰囲気の絵本。温かさや愛情が感じられる絵がシンプルに描かれていて、読んでいるこちらの気持ちも穏やかになってくるから不思議です。第12回MOE絵本屋さん大賞2019では、パパママ賞第3位をとった人気作品です。

 かわいい動物たちが「ねむねむ…」とちょっとうとうとして、「ごろん」と寝床に転がっておやすみしていくお話。もしまだ眠くなっていないお子さんだったら、一緒に真似しながらお布団にごろんとするのも楽しいと思います。途中で赤ちゃんも登場して、ママにギュッと抱きしめられる場面は、子どもたちの大好きなページ。まねしてギュッとしてもらえたら、子どもも親も幸せな気分に。そして安心したら、「おやすみなさい」といって電気をパチンと消しておしまい。本当に眠りの導入にピッタリで、温かい気持ちになっていきます。




 寝かしつけの絵本もいろんなタイプがありますが、『ねむねむごろん』のいいところは、「おやすみ」というメッセージの中にすこし体の動きがあるところですね。お布団でじっとしていることができない子には、はじめにちょっと体をコロコロ動かせるくらいがちょうどいい。「ごろん」ってお布団に寝転んで、絵本を読みながらハグして、電気を消して寝る。こういう睡眠導入の儀式を繰り返すと、あるとき急に「これが寝ることなんだ」と子どもの中に落ち着く瞬間があるんです。そこから眠れるようになったりします。

 私は以前保育園に勤めていたことがあるのですが、寝かしつけ=大変というイメージを持っている親御さんが、たくさんいました。でも実は、子どものほうも、寝ることに不安を抱えているんですよ、と園長先生がおっしゃっていました。体が離れるだけで親がいなくなってしまう気がするとか、大人が「早く寝てほしい」と焦っているのが伝わるんだそうです。親にとっても、お昼寝のうちに家事をしてしまいたいもの。でも子どもは、寝ることがちょっと不安。そんなときに、寝かしつけの絵本はすごく役立ってくれます。眠りにつく前に、お母さんの声で、愛情いっぱいの安心感を伝えてあげられるから。絵本を読んだ後も、背中をトントンとしながら「絵本に出てきたリスさんは、いまどんな夢を見てるのかねえ」なんて話したりして、私も落ち着いた気持ちで接するようにしていました。
 



特に『ねむねむごろん』は、絵になんともいえない静けさを感じます。すべて背景が真っ黒でできているんです。なんというか、そっと森の中に入っていったような静けさ。夜の海を散歩するような静けさ。明るい昼の世界から、静かな夜の世界へといざなような黒。そこに現れる動物も、すべて海の砂を使った画材で描かれているそうです。この色や雰囲気を出しているのは海の砂なんだと思ったら、絵本から眠気を誘うような波の音まで聞こえてくる気がしました。読んでいる大人も吸い込まれていきそうで、見ていて飽きない美しさです。

きっと、親も子も大好きな一冊になると思います。子どもが大きくなっても、思い出とともに飾っておきたいな、と思える素敵な作品です。
 

クサカジュンコ


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