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【レビュー】タケコプターを科学の視点から考える!? アニメやゲームを題材にした、おもしろすぎる科学読み物『ジュニア空想科学読本』

 テレビを見ているときに、子どもながらに不思議なことがあった。「戦隊ものってさ、変身している間になんで敵にやられないの?」でもそれは、アニメの中の『それは言わないお約束♪』であって、とにかく魔法のように叶えられてしまうことがあるのだと。でもそれを、あえて科学的に考えてみよう! というのが、この『ジュニア空想科学読本』の趣旨である。

 はじめてこの本を見たときは、とにかく衝撃的だった。魔法みたいなことは、たいていバカバカしい空想と大人は片付けてしまう。それを著者の柳田理科雄さんは、大真面目に考えてくれるのである。しかもドラえもん、ポケモン、ONE PIECE…などなどの子どもの大好きなキャラクターがテーマになっている。目次には「『ドラえもん』のタケコプターがあれば実際に空を飛ぶことができますか?」「『名探偵コナン』のコナンは高校生から小学生になりました。そんなことが起こり得ますか?」「『プリキュア』シリーズの変身シーンはとても長いと思います。変身中にやられませんか?」。おお、あった! 私の長年の疑問が! 大人だってその答えを知りたいと思う。

 この章を開くと、話はまずプリキュアの変身シーンの秒数を数えることから始まる。プリキュア第1作、第1話の変身時間は約2分。2分と言えば、人間だったら1km走れる、カップラーメンだったら…と、身近な数値に言い換えてくれる。でも、一番無防備なお着換えシーンの間は天空にいるわけだし、でもその天空に運ぶ光の柱って科学的に一体何? もし2人の体重を45kgと考えると、これを持ち上げる光の強さは……と、空想科学は延々と続く。子どもの無邪気な「なぜ?」に、こんなに真剣に答えてくれる大人はいないだろう。そして答えらえる科学力を持つ大人もそういない。

 これはおもしろい科学本だなあと思って小4の息子に与えてみると、これまたはまる。世の中に勉強と呼ばれているものは、好奇心から始まるのが一番いいんだな。なんといっても、出てくるのがアニメのキャラクターとあって、最初のつかみは申し分ない。目次を読むだけでわくわくさせてくれる。息子に、「今日はポケモンの話、イナズマイレブンの話、デスノートの話、どれがいい?」と聞けば、のってくることは間違いない。それがたとえ航空力学と世界の人口の話だったとしても、そう感じさせないおもしろさがある。もちろん、数字や計算の話がたくさん出てくるので、ちょっと意識が飛びそうになることもあるが、最後の締めの文章は「女性の着替えを邪魔してはいけないのは、現実の世界も『プリキュア』の世界も同じなのだなあ。」である。だから勉強しろなどということは一切ない。この、のらりくらり感がまたたまらない。

 元素、人体、進化、宇宙、力学の話……、触れられる科学は多岐に及ぶ。人が空高く飛ぶためには、人がどのぐらいの重さであり、持ち上げるためにどのぐらいの動力が必要なのか、どこまでの高さと速さなら人が耐えられるのか、さまざまな知識がないと問題は解けない。この本はいま学んでいることが、社会でどんなふうに役立つかの一端を、空想世界の中で垣間見せてくれる。好奇心は世の中に疑問を持つことから始まるんだよね。その「知りたい」を調べていくことが、本当の勉強なんだよね。

 『ジュニア空想科学読本』は、なんと続編が21巻まで発売中(2020年12月現在)だという。題材も『ぐりとぐら』から『鬼滅の刃』まで、アニメやゲーム、昔話から、さまざまなものの疑問を取り上げている。小学生のうちは、理科の問題集よりこういう本を読ませたい。何度読んでもおもしろいし、全巻そろえてもいいなあと思う。進学したら出てくる難し~い理科の勉強は、見方を変えれば、本当はとってもおもしろい話なんだと、少しでも感じてくれたら嬉しい。

ためし読み、本の詳細はコチラ!


作:柳田 理科雄 絵:藤嶋 マル

定価
本体660円(税別)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046313256

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