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【レビュー】子育てを振り返れば、かけがえのない思い出がたくさんあった…。きっと心が温かくなる『あなたのことが だいすき』

 はじめてこの本に出会ったのは、著者のえがしらみちこさんのお店に行ったとき。えがしらさんの描く表紙の子どもが愛らしくて、なんの心づもりもなく手に取って読んだら、涙腺がじわっとゆるんでしまった本でした。
 ページをめくると描かれているのは、子どもを育てたお母さんなら誰にでも覚えがある、子育て中の胸がいっぱいになるようなできごと。全然思い通りにならなかった育児、でもそれと一緒に運ばれてきた大きな幸せ。子どものために必死だったときのことを「あのとき、親も子もよく頑張ったね」と頭をなでてもらえたような、温かい気持ちになる一冊でした。




 『あなたのことが だいすき』という題名に、あなたは何を感じるでしょうか。どんなに一生懸命我が子に尽くしても、時間に関係なく呼びつけられ、作ったご飯は食べてくれず……。本の中でも『「たいへんなのはいまだけよ」っていうけど、「いま」なんとかしてほしいの』と、夜に子どもを抱いて立ち尽くすお母さんが描かれています。



 

「じぶんで!」「やだやだ!」と言って泣く子のページの後には、「なんど言ったらわかるの」「いいかんげんにして!」と言ってしまうお母さんの姿。ああ、自分もそうだったと心が痛む人は多いのではないのでしょうか。それでも、親は子どものことが何よりも大切で「あなたのことがだいすき」なんですよね。子どものことをつい怒ってしまっても、本当は優しくしたい。どうしたらいいんだろう、どうしたらよかったんだろうと葛藤しながら、子どもとの関係をはぐくんでいく。そんな様子が描かれていきます。子育てをした親なら、どのページも共感できることばかり。子どもはこんなふうに、親を成長させてくれるんだなと思わされます。

 私が一番気に入っているページは、「家なんてもっと汚くてもよかった 洗濯ものもためちゃえばよかった 家事なんて全部あとまわしにしたらよかった」というところです。もうここは、涙なしには読むことができません。あれもこれも私がやらなくちゃ、と背負い込んでいたあの頃。いま振り返ってみれば、あんなに無邪気に笑ったり、全力でいろんな発見をしていた子どもとは、もう遊べないんだなと寂しく思います。
 




 この本は、漫画家の西原理恵子さんの『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(KADOKAWA)にインスピレーションを受けて描かれたそうです。私も西原さんの書く子育て本がとても好きで、子どもとのユニークなエピソードの中に肝っ玉母ちゃんの愛を感じます。大変なのはみんな同じ、頑張りすぎなくても大丈夫、といつも背中を押してもらっている気がしますね。
 えがしらさんと西原さんの本、どちらも、親御さんが子育てで疲れたときのために、そばにおいておきたい作品です。『あなたのことが だいすき』の方は、ちょっと読むのに最適なボリュームで、ふっと力を抜いて優しい気持ちになれます。あとは、卒園式や謝恩会で親子に読み聞かせしてあげたら、きっと心に残るだろうなと感じます。お母さんはきっと大号泣だろうけれど(笑)。



 

 小学校に上がる前など、ちょうど環境が変わるような節目のときに、お子さんに読んであげるのもいいですね。まだ甘えたい気持ちと、お兄さんお姉さんにならなくちゃと頑張る気持ちを持つお子さんに、「どんなときでも、あなたのことがだいすき」という気持ちを、本を通して伝えてあげられたら、素敵だなと思っています。

クサカジュンコ





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