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【レビュー】戦う書道女子×イケメン文房師!? 言葉を操る戦いの中で、漢字のおもしろさを体感

漢字が好きかと問われて、好きと答える子どもは少ないかもしれない。漢字は、学校の勉強というイメージが強いし、パソコンや携帯が主流になって、どちらかというと敬遠してしまう人も多い。でもこの『いみちぇん!』の主人公のモモは、なんと漢字と書道が趣味の女の子。難しい漢字辞典が愛読書なんてすごい! と思うけれど、実際はクラスの人気者女子より漢字テストでいい点を取らないよう、わざと間違えたりする毎日。クラス内で当たり障りなくやっていこうとして、ひそかにストレスをためているところから物語は始まる。

あるある、こういう状況。仲間外れにされないよう、学校で友達に気を使っている小学生は少なからずいるはずだ。物語の中で、人気者女子のリオは、「キモい」だの「ウザイ」だのを連発してくる意地悪な子として描かれている。でも、普段から「弟がキモい」「先生がウザイ」などと言う、気が強い小学生女子は少なくない。物語の中では、リオはそういう悪い言葉「マガゴト」を使いすぎて、鬼に心をのっとられてしまうのだが、この話を読んで、普段ひどい言葉を口にしすぎているかも……とドキッとした子も多いのではないだろうか。『いみちぇん!』は、言葉の持つ力について、良くも悪くも考えさせられる内容になっている。

物語は、マガゴトを言霊の形として使うことができる鬼と、知らないうちに先祖代々使命を持っていたモモとの戦いに展開していく。とまどうモモを助けてくれるのは、転校生の矢神くん。やっぱりこんなときに役立つのは、お隣に越してきたイケメン、と相場が決まっている。そして「悪い言葉」を操る敵と、なぜか、書道と漢字で対峙していくのである。文房師の矢神くんが武器の代わりに用意するのは、特別な紙と墨。「風」と墨で書いた紙を投げつけると、風が巻き起こるという…え、そんな戦い方!? これぞ頭脳戦!

そのおかげで、本書にはたくさんの漢字が出てくる。タイトルの「いみちぇん」は、意味チェンジのこと。さまざまな漢字が繰り出す技を、横棒を一本抜いたり、そこに書き足したりして、違う意味の漢字をひねり出すことで戦うのである。たとえば、悪い敵が書から生み出したカラスに、「賊」と書いた書を投げつけると、イカに変身してしまう。なぜって、「烏(カラス)」に「賊」と書いて「烏賊(イカ)」という言葉になるから。漢字嫌いの子でも「ほほう」とちょっと納得してしまうような、おもしろい漢字の豆知識がたくさんでてきて感心させられる。

こういう言葉の楽しい部分を感じさせてくれる物語は、とても貴重だと思う。この漢字はなんと読むのか、どうしてこの漢字を当てたのか、などを考えるところから、文字への興味が深まっていくのかもしれない。著者のあさばみゆきさんも、子どもの頃は漢字が苦手だったそう。でもこの話を書くにあたって、漢字や書道のことを調べるうちに、なんておもしろいんだろうと気づいたのだとか。子どもたちが、この本を通して、ちょっぴりでも漢字の奥深さに目覚めてくれたら、と思わずにいられない。この本の隣に、漢字辞典が置かれていたら、やっぱりページをめくりたい衝動に駆られると思う。

『いみちぇん!』は続編も人気が高く、現在18巻まで発売中。新たな敵やライバルやお家騒動と、次から次へ起こるトラブルに目が離せない。毎回どうなることやら…とドキドキしながら読んでいる。もちろん、モモと矢神くんの恋物語も見どころのひとつ。漢字の知識もさながら、ぐいぐい惹きこんでいくストーリーのおもしろさに、男女問わずはまってしまうシリーズである。


クサカ ジュンコ
 

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