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【レビュー】山からおりてきた子だぬきが人間にしかけたいたずらとは?『らくごえほん ごんべえだぬき』

レビュアー:市川 椿 ライター

【レビュー】山からおりてきた子だぬきが人間にしかけたいたずらとは?『らくごえほん ごんべえだぬき』

 時々、小学校へ読み聞かせに行くことがある。そんな時に私がよく選ぶのは、落語を題材にした絵本である。寿限無や死神といった古典落語から、オリジナルのキャラクターが出てくる新作落語まで、落語の読み聞かせは、子どもたちにウケる。すごく集中して聞いてくれているのが伝わってくるし、ここぞ! というところで盛り上がると、読み聞かせもすこぶる楽しく、次はどのネタにしようかしらんと目を光らせて絵本を探しては、噺家の落語を聞く。ネットで検索すれば、過去の名人も含め、いろいろな噺家のネタが聞ける、いい時代である。名人とは比ぶべくもなく、それはそれは恐れ多いのであるが、読み聞かせの時の参考にもなるし、実に楽しい。
 落語の世界に出てくる動物といえば、人を化かすキツネやタヌキがお馴染み。なかでもタヌキは「キツネ七化け、タヌキは八化け」と言われて、キツネより化ける技が上手なことになっているが、実際はどこか間抜けで、憎めないキャラクターとして描かれていることが多い。キツネのほうが、ちょっとずる賢そうなイメージもある
 本作『ごんべえだぬき』の主人公は、田舎に住むおじいさんと、山からおりてきたいたずらタヌキ。表紙のセンターで、片手を上げてポーズをしているこのタヌキ、クリクリまん丸の目で、とても愛嬌のある顔つきをしている。君は一体、どんないたずらをするんだい?

 タヌキがやったのは、ごんべえが布団に入ったころを見計らって、戸を何度もドンドンと叩き、名前を呼び、ごんべえがおもてに出てくると、隠れて姿を消す、といういたずら。いまでいう、ピンポンダッシュに似たところがあるだろうか。タヌキにはスリルがあって面白いかもしれないが、早く眠りたいごんべえにはいい迷惑である。途中で、タヌキのいたずらと見破ったごんべえが、たぬきの裏をかいて捕まえて……と物語が展開していく。



 さっそく、我が家の動物好きの4歳の娘に読み聞かせをしてみた。たぬきが可愛いので、つかみはバッチリ! 一番盛り上がったのは、タヌキが「ごんべえ」、「ごんたれ」、「ごんたれぷー」などと、いろんな面白い呼び方で、何度も何度も、ごんべえを呼ぶところ。
 ドン、ドン、という戸を叩く音のところは、片手で床を叩きながら落語風に臨場感を出したら、大笑いでとてもウケてくれた。母は嬉しい。




 慌ただしく情報の多い、すべてのスピードが早く感じられる現代とは違って、山がすぐ目の前にあり、人間も提灯を片手に歩いて夜道を帰る時代、タヌキがひょっこり現れる余地のある、江戸の田舎の空気感もまたいい。ごんべえがタヌキを捕まえた縄も、きっと自分でなったんだろうな。動物の毛皮もなめせるんだろうな。昔のお百姓さんの技はすごい。 
 さて、ごんべえに捕まってしまったタヌキ、ちょっとしたお仕置きをされてしまうのだが、オチまで読んでから、裏表紙をもう一度見てみてみよう。作者の川端誠さんが、これしかないだろうと書く「オチのオチ」。絵本ならではの遊び心に、思わずふふっと笑ってしまう。

市川椿
 

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らくごえほん ごんべえだぬき

らくごえほん ごんべえだぬき

  • 【定価】本体1,400円(税別)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】A4判
  • 【ISBN】9784041090565