角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』は、1~15巻を刊行してから2025年で10年が経ちました。そこでこの機会に現在の歴史研究に合わせて記述や作画をアップデートしました。
このアップデートは、単巻1巻~15巻は10月24日以降、全巻セット商品は2025年11月5日から書店に入荷する『日本の歴史』5大特典つき全16巻+別巻5冊セット以後の弊社出荷分において更新内容を反映されております。
※第16巻と別巻5冊は今回のアップデートの対象外です。
編集部から
角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』は、これまでも新たな学習指導要領の施行に合わせ語句の変更など細かなアップデートを行ってきましたが、刊行から10年を機に1~15巻の内容を全面的に見直すこととしました。歴史という学問にもとづく本である以上、研究の進展に『日本の歴史』の内容も合わせたいと考えたのです。
そこで、5人の歴史研究者の方々に改めての監修(更新監修)を依頼し、頂いた指摘に基づき、歴史記述の変更はもちろんのこと、コマの中の一部分の描き直しから数ページにわたるストーリー展開の調整など、15冊で何百か所にのぼる変更を行いました。
今回の変更は訂正ではなくアップデートであり、これまでの『日本の歴史』が間違っていたわけではありません。きっと10年後には今回のアップデートから、さらに歴史研究は進んでいることでしょう。歴史は昔から、それが編まれた時代を映す「鏡」と表現されてきました。どうか、お手元にある『日本の歴史』を今後もご愛読いただけましたら幸いです。
アップデートの例
用語の変更からまんがの流れの描きかえまで、何百か所もの変更の中から主なものをご紹介します。
※以下、旧版=2015年刊行時、更新版=2025年11月5日以降出荷分を、「教科書」とある場合は当社『日本の歴史』の底本としている東京書籍刊の中学歴史教科書をさします。
1巻 ジェンダーバランスの修正
1巻は全般的にジェンダーバランスを見直しました。旧版では画面に現れる男女の人数において男性に偏りがあり、また、旧石器~弥生時代の描写において、狩猟=男性、採集=女性という役割の固定化があったのを、現在の研究に基づき、性別と役割を紐づけない形に記述・作画を直しました。考古学の進展により女性も戦闘に加わったことが分かってきたため、戦闘シーンに女性も入れる形に。
邪馬台国に関連しては、『魏志倭人伝』の記述「会同・坐起には父子男女の別なし」にのっとり、邪馬台国における政治の意思決定者を男女半々とするよう作画を直しました。卑弥呼の後継者の名前も「台与」から「壱与」に変更しています。
[邪馬台国における政治の意思決定者たち]
2巻 聖徳太子の肩書から「摂政」をなくす
近年の古代史研究において聖徳太子(厩戸皇子)の功績は見直され、『日本書紀』の記述「厩戸皇子を摂政とした」についても疑問が出されています。教科書でも2020年検定版から聖徳太子に関する記述から「摂政」の文字は無くなっており、更新版でも聖徳太子の肩書から「摂政」をなくしました。合わせて、再評価が進む推古天皇についても、解説ナレーションや作画の変更を行い、指導力の高さを表現しています。
5巻 鎌倉幕府の成立年は1192年
「“いいくに(1192)つくろう鎌倉幕府”は、今は“いいはこ(1185)つくろう”になった」という報道が記憶に新しい方もおられるかと思いますが、実は2024年検定版の教科書では鎌倉幕府の成立年は再び1192年になりました。全国に守護・地頭を置く権限を得た1185年ではまだ全国に支配権が行き渡ったとは言えず、征夷大将軍に任命された1192年がやはり鎌倉幕府の最終的な確立年である、…という研究に基づくもの。旧版では、92頁で1185年を幕府成立年とする説を紹介したうえで、113頁で1192年に名実ともに鎌倉幕府が成立、と段階を追っていましたが、更新版では93頁の1185年を鎌倉幕府成立に関する記述を外しました。
10巻 徳川綱吉の人物像と「生類憐みの令」
江戸幕府第5代将軍・徳川綱吉の政策「生類憐みの令」について、出した経緯を旧版では「おかしな方向に走り出す」と、悪法であるニュアンスが強い記述となっていました。しかし近年、徳川綱吉は、生命を尊重する道徳を広めようとした将軍として見直されています。10巻52頁ではその動向を反映して、記述を変更しました。
更新監修を行った先生方
1~3巻 稲田奈津子 東京大学史料編纂所准教授
4~6巻 高橋慎一朗 東京大学史料編纂所教授
7~9巻 岡美穂子 東京大学史料編纂所准教授
10・11巻 松澤克行 東京大学史料編纂所教授
12~15巻 五百旗頭薫 東京大学大学院法学部政治学研究科教授
最後に
研究がお忙しいなか更新監修をお引き受け下さった先生方、10年以上前の執筆原稿を直してくださったまんが家の皆様、記事のテキスト修正に対応下さった編集プロダクションさん、長丁場のゲラ作業でお手数をおかけした印刷会社さんなど、関係各位に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
購入はこちら