大迫力の昆虫の絵に感動する娘たち
「けんくん、けんくん。かまきりのはねが、ばさぁーってなってる!」
一緒に絵本を読んでいた4歳半になる娘が、興奮気味に話しかけてきました。
(娘たちは僕のことを「けんくん」と呼びます)
うちには一緒に絵本を読んでいたこの子と、2歳の女の子、二人の娘がいます。外に出て遊ぶことも、家の中でお人形遊びをすることも大好きな子たちなのですが、最近になって時々「虫こわい」と言い始めるようになりました。
特に怖い思いをしたわけではないけれど、家に虫が出たときに妻が「きゃあー」と言っているのを聞いたのか、本人たちはよくわからないまま「虫こわい」と言い始めたように思います。
本当は、怖くないし、素敵なんだけれど、どうしたらいいかなぁ、と思っていたところに、この『すごい虫ずかん くさむらの むこうには』に出合い、読み聞かせてみました。
すると効果はてきめん!
昆虫たちは絵本の中にいるから、「予測不能な動き」はしないし、解説部分に添えられたゆるーいタッチの絵は、子どもたちの興味を引き出します。そしてなによりの魅力は、大迫力で細かなところまで描かれている昆虫たちの力強い姿。
「みてみてー! このカマキリの顔、へんなの」
なんて言いながら、ずんずん読み進めていきました。
絵本なのに図鑑、図鑑なのに絵本。「ほんもの」と見比べられる精密さ
「ね、そんなにおもしろいなら、昆虫採集、虫とりしにいってみる?」
と聞くと、
「いくいくー!れっつごー!!」
と、ノリノリな娘たち。
虫とり網と虫かごを持って、近くの公園に繰り出しました。
娘たちは、何時間も飽きずに、絵本にも出てきたキアゲハを追い回し、クルマバッタを捕まえ、ハグロトンボを観察していました。
「えほんにでてきた、ちょうちょがいる!」
「このバッタは、えほんのバッタとは少しちがうね」
「このトンボはえほんより、ちいさいね」
そんな風に、絵本を図鑑代わりに、虫たちを追い回す、元気いっぱいな娘たちの姿が、そこにはありました。
公園から帰ってきたあとも、捕まえてきた昆虫たちを観察しながら、
「かわいいね」
「おなかすいてないかな」
「ねんねしてるのかな?」
と、ずーっと虫たちに興味津々。
虫が怖いって言っていたのは、どこにいったんだろうなぁ、と思いながらも、やっぱり純粋な興味がわくと、どんな子でも愛着を持ち、ずんずん学びに前のめりになるんだなあと、我が子を通して学ばせてもらいました。
センス・オブ・ワンダーからくる、前のめりな学び
僕が働いている探究学舎では「驚きと感動」を大事にしながら、子どもたちの探究心を育み、自分なりの問いを持って、自分なりのやりかたで、自分なりのペースで、自分なりの答えにたどりつく「探究」を続けることで、好きなことで生きていく「探究者」で溢れる世界を創る取り組みをしています。
この『すごい虫ずかん くさむらの むこうには』は、レイチェル・カーソンの言葉を借りると「センス・オブ・ワンダー」とも言える、
「わあすごい」
「おもしろい」
「感動した!」
というような気持ちが、子どもたちから自然と引き出されるように感じました。
探究学舎の授業でも同じですが、子どもたちの探究心に火をつけるために大事なことは、伴走する大人の心にも同じように火がついていることです。この絵本を読んで、僕自身、虫とり少年だったかつてのワクワク感を思い出しました。きっと、その探究の火が子どもたちにも伝わって、娘たちとの素敵な時間につながったのではないかと思います。
大人も、子どもも、分け隔てなく、思わず「ほんもの」に触れたくなってしまう。自然のことや、昆虫のことについての探究の入り口に、ぴったりの一冊です。
福井 健