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計算は得意なのに図形で手が止まる…算数の壁「立体図形」。【算数のプロが解説】図形センスは今からでも育てられる!

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計算問題は得意なのに、図形問題になると手が止まってしまう。そんな子どもの姿を見て「うちの子は図形センスがない」と悩んでいませんか? 「図形センスは今からでも磨けます」と話すのは、進学塾勤務、ベネッセコーポレーション『中学受験講座』『高校受験講座』の企画制作、私立小学校副教頭などを経て算数塾を立ち上げた小野圭先生。子どもの立体感覚を養う方法や、中学入試にも出題されている「立体図形」の解き方のヒントについて、詳しくお話をうかがいました。


【プロフィール】

小野算数塾 塾長

小野圭

進学塾勤務、四谷大塚提携塾の立ち上げ、ベネッセコーポレーション『中学受験講座』『高校受験講座』の企画制作、都内私立小学校副教頭を経て、小野算数塾を設立。算数・数学の原理である「概念・考え方・仕組み」を教え、使いこなせるように鍛錬し、基礎基本を徹底的に磨き上げる「小野メソッド」で教え子の第一志望校合格をサポートしている。


▼目次
空間認識能力はプリント学習だけでは育めない
積み木やブロックおもちゃや外遊びで「立体感覚」を養う
図形問題は方眼ノートにフリーハンドで描き写す
立体図形は知識も重要
図形問題などは「次元を落とす」とシンプルになり簡単に解ける!
立体切断も「実物」でイメージをつかみ、「図形の性質」を知り、「イメージと知識」の二刀流で攻める
地道な「手を動かす作業」で図形センスを育もう



空間認識能力はプリント学習だけでは育めない

 立体図形の基本問題としてよく目にするのが、次のような立方体の積み上げ問題です。

【問題】次の図のように1辺の長さが1cmの立方体の形をした積み木を積み重ねて作った立体があります。この立体はぜんぶで何個の積み木でできていますか。



 こうした立体図形の問題を解くには、見えないところに立方体が何個あるかを推測する「空間認識能力」が求められます。空間認識能力とは、ものの状態を正確に把握する能力のことです。詳しく説明すると物体の位置・方向・形状・大きさ・間隔などを三次元空間において素早く正確に把握・認識する能力のことです。簡単に言えば、辺・面・頂点という立体の構成要素を「上下」「左右」「前後」という方向からとらえ、面の形や立体の形を把握し、「垂直・平行」の関係を認識し、その長さ・角度・面積・体積といった数量を導く力です。空間という入れ物に図形が置かれていると考えることが大切です。

 立方体の問題は、立体を前後・上下・左右(下図参照)でとらえられることが大切です。立体をいかようにでもとらえれらることが立体感覚を磨くことになります。

 たとえば、上からスライスしていくと、1個、1+2で3個、1+2+3で6個というように碁石を三角形にならべた数で三角数と言われる数になっています。

 この問題の解法としては、「上から串刺しにして何個あるか?」を上の面に書いていって合計するというのが定石ですが、前から刺してもいいし、右から刺してもいいのです。また、スライスしてもよいということです。

 つまり、3+2+2+1+1+1=10個になります。 

 このように算数では、仕組みを理解して様々な解法を考えることができて、ベストな解法を選び取る力が実力アップにつながります。



 では、その前段階としてはどのようなことをしていけばよいのでしょうか。

「頭のなかでイメージしてみて」とだけ声をかけても、子どもはなかなか思い描けないものです。大人にとっては当たり前でも、子どもには当たり前でないことはたくさんあります。たとえば、大人は先ほどの問題を目にしたとき、無意識のうちに奥行きなど見えていない部分をイメージして「立方体が積み上げられているのだな」ととらえます。一方、空間認識能力が十分育まれていない子どもは、同じものを見ても、平面図形に見えている場合もあります。平面的に描かれた立体を見て奥行きを思い浮かべられるのは、実際に立体物を見て、さわった経験があるからです。そうした経験があるから、見えない部分が脳内で補完され、「これは立方体が積み上げられた状態だ」と認識できるのです。

 実物を直接見て、さわる経験が不十分なままプリント学習だけを続けていると、子どもはその場しのぎのコツを見つけてつじつまを合わせようとします。算数は積み上げの教科です。立体とは何かという概念が形成されないまま場当たり的な対処を続けていると、気づいたときには「何がわからないのかわからない」という困った状態になってしまいます。図形をイメージするには、「実物」を手に取る体験がとても大切なのです。

積み木やブロックおもちゃや外遊びで「立体感覚」を養う

 立体感覚を養うには、「実物」にふれるのがいちばんです。そもそも未就学児から小学校低学年の子どもは、脳内だけでものごとを処理するのがまだ苦手です。プリント学習のような座学より、思考と行動を分離しない「遊び」を通じて、算数における「概念」を楽しく身につけることがとても大切です。積み木・ブロックおもちゃ・ジェンガ・折り紙・ペーパークラフトなどでどんどん遊びましょう。親子でこうした遊びをすることで、「立体感覚」そのものが養われます。



 また、以下のような外遊びも、立体感覚そのものを養います。

⚫︎アスレチック・木登り
高低差のある場所を移動することで、三次元の空間(たて・よこ・高さ)を体格に合わせて体感できます。

⚫︎ボール遊び(キャッチボール・サッカー・ドッチボールなど)
動く物体と自分との距離感や、スピード、軌道を予測する力が養われます。

⚫︎鬼ごっこ・かくれんぼ
空間全体を俯瞰して「どこに逃げれば安全か」「どこに隠れられるか」を考えるため、空間の構造を脳内でシミュレーションする力が鍛えられます。人の視線を想像してかくれるのですから、視点の移動を訓練していることになります。

⚫︎砂場遊び・泥遊び
砂で山やトンネルを作ることで、立体的な構造を直感的に理解し、手先の感覚と空間認識を連動させます。立体の切断のさきがけにもなれば、体積を体感しています。

 「図形センス」は、生まれつき備わっているわけではありません。積み木やブロックおもちゃや外遊びに夢中になり、立体感覚が研ぎ澄まされた子どもたちが、「図形センスがある」といわれているのです。立体感覚や空間把握能力は、こうした遊びを通じて実は磨かれるのです。

 小学校4年以降で立方体を積み上げる問題で手が止まるようなら、実物を手に取る体験が十分ではないのかもしれません。その場合は、プリント学習を継続する前に、実物に立ち戻りましょう。問題を見ながら積み木などを実際に並べてみると、ぐっとイメージしやすくなります。何度か繰り返すうちに、正面から見えない立方体にも気づきやすくなります。こうした感覚を元手にして、プリントにじっくりと取り組むことが大切です。そして、子どもがよくやってしまうことですし、親もアドバイスしがちですが「安直に答えだけを覚える」「解法手順を丸暗記する」ことをしないことが肝心です。

 最近「正方形の葉っぱの面積」丸暗記論争が勃発しているのだそうですが、あの中に図形的要素がたくさんあって、その仕組みを理解して使いこなせることが算数の力になっていくことを知ってください。

 意味のないことを皆様はずっと覚えておけますか? ずっと記憶しておくことは難しいですよね? 算数もそれと同じことです。

図形問題は方眼ノートにフリーハンドで描き写す

 図形問題を解くときは、出題された図形を「フリーハンドで描ける」ようになることがとても大切です。手と脳は連動しています。平面図形であれ立体図形であれ、図形を描けるということは、脳がその図形を認識できているあらわれです。プリントや問題集に書き込むだけでは、脳が形を認識できません。図形問題は、定規を使わず、ノートにフリーハンドで描き写してから解きましょう。

 ここで重宝するのが「方眼ノート」です。



 方眼ノートのマスをうまく利用すれば、二等辺三角形や正三角形もフリーハンドでかなり緻密に描けます。方眼ノートで練習していれば、いずれ白紙にもフリーハンドで、ある程度緻密に図形を描けるようになります。図形を描き写したら、ノートに描き写した図形に初期条件を書き込みます。次に分かったことをどんどん書き込んでいきましょう。求積については、その情報をもとに公式に当てはめて式を書いて計算の工夫をすることで正解を得られるようになります。

「試験のときは問題用紙に書き込むから、ノートに写す作業は無駄」「面倒くさい」と子どもに言われたら、「難しい問題だと、自分で図を描かないと解けなくなるんだよ」「図形と仲良くなろうね」「図形をすらすらスイスイとキレイに描けることが、理系科目の第一歩なんだよ」と伝えましょう。図形問題が得意な子どもたちは、頭のなかだけで解いているわけではありません。図形が得意な子どもほど、ノートに図形を描き、解く手順を細かく書き残しています。算数は、どれだけ手を動かせるかが勝負の分かれ目です。どのように考えたのか、あとから思考のプロセスを振り返れるように書く習慣をつけておきましょう。それが中学入試の難関校の記述問題やオール記述の大学受験国公立2次試験理系科目での大きな力になります。泥臭い作業ではありますが、図形を描く大変さから逃げず、愚直に手を動かすことで、図形センスが磨かれていきます。

 だからと言って、すべてを図にすることがベストとは限らないのです。それが図形の面白いところです。右脳の空間処理能力に任せたほうがいい問題もあります。

 展開図を組み立てたり、立体をバラす際には、イメージの力が必要ですし、次にご紹介する「サイコロころころ」では、丹念に書くよりも、頭の中のイメージで簡単にできるようになるあるコツを習得すれば、あら不思議、いとも簡単に解けてしまいます。

 展開したり回転したりと動きがある際に、途中をすべて描くには相当な画力が必要ですし、描けたとしてもあまり意味がないと思います。

立体図形は知識も重要

 立体図形の問題は、ちょっとしたコツを知っていることでスムーズに解けたりします。図形を頭の中で動かすのです。「知識+イメージ」の力も大切なのです。

【問題】サイコロの面と大きさが同じマス目があります。図の位置からサイコロをこのマス目にそってすべらないようにもっとも少ない回数で転がします。このとき,アとイの位置に来たときの上の面に書かれている目の数はいくつですか。



 このようなサイコロの問題について、中学受験指導では、次のように上から見たサイコロの目を工夫してコツコツと書いていって考えます。



 ですが、この上の目と進行方向に対して前後左右の目を書いていくうちに、なにか気づくことはありませんでしょうか?  そうです。

・2回転がすとはじめの下の目が上にくる

・4回転がすと上の目がはじめの目にもどる(ふりだしにもどる)

・進行方向に対し左右の目は変わらない

  つい「覚えなさい」と子どもに言ってしまいそうですが、そこはグッとこらえましょう。このことを教え込んで丸暗記させるより、子ども自身が発見することで算数の楽しさがグッと増します。

 そして、これらをコツとして使って、頭の中でイメージしてみてください。

 どうでしょうか? 問題を見て、しばらく練習すれば簡単に目が分かるようになったのではないでしょうか。

 同じ方向に4回転がして【ア】の位置にきたとき、サイコロの上の目はスタートしたときと同じ【1】になります。その後、2回転がしてイのとなりのマスの位置にきたとき、サイコロの上の目はアのところで下の目だった6となります。さらに1回転がして【イ】の位置にきたとき、サイコロの上の目は【2】になります。

 一気に最後までイメージするのが無理ならば、4回転がしたときと、6回転がしたときだけ、さっきの目の図を書けばよいと思います。

「サイコロころころ」でうまくいったからと、何でもかんでも頭の中でやることは危険です。脳は錯覚しやすいからです。ですから、立体でない他の問題では鉛筆を動かすことが正義なのですが、立体図形では事情が少し変わるということを知っておくとよいでしょう。

 苦手な子どもが多い次のような展開図の問題も、あるコツを知っているとぐっと解きやすくなります。

【問題】(図1)は,立方体ABCD-EFGHの見取図を表していて,(図2)は,その展開図を表しています。(図2)のア,イは,それぞれ(図1)のどの頂点に対応しますか。



「頭のなかで組み立ててみて」と子どもに伝えても、時間ばかりかかってしまいます。ここで知っておくと役立つのが、「立方体のいちばん遠い2つの頂点は,展開図上でとなりあう正方形2つでできた長方形の対角線上にある」という立体の性質です。下の図のように立方体を箱に見立て、一面をパカっと開いた状態を思い浮かべてみると、一番遠い頂点がなぜとなり合う面の対角線上にあるのか理解しやすいでしょう。このように仕組みを理解すると、意味もわからず丸暗記するより記憶に定着しやすく、応用も効きます。

 展開図でアは、Dと2面の対角線上にあるため、左の見取り図でDからいちばん遠い点はFなのでア=Fとなり、展開図でイはBの2面の対角線上にあるため左の見取り図でBからいちばん遠い点Hなので、イ=Hとなります。



 ここで、展開図の組み立てが苦手だという子の場合には、実際に展開図を紙で作って、立方体を組み立ててみるとよいです。立方体の展開図は11種類ありますから、全制覇するのも楽しいのではないでしょうか。その際に「底面」を意識して組み立てるようにすると立体感覚が磨かれます。

図形問題などは「次元を落とす」とシンプルになり簡単に解ける!

 図形を描く、知識を身につけると同時に身につけておきたいのが、「次元を落とす」という考え方です。

「点」が集まると「線」になり、「線」が集まると「面」になり、「面」が集まると「立体」になります。この逆をたどり、立体の問題であれば「平面」、平面の問題であれば「線」や「点」に着目すると、複雑な問題も格段に解きやすくなります。

 中学受験で頻出の「水を入れた容器を傾ける」問題を例に考えてみましょう。

【問題】(図1)のような直方体の形の容器に,はじめ,10cmの深さまで水が入っています。この容器を,辺ABを床につけたまま静かにかたむけていきました。(図2)のように,水がこぼれることなく水面が容器のふちにかかったとき,図のxの長さは何cmですか。



 水がこぼれる直前まで容器を傾けたのですから、(図1)も(図2)も、容器に入っている水の体積は同じです。「水の体積=底面積✕高さ」で求められます。

 ここで着目したいのが「底面積」です。この問題でつまずく多くの子どもが、容器の底面「5cm×9cm」が、水の体積を考えるうえで底面積になると考えます。そこで目線を変えて、(図3)(図4)の手前(斜線部分)を「底面積」、5cmを「高さ」だと考えてみましょう。



 すると、「高さ」となる5㎝は、どちらも共通しているとわかります。つまり、「底面積」である手前の斜線部分の面積は等しいというわけです。ここからは「平面図形」の問題として考えればいいのです。



(図5) 底面積(長方形)✕高さ=体積

  10✕9✕5=体積

(図6) 底面積(台形)✕高さ=体積

         (x+12)✕9÷2✕5=体積

 高さと体積はどちらも同じですから、底面積も同じになります。さらに、長方形も台形だと考えると

(図5) (10+10)×9÷2

(図6) (x+12)×9÷2

 よって、どちらの式も✕9と÷2が同じですから、下線部分の(上底+下底)は同じとなります。結局、体積を面積で考えるどころか、長さで考えればよいとなって、

x+12=10+10

x+12=20

x=8と簡単に求めることができます。

 このような「次元を落とす」考え方は、さまざまな問題で応用できます。立体図形の問題なら、体積を面積に、平面を長さに、平面図形の問題であれば、面を線に、線を点に、次元を落として考えるよう子どもに声かけしてみましょう。考えることをどんどん減らしていくのが「算数」です。

立体切断も「実物」でイメージをつかみ、「図形の性質」を知り、「イメージと知識」の二刀流で攻める

 立体図形のステップアップした問題として、上位校から難関校の中学入試で近年出題されつづけているのが「立体の切断」です。1回切断するだけでなく、難関校では、さらに2回3回と切断する問題も出題されるようになっています。

【問題】下図の点A,B,Cは,立方体の辺の真ん中の点を表しています。立方体を3点A,B,Cを通る平面で切ったときにできる切り口の図形を,最もふさわしい名前で答えなさい。



 切り口とは、切断面の図形のことです。AとBは同一平面にあるため結んでよいですが、CはA、Bと同一平面上にないため、結んでしまうと立体の中を通る線になってしまい切り口の図形の辺になっていません。



 立体切断の問題でポイントとなるのは、「平行法」と「延長法」という2つの考え方です。

 ここでは、立体の基本から講義するのもなんですので、こうした「空間図形の性質」があることを知っておいてください。ここでは、かいつまんで説明するにとどまることをご容赦ください。

 この問題では、まず同じ面にある中点Aと中点Bを結びます。次に、中点Cを通り、ABに平行な線を引きます。さらに、この線を立方体からはみ出すように延長すると、立方体の1辺の点線を延長した線と交わります。この交点と同じ平面にある中点をそれぞれ結ぶと、立方体の1辺に交点が見つかります。結果、これらの立方体の1辺に中点が6つできます。この中点同士を結んでできた各辺は、合同な直角二等辺三角形の斜辺になっているため同じ長さとわかります。ゆえに、切り口は正六角形となります。

 立体切断の問題も、方眼ノートに描き写してから解くと、脳内で切断面をイメージしやすくなります。もし図形を描き写しても子どもが切断面をイメージしにくいようなら、実際にメラミンスポンジや消しゴムをカッターで切ってみるといいでしょう。子どもへの声かけのヒントとしては、平行法の空間図形の性質「平行な2つの平面に,別の平面が交わってできる2本の直線は平行になる」ということを自分で発見できるとよいと思います。

 ただし、なぜ長方形でなくて平行四辺形となり、ひし形にはどんなときになって、どうして台形や五角形、六角形ができるのか?は難度の高いことなので、立体図形の学習を積み重ねましょう。いろいろな例題の立方体の切り口を自分で作っていくうちに図形の性質を体感できることが重要です。

 また、「平行がどこまでいっても交わらない直線」であること、その平行な直線の特徴を知っておくことは、垂直とあわせて平面図形で概念形成しておきたいです。複雑な問題でも、実物を使った作業は有効です。実物をさわったうえで、さらにノートに書き出して手を動かすと、頭のなかのイメージがより具体的になり、正解に辿り着きやすくなります。




地道な「手を動かす作業」で図形センスを育もう

 問題集やプリントと向き合ってばかりいると、算数を意味のわからない暗号のように感じてしまうことがあります。しかし、算数とは、日常生活のなかから生まれた学問です。長方形や正方形のようなわかりやすい形だけではなく、入り組んだ田畑の面積を測ったり、遠くの山の高さを調べたりできるのは、算数・数学の考え方があるからこそ。そもそも、毎日の時刻と時間、学校の時間割はもちろんのこと、蛇口をひねれば水が出て、住んでいる家や学ぶ学校が建つのも、電気を発電して家に引いて、電気がついたり、家電が動いたり、携帯電話が動いたりするのも、ゲームができてアニメも観れて、漫画も読め、車や電車が走って飛行機が飛んでいろんなところに行けるのも、病院で病気を治してもらえるのも、食べ物が豊富に実るのも、きれいなお洋服が着られて冷暖房で快適に暮らせるのも、すべて算数数学のおかげです。

 結局のところ、文明の成熟度は算数数学の発達によるのだそうです。世の中は算数数学でできているといっても過言ではありません。算数数学が無くなれば、人類は簡単に原始時代に逆戻りしてしまいます。

 明治維新へ向かう大きな転換点となった第二次長州征伐で兵力20倍以上の幕府軍を打ち破った長州藩士・大村益次郎は、「数学や物理を学ばなければ、世の中のことは何もわからない」というのが口癖だったそうです。医学と蘭学を学び、大阪の適塾(現大阪大学医学部)で塾頭となり、天才軍師として明治維新の立役者となった大村は、万事が算数・数学に通じるとよくわかっていたのですね。ナポレオンも数学ができたそうですが、将軍や大名は、算数数学ができないと、敵に滅ぼされてしまいます。現代の社会でも、会社で算数数学ができないと、競争相手に負けてしまいます。

 立体感覚を養い、図形センスを磨くためには、地道に手を動かすことが肝心です。ノートに図形を描き写し、式を整然と書くのは手間も時間もかかりますが、勉強とは本来、愚直にコツコツと繰り返しながら力を磨いていくものです。子どもたちは目先の成果を求めたがる傾向があるため、地道な基礎練習を繰り返すより、目新しいことにチャレンジしたがるかもしれませんが、理解できていなくても「わかった」「できた」と言うのが子どもです。図形を描き写して手を動かせば、子ども自身がどこからわからないのか気づくきっかけにもなります。どんどん興味関心が広がるのはよいのですが、どんどん覚えればどんどん忘れるのも、子どもの特性です。受験では、地味なことをコツコツと繰り返せる受験生の方が圧倒的に強いのです。

 図形を描き写すのを嫌がるなら、どちらがきれいに描けるか親子で競争したり、子どもと一緒にメラミンスポンジをカッターで切って断面を研究したりして、地道な作業を継続できるように後押ししていきましょう。手を動かして理解した仕組みは、丸暗記するより忘れにくく、応用問題にも活用できます。仕組みごと理解したうえで「わかった!」という成功体験を積み重ねていくと、算数が楽しい教科になっていきます。

 日常生活で立体感覚を養うなら、「整理整頓」から始めてみるのがおすすめです。ものの置き場所を考えるとき、「上下」「左右」「前後」という3つの軸で自然と空間をイメージします。勉強に集中できる環境を自ら整えることも、立体感覚を養う一歩になるのです。

日常のありとあらゆることが、算数数学に関係あるのであって、「算数は紙の上(会議室)で起きているのではありません。実際の現場で起きているんです。」ということなのですね。

 そう考えると、算数ができないと困るとなるとわかったら、子どもは頑張るものですし、親の思い入れも違ってきます。

 いかがでしょうか? 世の中が算数数学で彩られていることに気づいたら、算数にメロディがついたみたいで楽しくなってきませんか?


取材・文:三東社




小野先生もおすすめ『算数アドベンチャーまんがシリーズ ひらめけ!算数ドカン! 三角形のナゾにいどめ!』

身近な疑問から「算数」のおもしろさを発見できる、世界で150万部突破の大反響算数まんが『算数アドベンチャーまんがシリーズ ひらめけ!算数ドカン! 三角形のナゾにいどめ!』。算数のテストは最下位だけど鋭い思考力を持つドキと、テストは常に1位の優等生ダルレの2人が、仮想現実「Math World(マス・ワールド)」でワクワクの算数アドベンチャーを繰り広げます。 「道具を使わずに、水槽に半分だけ水を入れる方法は?」「ピラミッドの高さはどう測る?」などの謎が、クイズ感覚で楽しく解決。小野先生がインタビューで話していた「遠くの山の高さを調べる方法」もスッキリわかります。まんがや冒険が大好き!という子どもにおすすめの1冊です。

小野先生からいただいたコメントを紹介します! 


皆様は算数が好きですか?私は、子供の頃からいちばん好きな教科でした。だって、答がちゃんと出るじゃないですか?それに解けたときの爽快感が好きです。

ですが、算数は無味乾燥に思われがちで、面白くないと思われていると聞きます。ですので、私は子どもたちに、興味を持ってもらおうと、努力工夫をして授業をしています。

なぜなら、「勉強好きに勝るものなし」だからです。ほんとうにこの通りで勉強が好きな人には勝てません。

そして、驚きました!私が普段から言っていることが、もうすでにマンガ「ひらめけ算数ドカン!」として世に出ているなんて。

「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったもので、人類は好きなことには夢中になって、ものすごい力を発揮してきました。人間は空を飛び、海にもぐり、月へも行きました。今では、月や火星に移住しようという計画まであります。この人類の文明の進歩に算数・数学は多大な力を発揮してきたのです。あたりまえの日常でさえ、算数数学がなければ、私たちは文明生活を享受できないのです。みんなが算数数学を学ばなくなったら、原始時代に戻ってしまうことでしょう。

だから、子どもたちに、興味関心を持ってもらって、好きになってもらうこと、ここに私たち大人の役割があると思うのです。「子は親の背中を見て育つ」のですから、親が算数を、勉強をとても面白いと思えることがとても大切だと思います。

次のお話をご存知でしょうか?

「テコでも動かない牛」のお話

あるところに、どうしても水飲み場に行こうとしない、テコでも動かない頑固な牛がいました。

力自慢の男たちが何人も集まり、後ろから押したり、ロープで前から引っ張ったりしましたが、牛はますます踏ん張って一歩も動きません。

そこへ、一人の賢い老人がやってきて言いました。

「そんなふうに力任せにやっても無駄だよ。牛を動かすにはコツがあるんだ」

老人は牛の前に回ると、自分の親指をスッと牛の鼻先(口元)に差し出しました。

牛がその親指をペロペロとなめ始めると、老人は親指をなめさせたまま、ゆっくりと後ろ向きに歩き始めました。すると、あれほどテコでも動かなかった牛が、親指につられてトボトボと自ら歩き出し、あっさりと水飲み場までついて行ったのです。

この「ひらめけ算数ドカン!」は、この鼻先の親指になると私は思います。

人生で必要な算数という水飲み場まで連れて行ってくれます。

このマンガには、制作にかかわった人たちの「子どもたちに算数の面白さを知ってもらって好きになってもらおう」という熱意が詰まっています。

この話が、このマンガを手に取る「きっかけ」となりましたら、私としましてもこの上ない喜びです。ぜひ親子で算数好きへの道を踏み出してください。



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