子どもとの「対話」って、どうすればいいんだろう? 「わかんない」「別に」で会話が終わってしまったり、子どもの考えていることがうまく引き出せなかったり……。そんな日々のちょっとした悩みから、子どもの「考える力」「伝える力」を育むヒントを探ります。絵本をきっかけに、親子の対話をもっと豊かにする「ダイアロジック・リーディング」の世界を、一緒にのぞいてみましょう。
連載第2回は、OFFER1「子どもの『わかんない』を探ってみよう」の中から、「子どもたちの『わかんない』は実は100通り!?」を紹介します。
※本連載は『個性を伸ばす絵本対話 ダイアロジック・リーディング』から一部抜粋して構成された記事です。
子どもたちの「わかんない」は実は100 通り!?
子どもがすぐに「忘れちゃった」とか、「わかんない」などと答えるのは、なぜなのでしょうか。
思い返してみてください。わが子との会話が続かずに、もどかしさを感じたことはありませんか。
多くの保護者が、「うちの子は話したがらないタイプなのかな」「おしゃべりが好きじゃないのかも」と思っているかもしれません。
一見すると、“話す気がない”ように見えることもあるかもしれません。
けれど、実はもう一つ大事な理由があります。
それは、「どう言葉にすればいいかわからない」から。
私は、子どもたちの「わかんない」は、ゆうに100通りはあると考えています。
例をあげてみます。
- 何を聞かれているのかわからない「わかんない」
- どう言葉にすればいいのかがわからない「わかんない」
- どこから話せばいいのかわからない「わかんない」
- 正解を探して答えが出ない「わかんない」
- 気持ちがうまくまとまらずに逃げたくなる「わかんない」
- 言葉にする前に恥ずかしさが先に来る「わかんない」
こうした「わかんない」が積もり積もって、だんだんと考えるのが面倒になってくることで、とりあえず「わかんない」と言ったり、「楽しかった」で済ませたり、何も言わずに沈黙でやり過ごしたりするといった“よくあるパターン”になっているのかもしれません。
また、子どもは豊かな想像力を持っています。頭の中ではいろいろな世界が膨らんでいるからこそ、言葉を選んで伝えるのがもどかしくもあり、難しくもあるのではないでしょうか。
さらに、子どもを取り巻く環境は常に変化しており、目に入る情報も体験も日々増えています。また、それぞれの子どもの気質、能力、発達過程の違いによって、その感じ方に複雑さや不確定さが増すこともあるでしょう。
心の中にはたくさんの思いや考えがあるからこそ、どう言葉にすればいいかわからない。
そんな状態なのかもしれません。
「わかんない」は、自分らしさが育つきっかけになる言葉ともいえるのではないでしょうか。
ここで、Chapter1の「今日はどうだった?」に戻ってみましょう。この質問に対して、子どもが「わかんない」「別に」と答えてしまうのは、考えていないからではありません。子どもには感じたことや話したいことがたくさんあっても問いかけの対象範囲が広すぎると、どこから話せばいいかわからなくなってしまうのです。
では、どうすればいいのでしょうか。たとえば、問いかけを少し具体的にするだけで、子どもは自分の気持ちをずいぶん言葉にしやすくなるかもしれません。
● 弾む対話のHOP! STEP!! JUMP!!!
①HOP! まず「“何が”あったか」を具体的に聞く
△「今日はどうだった?」
↓よりも
○「今日、どんなことがあった?」
②STEP!! 子どもの“考え・行動の理由”を具体的に聞く
親:今日どんなことがあった?
子:砂場でお城を二回つくった!
親:どうして二回つくったの?
子:一回目は失敗したの。
だから、二回目はしっかり作ったよ。
実際の会話はこんなイメージでしょうか。事実を話した後なら、「それどう思った?」「どうしてそうしたの?」といった問いかけを通して気持ちや考えも言葉にしやすくなります。これはいろいろな場面で応用できます。子どもが何か言ったとき、そこに一言添えるだけで十分です。
「このお菓子が欲しい!」→「どうしてこれなの?」
「このおもちゃが好き!」→「どんなところが好きなの?」
「あの雲、おもしろい形!」→「どんな形に見える?」
など、応用は無限大ですね。
子どもがうまく答えられないときは、二択にしてサポートするのも一つの方法です。
「このキャラクター、好き?嫌い?」
「この二つ、どっちが好き?」
など、答えやすい入口から入って、「どうして?」で気持ちにつなげていくことができますね。
③JUMP!!! 答えを“受け止め”一歩先の未来へ“送り出す”
親:お城ができたとき、どんな気持ちだった?
子:嬉しかった! もっとおっきくしたかったけど
親:いいね! どのくらい大きくしたかったの?
ここでのゴールは、何をしたかを細かく把握することではありません。「どう思った?」「どうして?」という問いかけを通じて、子どもが自分の気持ちや考えを言葉にする経験を積むこと。 保護者が「いいね!」と気持ちを受け止めることで、子どもは「聞いてもらえている」と感じ、もっと話したい気持ちになります。次の行動につながるような提案やアイデアなどが出てきたりするのもこんな時かもしれません。子どもたちの想像力や発想力って、新鮮で真剣ですよね。お絵かきの途中で突然ユニークなアイデアを見せたり、寝る前にぽつりと大人顔負けの一言をつぶやいたり。
ご家庭でも「そんなこと考えてたの?」と驚かされるような瞬間がたくさんあるのではないでしょうか。
どうかなるべく見逃さず、かといってうっかり誰かと比べたりせず、その瞬間に心を寄せてみてください。それを毎日少しずつ繰り返すことが、子どもの中に「自分の気持ちや考えを言葉にしていい」という感覚を育てていきます。
私は、一冊の絵本を1000人の子どもたちと、1000回以上じっくり対話しながら読んできました。
1000回を超えた今でも、子どもたちは毎回まったく違う見方や解釈を教えてくれることにあらためて驚かされます。
そして、その豊かな世界が“すぐに言葉になるかどうか”は、本当に一人ひとり違うのです。
最初は「わかんない」で終わってしまったり、正解を探して黙り込んでしまったりすることもしょっちゅうです。
それでも、安心できるやり取りの中で、少しずつその子のペースで自分だけの言葉が育まれ、あふれ出してくる瞬間があります。
そして、その子にしかない視点や考え方が、ぽつりぽつりと顔を出し始めるのです。
私はこう思います。
子どもの心の中には、すでに素敵な世界がある。
まだ言葉の形になっていないだけ。
だからこそ、家庭ではうまく話せなくても大丈夫といった「安心して対話を試せる場」があることが大切です。
子どもが話さないのを能力やパーソナリティの問題にするのはもったいないことです。
その理由を、まだまだ深掘りしていきましょう。
今日の一冊から、親子の対話を
子どもとの何気ないやり取りには、子どもの考える力や、自分の気持ちを言葉にする力を育てるヒントがたくさんあります。大切なのは、答えを教えることではなく、「子どもの言葉を受け止め、対話を楽しむこと」。
絵本は、親子で同じものを見ながら、自然に言葉を交わせるきっかけになります。特別な準備をしなくても、今日の一冊から始められます。
本書では、実際の絵本を例に、どんな声かけをすれば対話が広がるのか、親子のやり取りを具体的に紹介しています。まずは紹介されている声かけをマネするだけで大丈夫。
絵本をきっかけに生まれる、親子の“対話”を楽しんでみませんか?
【書籍情報】