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ものがたり

『宇宙級初恋』先行連載 第8回 ルカくんのことが好き


となりのおうちにひっこしてきたのは、地球でいちばんカッコいい男の子!?

学園ラブコメ「ぜったいバレちゃいけません!!!」で大人気♡ 水無仙丸さんの新シリーズは、
反則級にときめくカレと、地球でいちばんステキなロマンチックラブ♡

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運命の人っているのかな?
そもそも、出会ったその人が運命の人ってどうやってわかるんだろう?

だけど。
この地球の遠くの向こう、
何光年も先からやってきたキミと出会って、
ひと目見て分かったよ。

キミがわたしの運命の人だ、って──

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前代未聞の宇宙級「ご近所」ラブ先行れんさい最終回♡♡♡
となりの家に引っ越してきたルカくんと、お母さんが生きてたころに聞いた「虹のはじまり」をさがしに行くことに! だけど――

8.ルカくんのことが好き

「ルカくん、とりあえずこの道をまっすぐ行ってみようよ!」
 雨はすっかり上がっていた。
 まだすこし雨雲ののこる空の下。
 虹のある方角にむかって、ルカくんと歩く。
「虹ってほんとにきれいだね。空にいつもあればいいのに」
「残念ながら、時間が経つと消えちゃうんだよねえ」
「じゃあ、急いで虹のはじまりまで行こう!」
 ルカくんと一緒に、雨上がりの歩道を走る。
 ──うれしい。
 こうやって、だれかと虹のはじまりをさがすなんて、はじめてだ。
 体中がわくわくして、本当に虹のはじまりにたどりつけそうな気がしてきた。

「──あそこにいるの、つばさじゃねえ?」
 公園のそばをとおっていたら、自分の名前が聞こえた。
 ボール遊びをしている男子の集団が、こっちを見ている。
 公園にいるのは竜晴と、そのとりまきたちだった。
「あっ! もしかしてそいつ、宇宙人かっ!?」
 男子のうちの一人が、ルカくんを指さしてさけんだ。
 うわ、なんかイヤな感じ。
「へーえ、そいつかあ。地球を侵略しにきたエイリアンは」
 竜晴が男子たちを引きつれて、こっちにちかづいてくる。
 まずい、まずいまずいまずい!
 イヤな予感しかしないっ!
「行こうっ、ルカくん!」
「え、でも……つばさちゃんの友だちじゃないの?」
「友だちじゃない、あんなやつぜんぜん友だちじゃないっ!」
 ルカくんと一緒に立ちさろうとしたその時、
「待てよ」
 竜晴が私の手首をつかんだ。
「なっ……なによ竜晴」
「どこ行くんだよ」
「どこでもいいでしょ、はなして!」
 ふりほどこうとしても、はなしてくれない。
 竜晴は、ルカくんを見るなり、ムッと顔をしかめて、
「お前、帰れよ」
 はあ!?
 意味がわからない!
 ルカくんに「帰れ」って、どういうこと!?
「ちょっと、なに言ってるの竜晴!」
こいつ、おれのカノジョだから
 竜晴がルカくんにむかって言った。
(──え? カノジョ?)
 頭がまっしろになった。
「うおおー! とつぜんの告白タイムだああ!」
 男子たちが急に騒ぎはじめる。
 いやいやいや、私、竜晴のカノジョじゃないから。
「ちょっと竜晴、からかうのやめて。こういう悪ふざけは悪趣味だよ」
「悪ふざけじゃねーよ」
 ──あれ?
 竜晴の様子が、いつもとすこしちがう。
「……ふざけてるんじゃないの?」
「ふざけてねえ。今日から俺のカノジョにしてやるっつってんだよ」
「はああ!? なに言ってんのよ、あんた私のことキライなくせに!」
「え、俺、キライとか言った覚えねえけど」
 竜晴が、きょとんとした顔で言った。
 ええっ!?
 なにそのきょとんとした顔は!
「私のことキライなのはわかってんのよ! あんだけ毎日いじわるしといて!」
「そーだっけ? どんな?」
「ど、どんなって……、私の背中に変な紙をはったり、私のノートやぶいたり、あと……私が言うことなんでもかんでもバカにしてきて、それから、それから……」
 勝手に作文を読んで、笑ったり。
 私の教科書をかくしたり。
 ドッジボールで集中攻撃してきたり。
 ぜんぶぜんぶ、イヤだった。
「それさあ~、好きのうらがえしってヤツだよ!」
 男子の一人が、あかるい声で言った。
「つばさが好きだからいじってたんだろ、そんなん、いじわるとかじゃねーし!」
「そうそう、ただのいじりだ、いじり!」
「男子は、好きな女子にいじわるしちゃうものだって、うちの父ちゃんが言ってた!」
「お前ら二人が仲よし夫婦ってのは、野球チームでも有名だしなあ!」
「こないだ竜晴、カノジョにラブコールしろって、かけさせられてたもんなあ」
 えっ……、こないだうちにかかってきた電話は、もしかしてそれ?
 私がカノジョって……私の知らないところで、なんでそんなことになってるの?
「カップル成立~! おめでとー!」
 男子たちが、再び盛りあがりはじめた。
「よかったじゃん、つばさ!」
「おめでとう!」
「おめでとー!」
 男子たちが口々に「おめでとう」と言ってくる。
 みんな、すごくうれしそうだ。
 竜晴も、なんかはずかしそうにモジモジしてる。
 ──なにがそんなにおめでたいの?
 というか、好きのうらがえしって、なに?
 好きだったら、いじわるしてもいいんだ?
 好きのうらがえしだったら、なにをされてもゆるさなきゃいけないんだ?
 私、結構マジで傷ついてたんだけど。
 竜晴にからかわれるのがイヤで、学校やめたいって本気で思ったこともある。
 でもやめたら、負けたみたいでくやしいから、必死で平気なふりして学校に行ってた。
 それもぜんぶぜんぶ、なかったことにしなくちゃいけないんだ?
 アレをぜんぶ、ステキな思い出にしなくちゃいけないんだ?
 私、竜晴のカノジョにならなきゃいけないんだ?
『竜晴くんみたいな男子はどう? つばさちゃんといつも仲いいよね』
 ヒナちゃんにも言われた。
『竜晴くんとつばさちゃんは、今日も仲よしだねえ~』
 ほかの女子にも、言われた。
『へえー、お前もしかしてつきあってんの? その赤川くんて子と』
 お兄ちゃんにも言われた。
 どうして?
 どうして、みんなは──、
 ──私も竜晴のことが好きだと、最初からきめつけているんだろう?
「……これが地球の告白なの?」
 ルカくんが、こまったような顔で私を見る。
「僕はまだ地球のことがよくわからないけど……つばさちゃんはどうしたいの?」
 私はどうしたいのか。
 頭の中がごちゃごちゃで、よくわからない。
 やっぱり私が変なのかな。
 こんなにみんなが祝ってくれてるのに。
 よろこべない私が、変なのかな。
 竜晴のことを好きになれない、私が悪いのかな。
──好きなものを『好き』って言ったら、もっと好きになれる
 はっと顔を上げると、ルカくんと目が合った。
 ルカくんが、にこりとほほえむ。
「つばさちゃんが、僕にそう教えてくれたでしょ?」
「う、うん」
「それとおなじように、イヤなことも『イヤ』って、言ってみてもいいんじゃないかな」
 ルカくんの瞳に、無数の星がきらめいている。
約束するよ、僕はつばさちゃんの味方でいる。だから聞かせて? つばさちゃんの気持ち
 あ、まただ。
 はじめて会った時とおなじ。
 ルカくんの瞳が、声が、私をとても安心させる。
 ぜったいに大丈夫だって、心の底から思える。
 ルカくんが、ルカくんだけが、私の心をつよくさせてくれる。
「……私、竜晴のカノジョになりたくない
 自分でもびっくりするくらい、自然に口から出た。
「わかった」
 ルカくんは短く言って、一歩前に出た。
 私を背にかくすようにして、みんなの前に立つ。
「つばさちゃんが嫌がってるから、こういうのやめたほうがいいよ」
「なんだお前、宇宙人のくせに!」
「関係ないやつは引っこんでろよ!」
 男子の一人が、ルカくんをつよく突きとばした。
 ……のだけれど、ルカくんの体が、びくともしなかった。
 突きとばした男子が、ぎょっとする。
 おどろくのもわかる。
 あんな風に押したら、ふつうはうしろによろめくはず。
「むかつくなテメー!」
 男子が、さらにつよくルカくんを突きとばそうと、腕を突きだした。
 だけどルカくんは、その腕をするりとかわす。
 男子はそのまま前にすっころんだ。
「よ、よけてんじゃねーよ!」
 砂まみれの顔でどなっても、かっこつかないな。
 竜晴は、さっきからずっとだまったまま、ルカくんをにらんでる。
 そしてルカくんの目も、さっきまでとはちがって、鋭いものに変わっていた。
「──リュウセイくん、だっけ?」
 ルカくんが、竜晴に声をかけた。
「僕の星ではね、好きな人に告白する時はこうやるんだよ」
 ルカくんが、私の足もとにひざまずいた。
 ふわりと、とてもなめらかなしぐさで。
 そして、やさしいまなざしで、私を見上げる。

「──好きです。あなたと二人で幸せになりたいです」
 ぶわあっと顔が熱くなった。
 ルカくん、すごい。
 まるで王子さまみたい。
 こんなことをさらっとできる男子、ほかにいる?
「なんだそれ、ダサッ! 地球ではそんなんしねーよ!」
 男子たちが大笑いする。
 だけど、そんなのまったく気にならない。
 私の耳も目も、すべてルカくんに集中しているから。
「──僕は僕のルールでうごくよ」
 ルカくんが、ゆっくりと立ちあがった。
「星がちがえばルールもちがう。地球に住むなら地球のルールに従うべきだ。だけど、どんな場所でも、どんな時代でも、どんな状況でも、ぜったいに変わらない大事なものがあるはずなんだ」
 ルカくんのまっすぐな瞳が、男子たちをとらえる。
 笑っていた男子たちが、徐々にしずかになっていく。
「大切な人の笑顔を守る、僕にとってそれが一番大事なんだ。だから好きな子をいじめるのが地球のルールだというなら、僕はそのルールにはぜったいに従わない」
 ざあっとつよい風が吹いた。
 私の髪がなびく。
 ルカくんのきれいな髪も、なびいている。
 ルカくんから目が離せない。
 青空みたいに、澄んだ瞳。
 りんと響く、力強い声。
 さっきまでのやさしい王子さまなルカくんじゃなくて。
 今は、敵に立ちむかう勇敢な騎士みたい。
 私の心臓が、とんでもなくはやく鳴ってる。
 私の胸の中が、ルカくんでいっぱいになる。
 その場にいる全員が、とうとうなにも言えなくなった。
「……ルカくん、行こう。虹のはじまりをさがそう」
 これ以上、ここにいるのは時間のムダだ。
 ルカくんの袖を引き、一緒に歩きだす。
 男子たちがボソボソと話しあっている気配がするけど、さっきまでのいきおいはすっかりなくなっている。
「待てよつばさ! いつまで意地はってんだよ! マジでかわいくねーぞ!」
 うしろから竜晴のどなり声が聞こえる。
 ──かわいくない。
 学校でよく言われた。
 うまく言いかえせなくて、いつも胸にモヤモヤしたものがのこった。
 あの時のモヤモヤの正体が、今やっとわかった。
 くるりと竜晴たちのほうへふりかえる。
「──私、あんたたちに『かわいい』と思われたいなんて、一度も思ったことないよ!」
 どうぞこれからも、私をかわいくないと思っててください。
 その後は、ふりかえらずに歩きつづけた。
 ──よかった、やっと言いかえせた!

「急ごうルカくん、虹が消えちゃう」
 公園で足止めを食らっているうちに、虹はかなりうすくなっていた。
 ルカくんと二人で歩道を走る。
「あのね、地球にはね、『虹のはじまりに宝物がある』っていう伝説があるんだ!」
「ほんとに!? 地球はすごいなあ! つばさちゃんはなんでもよく知ってるね!」
「お母さんが教えてくれたの!」
「ステキなお母さんだね!」
「ありがとう!」
 走りながら、いろんな話をした。
 私が気に入ってるアニメの話とか。
 外で食べるお弁当がすごくおいしい話とか。
 最近やっと二重とびができるようになった話とか。
 ほかにもたくさんたくさん、話をした。
 虹をめざす途中、おばあさんの荷物を運んであげたり。
 そのお礼にもらった抽選券で、商店街の福引きに参加したり。
 公園の木に風船を引っかけて、泣いている子を助けてあげたりもした。
 住みなれた街なのに、なんだかすごく新鮮で。
 まるで知らない世界に来たみたい!
 笑いながら歩いていたら、雨上がりのぬれた歩道で、おもいきりすべってころんだ。
「つばさちゃん、大丈夫っ!?」
「あはははっ、へいきへいき!」
 転んで服がぬれちゃったけど、ぜんぜん気にならない。
 とってもいい気分!

 ──そうこうしているうちに、虹は消えてしまった。
 見晴らしのいい丘の上の広場から、夕暮れの街なみを見下ろす。
 私の住んでる街って、こんなにきれいだったんだね。
 今までは気づかなかったな。
「虹は消えちゃったけど、地球の人とたくさん話せてたのしかったよ」
「私もたのしかった。虹のはじまりをさがしたいって、前からずっと思ってたけど、本当にさがしたことは一度もなかったから」
「どうして今までさがさなかったの?」
 ルカくんに聞かれて、言葉につまる。
 どうしてさがさなかったのか、それは……。
「……虹のはじまりに、お母さんがいたらいいなって……
 いつも空の話をしていたお母さんだから。
 虹のはじまりで、お茶でも飲んでるんじゃないかなって。
 私の姿を見て、「あらつばさ、やっと来たのね、おそいじゃなーい」なんて笑って。
 ケーキを二種類出してきて、「どっちも食べたいから、お母さんと半分こしない?」って。
 私は「しょうがないなあ~」って笑いながら、半分こしてあげるの。
 想像すると、いつもわくわくした。
 でも……。
……ほんとはいないんだろうけどね
 いないことをたしかめに行くのがこわかった。
 希望をうしないたくなかった。
 お母さんが虹のはじまりにいる、そう思うだけで、胸があたたかくなるから。
 私は、ぎゅっとこぶしをつよくにぎる。
 そうしないと泣いてしまいそう。
「……つばさちゃんのお母さんが言ったことは、本当だったんだね」
 しばらくして、ルカくんがぽつりとつぶやいた。
「つばさちゃんと一緒にさがした時間が、僕にとって、かけがえのない宝物になったから」
 ルカくんが私を見つめて、やさしくほほえむ。
「虹のはじまりには、本当に宝物があるんだ。つばさちゃんのお母さんは、すごい人だね
 ぽろりと、涙がこぼれてしまった。
 ああ、ずっとこらえていたのに。
 ルカくんの前で、はずかしいな。
「私ってダメだなあ……」
「つばさちゃんはダメじゃないよ」
 はっと顔を上げる。
 ルカくんの瞳に、私が映っている。
「つばさちゃんは、ダメじゃない」
 言い聞かせるように、ルカくんがもう一度言った。
 よけいに涙があふれてしまった。
 ルカくんの指先が、私の頬を流れる涙を、やさしくぬぐう。
 私の涙が止まるまで、ルカくんはずっとそばにいてくれた。

「──地球人のこと、キライになった?」
 すっかり暗くなった帰り道で、聞いてみた。
 さっきの公園で、ルカくんもひどいことをたくさん言われたから。
 でもルカくんは「まさか」と笑った。
「地球に来て、よかったと思ってるよ」
「ほんとに?」
「うん。あのガラガラ鳴るやつをまわして、キャンディがもらえるなんてびっくりだよ」
「あはは、福引きの景品だね。ラーナ星には抽選会とかないの?」
「ないからはじめてだった。商店街の人も親切だったし、おばあさんもよろこんでくれたし、泣いてた子も笑顔になってくれた。こんなにステキな星、宇宙に二つとないよ」
 当たり前の光景が、ルカくんをとおすと、とたんにキラキラとかがやきだす。
 そんな風に言ってもらえると、私も地球が大好きになってくるよ。
「ありがとう、ルカくん」
 私、地球人でよかった。
 地球に生まれて、ルカくんに見つけてもらえてよかった。
「そうだルカくん、もし地球最後の日が来たとしたら──なにがしたい?
 ずっと聞きたかったことを、聞いてみた。
 宇宙船生まれ、宇宙船育ちのルカくんなら、なんて答えるだろう?
 ルカくんは「そうだなあ」と、しばらく考えこんだ後、
ゆっくりと星空を見あげて、
大切な人を守るよ。それから、新しい星をさがす!
 一番大きくかがやいている星を指さして笑った。

 ──私、ルカくんのことが好きだ。

 

私、ルカくんのことが好き。ルカくんとこのまま地球でいっしょに過ごしたい――だけど、ルカくんとの「おためし生活」はとんでもない試練の連続で?

でも、たとえこの先どんな困難が待っていても。
全然こわくないよ。
地球でいちばん大好きな、キミといっしょにいられるなら――

この恋、ときめき観測史上最大級! 地球でいちばんステキなキミと、宇宙も巻きこむ「ご近所」ラブストーリー♡♡♡

<この続きは、本で楽しんでね♪>

『宇宙級初恋』第1巻は本日:1月11日発売です♡

【書誌情報】

1月スタートの胸キュン新シリーズ『宇宙級初恋』!
地球でいちばんステキな男の子と、ウルトラ級にときめく初恋がはじまります!


作:水無仙丸  絵:たしろ みや

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322593

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